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映画の心理プロファイル

『インセプション』(2010 米)

話題の映画『インセプション』をやっと観てきた。
『メメント』や『ダークナイト』で人気のクリストファー・ノーラン監督最新作のテーマは、
“人の夢への侵入”だった。

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原題:『INCEPTION』(148分)
監督・脚本:クリストファー・ノーラン
音楽:ハンス・ジマー
出演:レオナルド・ディカプリオ
   渡辺 謙
   ジョセフ・ゴードン=レヴィット
   マリオン・コティヤール 
   エレン・ペイジ

人の眠りは、REM睡眠(浅い眠り)とNON-REM睡眠(深い眠り)を繰り返していて、
REM睡眠時はだいたい夢を見ているといいます。
覚えている夢はせいぜい目覚めの時ぐらいだけど、人ってひと晩の間に結構な時間、夢を見ていることになるんだね。
ある研究者によると、人生80年として考えて夢を見ている時間を合計すると4年以上になるんだそうな。
ってことは、僕たちは一生せせこましい現実の世界に縛りつけられているようで、
実は、4年以上はまったく別の、不思議な世界で暮らしている、とも考えられるんですね。

しかも、この映画でも語られているけれど、夢の世界の時間は現実の世界のそれとはテンポや流れ方がまるで違う。
大河ドラマのような長編の夢を見た時でも、実際に見ていた時間は10分程度だったなんてことはザラにある。
つまり、現実の世界では4年でも、夢の世界ではそれが10倍の40年、いや数百年に匹敵する可能性だってあるということ。
そう考えると、僕らの人生も捨てたもんじゃないって気がしてきません?

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そんな夢の世界、しかも他人の夢の世界に入り込んで、そこを闊歩できたらどんな気分だろう。
ノーラン監督がこのお話を発想したきっかけも、そのあたりからだったんじゃないだろうか。

ディカプリオ扮する主人公コブは、他人の夢の中に侵入してアイデアを盗む新手の産業スパイ。
そんなコブに、ある大企業のトップ斉藤(渡辺謙)という男が接触してくる。
斉藤はコブに、ライバル会社の社長の息子ロバートに父の会社を解体するアイデアを植えつける(インセプション)するよう依頼する。
アイデアを盗む事に掛けては一流のコブだったが、インセプションはさらに困難な任務だった。
ためらうコブに、斉藤はある条件を提示する。
実はコブは、妻殺しの容疑を掛けられ本国を追われている身で、そのため二人の子供にも会えずにいたのだ。
斉藤から、ミッションが成功した暁には本国に帰れるよう取り計らうという約束を取り付けたコブは、子供に会うためにミッションを引き受ける。

それにしても、「コブ」って名前は「コボ(ちやん)」みたいで最初は馴染まなかったけど、
英語だと「cobb」。リー・J・コッブって役者もいたことだし、そんなに変な名前じゃなさそう。
それに、調べてみたら監督のデビュー作にも「cobb」って名前の登場人物が出てくるから、ノーランさんには愛着のある名前のようだ。

それはそれ、どうやってインセプションするのかというと、
まず人の潜在意識に侵入し、そこに自分たちが設計した現実とは違う記憶を植えつける。
すると、その人間はそれに基づいた夢を見て、それが記憶される。
するとそのあとは、その記憶に基づいて行動するようになるという仕掛けのようだ。

ミッションを遂行するためにコブは仲間を集めます。
古くからコブと共に仕事をしてきた相棒のアーサー、夢の世界を構築する「設計士」のアリアドネ、他人になりすましターゲットの思考を誘導する「偽装師」のイームス、夢の世界を安定させる鎮静剤を作る「調合師」のユスフ。
それに、このミッションを命じた斉藤を加えた6人で作戦を決行するのだけれど、もちろん簡単にはいきません。
外から血管内に入った細菌が白血球に攻撃を受けるように、彼らも夢の中で反撃を受けてしまうから。
しかも、リーダーであるコブはミッションを台無しにしかねない心のキズを抱えていたのです。
果たしてミッションは遂行できるのか・・・。それは見てのお楽しみということで(^^ゞ。


出演陣は多彩です。
ノーラン監督作の常連も大勢出てくるし、意外な新顔も登場して楽しませてくれる。
常連で大きな役をもらっていたのは、キリアン・マーフィー(良かったね)。
新顔ではエレン・ペイジにマリオン・コティヤールといった女優陣、トム・ベレンジャー、それからそう、ルーカス・ハース!
ルーカス・ハース君については、以前『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985)の記事を書いた時にディカプリオと共演することを知ったけど、それがこの作品だったとは知らなんだ。

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         出番は少なかったルーカス・ハースと、大活躍だったジョセフ・ゴードン=レヴィット。


時折挿入される曲で印象的なのは、エディット・ピアフの名曲『水に流して(私は後悔しない)』。クールな映像の中、この曲が挿入されると何とも言えない独特な空気感が生まれ、イマジネーションをよりかき立ててくれる。
(『エディット・ピアフ ~愛の讃歌~』に主演したマリオン・コティヤールが出てることと何か関係があるのかしらん???)

主演のディカプリオの役が『シャッター・アイランド』の主人公の設定とややダブって感じられたことと、少々長い気がしたことを除けば、夢の世界をここまで具現化してくれたノーラン監督には拍手を送りたいな。



by kiyotayoki | 2010-08-07 10:12 | 映画(あ行)