映画の心理プロファイル

『マルサの女』(1987 日)

a0037414_9242181.jpg
監督・脚本:伊丹十三(127分)
音楽:本田俊之
出演:宮本信子
    山崎 努
    津川雅彦
    大地康雄
    大滝秀治

『カクテル・パーティ効果』という心理用語をご存じでしょうか。
パーティ会場は騒々しいもの。でも、参加者は雑音を苦にもせずおしゃべりに
熱中しています。
そんなことができるのは、人間が自分に必要な音や声だけに集中できる耳を
持っているから。騒々しい居酒屋でも恋人たちが愛を語れるのもこの効果が
効いているせいです。

この『カクテル・パーティ効果』をわざと強調することで、シーンを際立たせてみ
せたのが伊丹十三監督のこの作品。
主人公の板倉亮子(宮本信子)は、あるラブホテルのオーナー権藤英樹(山崎
努)を脱税の疑いで調べているやり手の税務調査官。でも、権藤はひとくせも
ふたくせもある男。なかなか尻尾をつかませてくれません。
そんな2人がビアホールで、うわべは打ち解け合っているふうを装って、互いの
胸の内を探り出そうとするシーンがあります。
最初2人は、騒々しい中で会話をしています。
が、話が核心部分に入ると、バックの騒々しい音声がスーッと消えて、スクリー
ンからは2人の声だけしか聞こえなくなってしまうのです。これこそ『カクテル・
パーティー効果』の応用。2人が会話に熱中し始めたことを、バックの音をしぼ
ることで表現したんですね。
と、再びバックの音が大きくなります。というのも、権藤が亮子の聞きたくない
話題を一方的にしゃべり始めたから。集中力が消え、雑音が雑音として一気に
耳に流れ込んで来ます。伊丹監督は、亮子の「聞きたくない、やめて!」という
気持ちをバックの雑音を大きくすることで表現したのです。

このサイトで取り上げる作品がアメリカ映画に偏っているのには、実は理由が
あります。
アメリカでは心理学が映画専攻の学生の必修科目になっているせいか、
心理効果が露骨なほどに活用されていて、それだけに紹介しやすいんですね。
それは日本映画としては例外的に伊丹映画にもいえること。
伊丹さん、若い頃に俳優としてアメリカ映画に出ていた経験もあるので、作品
づくりもアメリカナイズされているのかな?

そうそう前回紹介した映画『フォーン・ブース』は、脅迫者との電話でのやりとり
(聴覚刺激)がメインになるお話だけに、このカクテル・パーティー効果がシーン
を盛り上げるのに一役買っていると思われます(ある方がご自分のサイトでそ
のことを指摘なさってました)。「一役買っている」と断定できないのは、
テープがどこかへ行っちゃって確認できないせい。
あれれ、どこにしまっちゃったんだろ(泣)。 
[PR]
by kiyotayoki | 2004-09-17 09:25 | 映画(ま行)