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映画の心理プロファイル

『第9地区』(2009 米・ニュージーランド)

日本は世界最大のエビ消費国なんですってね。
クルマエビに換算すると毎年一人当たり90匹食べているんだとか。
1週間にすると2本弱だから少ないような気もするけれど、赤ちゃんから老人までおしなべての数字だからやっぱりスゴイかも。
そういえば僕も“海老会”なる海老好きの諸氏が集まる食事会に参加してる。
実際、この映画を観たあとは、海老がメインの料理屋へ行こうかと算段していた。

だけど、行くのはやめにしました。
その理由は、この映画を観るとおわかりになるかと・・・・(^^;

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原題:『DISTRICT 9』(111分)
監督:ニール・ブロンカンプ
脚本:ニール・ブロンカンプ、テリー・タッチェル
音楽:クリントン・ショーター
出演:シャール・コプリー
   デヴィッド・ジェームズ 

前評判の良すぎる映画って、期待が大きくなりすぎて実際に観てガッカリしてしまうことがよくあるのだけれど、
この映画は前評判に違わぬ面白さと映画らしい醍醐味が感じられる作品に仕上がっておりました♪

未見の方も、お話の概略はご存じかも?
1990年、南アフリカ最大の都市ヨハネスブルグに全長1Kmはあろうかと思われる巨大宇宙船が現れ、
空中に停止したまま動かなくなってしまう。
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その船内から発見されたのは、まるでボートピープルのような無数の宇宙人たち。
彼らは、友好のの目的で飛来したのではなく、宇宙を漂流してきた難民だったのです。
以来、20年。宇宙人たちが住みついた第9地区はスラム化し、犯罪が横行する危険地帯に。
元々「世界最悪の犯罪都市」といわれてたヨハネスブルクが、もっと悲惨な状況になっちゃった。
そんな彼らを持てあました官憲は、郊外の居留地に押し込めようと画策するのだけれど・・・・。

この宇宙人たちの姿がまるで海老のようなので、
人間たちは蔑むように彼らを「プローン」と呼んでいる。
そんなプローンたちの好物が「猫缶」だってところが笑っちゃいましたが。

で、肝心の主人公はというと、第9地区からエイリアンを立ち退かせる責任者に任命されたヴィカス。
お人好しで腰は低いけれど、役目はしっかりと果たす小役人タイプ。地味で目立たない男です。
そんなヴィカスが宇宙人が秘匿していたある液体を浴びてしまったことから映画は予想外の展開へと突入してしまう。

まさに巻き込まれ型のお話で、その点ではヒッチコック作品と共通してる。
ヒッチコックの作品の特徴のひとつは、何も知らない主人公が何かの陰謀や事件に巻き込まれるストーリーが多いこと。
いつどこから襲ってくるかわからない狂気に対する正常人の心の不安を描くのが得意なんですね、ヒッチコックさんは。
観ていてハラハラドキドキするし、主人公の行く末が心配で、どんどんお話にひき込まれてしまう。
その手法を、この若い監督もうまく取り入れてるんだな。

ヒッチコック監督があるインタビューでこう答えてる。
まず観客に恐怖心を植え付ける。
そうすれば、すべての事が不安になるから、あとは観客が勝手に怖がってくれるんだよ

衝撃的な恐怖シーンの連続は、かえって見る側の恐怖心をマヒさせるし、嫌悪感さえ覚えさせてしまうというんだね。
その点でも、この監督はうまくやってる。
最初にグロくてエグいシーンが出てきて、「うえっ、こりゃあこの先どうなることやら」と心配したけれど、中盤からは次はどんなグロいシーンが出てくるかと不安にはさせるけれど、表現はちゃんと抑制的になっていく。

そして、白眉はなんといってもパワードスーツを着装しての戦闘シーン。
この描写が手に汗握るんです。オスカーを争った『アバター』にも似たようなシーンがあったけれど
(その時も、主人公が敵対するのは“大佐”だったような)、甲乙つけがたいというか、個人的な好みとしてはこちらに軍配を上げたいほどの出来だった。

クリストファーと名付けられた海老星人親子とのふれ合いの描き方がこれまた巧みで、
だんだん海老星人親子に肩入れしたくなるように演出されている。
(そのせいもあって、夕食に海老は食べられなくなったのでした^^;)
この監督、ただ者じゃないかも?

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それにしても、直径が1㎞もある宇宙船が20年間も同じ空間に居座ってたとなると、
その下の環境はかなり変わったでしょうね。昼だって薄暗いだろうし、雨は降らないし・・・。
農業には不向きな土地になったことは確かだな。
ま、真下に野球場やサッカー場があれば、雨の心配がないから大助かりだっただろうけど(^^ゞ。
by kiyotayoki | 2010-04-25 15:32 | 映画(た行)