映画の心理プロファイル

『グレイスランド』(1998 米)

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原題:『FINDUNG GRACELAND』(97分)
監督:デヴィッド・ウィンクラー
製作総指揮:プリシラ・プレスリー
脚本:ジェイソン・ホーウィッチ
出演:ハーヴェイ・カイテル
    ジョナサン・シェック 
    ブリジッド・フォンダ
    グレッチェン・モル

ウィークデーの昼下がり、たまたまTVで見た映画です。でも、その不思議な
ストーリー展開にひき込まれ、仕事も忘れて最後まで見入ってしまいました。

オープニング。車体の左側(運転席側)が醜くえぐられた青いキャデラック
コンバーチブルをあてもなく走らせる医学生バイロン(J・シェック)。
彼は辛い過去の持ち主でした。1年前、自分の運転するこの車で事故を起こし
結婚したばかりの愛する妻ベアトリスを亡くしていたのです。
以来、心を閉ざしてしまったバイロンは、すべてを投げ出し、ある日、車で旅に
出たのでした。金もガソリンも尽きれば、そこでのたれ死にしてもいいという
覚悟で・・・。
そんなバイロンの前に、1人のヒッチハイカーが現れます。中年の男は自らを
エルヴィス・プレスリーと名乗り、グレイスランド(エルヴィスの故郷メンフィス)
まで乗せてくれと懇願します。
メンフィスはバイロンにとって妻を亡くした忌まわしい地。しかも、男はエルヴィ
スとは似ても似つかぬ男(なにしろ演じているのがずんぐりむっくりのH・カイテ
ル)。バイロンは、不承不承「途中までなら」と同乗を許します。

そんな風にして始まった2人旅。
当初バイロンは、自称エルヴィス男の思い込みの強さや横柄な態度に腹立た
しささえ覚えていました。
見てるこちら側にしたってそうです。「自称でもエルヴィスって名乗らせるんな
ら、もう少し本人に似た俳優を使えばいいんじゃないの?」と。
ところが見てるうちに、「あれ?この人ひょっとしてエルヴィスの霊でも乗り移っ
てるの?この映画ってそういうお話?」という気になってきます。
そう思えるようなエピソード(エルヴィス本人しか知らないような話をするなど)
が積み重ねられていくからです。
でもその一方で、この自称エルヴィスはカジノのそっくりさんショーに“エルヴ
ィスのそっくりさん”としてステージに上がり、ヒットナンバーを熱唱したりも
します(H・カイテルの歌唱力に感服!)。
しかも、男の持ち物からバイロンが新聞の切り抜きを発見。それで男の身元が
判明します。男は、エルヴィスが他界したその日(1977年8月16日)に、
飛行機事故で妻子を亡くしていたのです。
つまり、自称エルヴィス男もバイロン同様、心に深い傷を負っていたのでした。

2人の違いは、バイロンが辛い思い出を『抑圧』(不安や苦痛の原因となる感
情などを無意識の中に抑え込むこと)したのに対し、自称エルヴィスは自分を
消し去り、代わりに別人格をつくる(自分はエルヴィスと信じ込む)ことで苦痛
から逃れようとしたところにありました。専門用語で言えば、『解離性同一性
障害』(あるいは『解離性健忘』)でしょうか。

それを知り、バイロンは男に初めて共感を覚えます。そしてエルビスとして
前向きに生きている男に、「人生はやり直せるのだ」ということを学びはじめ
ます。
でも、お話はこれでは終わりません。とっておきの素敵なエピソードを用意
してくれているんです。

この作品、今もなおアメリカの人々に愛され続けているエルヴィスの没後20
年を記念してつくられたもののようです。奥さんだったプリシラが製作に名を
連ねているので、グレイスランドのエルヴィス邸内部にもカメラは入ります。
興味のある方は是非!心が温かくなること、うけ合いです。
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by kiyotayoki | 2004-11-02 10:25 | 映画(か行)