映画の心理プロファイル

『ぼんち』(1960 日)

もう何年も続いている月に一度の「焼肉の会」。
そのメンバーの方のお宅にお邪魔しての忘年会は、和の食材がテーブルに並んだ。

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今回の宴のサブタイトルは『雷蔵祭』。
会場となった部屋の主が大の市川雷蔵ファンで、出演作DVDを多数所有されている。
それを次々に観て、その魅力を語り合ったり突っ込んだりしようというもの。
最初は、『弁天小僧』(1958)。雷蔵が扮するのは弁天小僧・菊之助。歌舞伎っぽいお芝居仕立ての作品だった。
続いて、『忍びの者』(1962)。これ、ちっちゃい時に親と観たのだけれど、忍者の拷問シーンが怖くて怖くて。
悪夢を見て、よくうなされたもんです(^^;
そして最後が、今回フィーチャーする『ぼんち』(1960)。
この映画、以前、グロリアさんが記事にしてらっしゃって、僕も久しぶりに観たいなぁと思ってた作品。

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監督:市川崑
原作:山崎豊子
脚本:和田夏十 市川崑
音楽:芥川也寸志
出演:市川雷蔵
   若尾文子
   山田五十鈴
   毛利菊枝

随分前に観たっきりだったので、新鮮に観ることができた。
改めて観てみてまず思ったのは、ああ、これって40年ほどに渡る“家政婦は見た”物語だったんだなぁということ。

山崎豊子原作を映画化したのは市川崑。監督らしく、絵作りがモダンかつ三次元的、そして陰影も美しい。
知らなかったけど、市川崑さんってアニメーター出身なんだってね。

お話は、大阪・船場に四代続いた足袋問屋の一人息子喜久治(きくぼん)が、女系家族の中で、
ぼんぼんらしい気質と才覚と鷹揚さで昭和の激動期を生き抜いていく姿と、その女性遍歴を、多彩な女優陣を配して描く作品。

代々続く大店のぼんぼんに生まれると、朝の着替えからして庶民とは違います。
きくぼんは素っ裸で立っているだけ。あとはすべて女中のおとき任せ。
汗をかきそうなところには天花粉をはたいてくれ、ふんどしまで締めてくれる(^^;。
そんな細々とした世話を当然という風情で受け止めるきくぼん。それを演じてる市川雷蔵が憎たらしいほど似合ってる。
関西弁も板についてる雷蔵さん、京都生まれの大阪育ちだそうだから、まあ、似合って当然なのかもしれないが。

そこへやってきたのが、祖母きの(毛利菊枝)と母の勢以(山田五十鈴)。
すかさず女中のおときがサッと座布団を並べるのだけれど、祖母のおざぶのほうがちょっと前に出てる。
2人の力関係・序列が座布団の位置でもわかるようになってるんですね。

で、何かと思えば、次の跡取りを産んでくれる嫁をもらえという話。
まだ22歳のきくぼんだけど、それほど抵抗する様子も見せずに応諾。

と、次のシーンではもう新妻の弘子(中村玉緒)が台所でおさんどんを手伝っている。
この映画、冗長なのが多い日本映画には珍しく、時間が飛ぶし、ワンシークエンスも短いのです。
でもそれに慣れてくると、かえって無駄のない演出が心地よくなってくる。

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展開がスピーディなので、女性遍歴もトントン拍子。
ポン太(若尾文子)、幾子(草笛光子)、比沙子(越路吹雪)、お福(京マチ子)と、おつき合いする女性はタイプは違うものの皆夜のご商売をされている方ばかり。
さすがぼんち、わきまえていらっしゃる。
「えーっ、どこが?!」と、眉間に皺を寄せる向きもおいでかもしれませんが、
当時の男性としてはスマートな遊び方なんですね、これは。
まず、たいていのことは金で片がつく。というか、これが一番大きい。
たとえ子を孕ませても、男児なら5万、女児なら1万で後腐れがなくなるってんですから(これ昭和初期の話です)。
それを、きくぼんに教えてくれたのは祖母きの。
後腐れがない上に、女遊びは男の甲斐性とされていた時代ゆえに祖母も母も公認なのです。
とはいえ、金がなくては続きません。だから自然、金持ちの道楽になっちゃうんだな。

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だけど、きのも勢以も、ただきくぼんの女遊びを黙認していたわけじゃありません。
2人には深遠なる目論見があったのです。
それは、きくぼんと愛人のあいだに女児を誕生させること。
河内屋は三代続いて跡継ぎに女児しか生まれなかったので、すべて婿養子をとってきたんですね。
旦那は飾り物で、実権は女房が持っていた。それだけにきのと勢以の力は絶大だった。
きのと勢以はこの世の春を謳歌していたわけです。
ところが勢以が産んだのは男児=きくぼんだけだった。女権の危機だ。
2人はきくぼん夫婦に女児が誕生することを祈ってた。ところが嫁の弘子が産んだのは男児。
これはまずい!と2人がとった行動は、実家で子を産んだことを責めて弘子に離縁状を突きつけることだった。
きくぼんをフリーな状態にして、女遊びをさせ、あわよくば女児を誕生させようという腹だったんですね。いやはや。

そんなきのと勢以を演じる毛利菊枝さんと山田五十鈴さんの演技にはホントにしびれました♪
お薦めのカラー娯楽作品ですよ、これは。

あ、それに、蔵見ニスト(お蔵ファン)としては、大阪が蔵の街だったことを再認識させてくれる貴重な映画で、その意味でもとっても嬉しかったし。下の画像は、空襲で唯一焼け残った河内屋のお蔵です。

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by kiyotayoki | 2010-12-30 10:06 | 映画(は行)