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映画の心理プロファイル

『ローマの休日』(1953 米)

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原題:『ROMAN HOLIDAY』(118分)
監督・製作:ウィリアム・ワイラー
原案・脚本:ダルトン・トランボ(イアン・マクレラン・ハンター)
出演:オードリー・ヘプバーン
    グレゴリー・ペック
    エディ・アルバート
    パオロ・カルソーニ
    ハートリー・パワー

“繰り返し見た回数”でいうと、トップクラスかもしれない作品です。
昨夜、地上波でやっていたので、ついまた見てしまいました。
今回は去年87歳で亡くなったグレゴリー・ペックを偲ぼうと思って見始めたの
ですが、魅了されたのはやはりオードリー・ヘプパーンの可憐な美しさ。
個人的には好みのタイプではないのに、この映画の彼女を見ると宗旨替えを
したくなっちゃいそう。
もちろんG・ペックもよかった。あの木訥さ、そして清潔で油ぎっていないところ
が、この作品にぴったりだったんだなと再認識させられました。

お話は、あまりにも有名なので記すこともないと思いますが、
ローマ訪問中の某小国の王女と新聞記者とのロマンチックで切ない恋の物語、
大人のためのおとぎ話です。

分刻みのスケジュールに嫌気がさして大使館を抜け出し、新聞記者のジョー
(G・ペック)のアパートに押し掛けお泊まりをしてしまったアン王女(O・ヘプパ
ーン)は翌朝(といっても昼過ぎ)ジョーに別れを告げると、ローマの下町を
まるでおとぎの国に迷い込んだ少女のように目を輝かせながら歩いて行きま
す。その道すがらに見つけたのが一軒の美容室。
アンはそこで美容師(P・カルソーニ)に長い髪をバッサリ切りたいと申し出ます。
すると、美容師は当然のようにこう聞き返します。
「バッサリ?キミ、失恋でもしたの?」・・・・

「めめしい」を漢字で書くと「女々しい」。
そのせいか、失恋した場合、男より女のほうが未練がましいと思われがち。
でも、心理学や大脳生理学の観点から見ると、また実際も、より未練がましい
のは男のようです。
男が未練がましいのは、もっぱら脳の構造のせい。
男の脳は、右脳と左脳をつなぐ部分(脳梁)が女より狭い。だから、右脳と左脳
の情報の交換が女と比べると滞りやすい。
そのせいか、女性は失恋をしても柔軟に対応できるのに、男性は脳が不器用
にできている分、失恋の痛手をいつまでも引きずりやすいんですね。

しかも、女性は心理的にも男性より早く失恋の痛手から脱しやすい。
「泣く」というのは、ストレス発散にとても効果があります。それは涙に多くの
ストレスホルモンが入っているから。泣けば、それらが体外に排出される。
大泣きした後、なんだか気分がさっぱりするのはそのせいです。
ところが、男はむやみに涙を見せてはいけないという心理的な規制が働き
やすいんですね。女は堂々と泣ける。その分、早く失恋の痛手から脱する
ことができるというわけです。
また、「髪を切る」というのも、気分一新のいい方法です。特に、長い髪を
一気に短くすると、心理的にも物理的にも身軽になれるので、晴れ晴れとした
気分になれます。女性の中に失恋後に髪をバッサリ切ってしまう人がわりと
多いのは、直感的にその効果の絶大さを知っているから。
ところが男は、一部の例外をのぞけば、悲しいかな髪を切ってもそう変わり
映えがしないので、その効果を実感することができません。
男って哀しい生き物だなあ・・・。

長くなりましたが、そういう意味もあって美容師はアンに「失恋でもしたの?」
と聞き返したんですね。
アンは失恋したわけではないので「いいえ」と答えます。
でもこの時のアンの心境は、失恋時の心境とかなり似ていたと思われます。
“髪を切って過去の自分と決別したい、重圧から解放されたい”と思っていた
からです。
その効果は確かにありました。
一日だけですが、アンはアーニャとして、ジョーと夢のようなひとときを存分に
過ごせたのですから。   
by kiyotayoki | 2004-10-30 11:40 | 映画(ら行)