映画の心理プロファイル

『グローリー』(1989 米)

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原題:『GLORY』(122分)
監督:エドワード・ズウィック
脚本:ケヴィン・ジャール
出演:マシュー・ブロデリック
    デンゼル・ワシントン
    モーガン・フリーマン 
    ゲイリー・エルウィズ

当時34歳のデンゼル・ワシントンが好演してアカデミー助演男優賞を獲得した
作品で、『ラスト・サムライ』の監督、エドワード・ズウィックの初期の代表作でも
あります。

映画は、南北戦争(1861~1865)時に実在した北軍の黒人部隊、第54
連隊の激烈で過酷な運命を描いた戦争秘話です。
ボストンの裕福な家庭に育った北軍の大尉ロバート(M・ブロデリック)は、
リンカーン大統領が発した「奴隷解放令」に合わせて結成されることになった
黒人部隊の指揮官を命じられます。解放黒人の息子トーマスと兄弟のように
育ったロバートにしてみれば、それは願ってもないことでした。

任官に伴って20代前半にして大佐に昇格したロバートは、意気揚々と
結団式に臨みます。が、集まった数百名の黒人はほとんどが南部から逃れて
きた元奴隷たち。白人に不信感を持つ彼らの志気はすこぶる低調でした。
しかも、いくら待っても軍服や靴の配給がなく、給与も黒人だからということで
減額される始末。
というのも、軍からしてみれば黒人部隊は「存在している」ことだけが重要で、
戦力としては何も期待していなかったから。
黒人ごときに敵とはいえ白人を殺させるわけにはいかないという差別意識から
の思いも働いたことでしょう。だから彼らに与えられた使命は「訓練」のみ。
それに猛反発したロバートは、実力行使で軍服と靴の支給と前最線への移動
命令書を勝ち取ります。
やっとまともな部隊として認められたのです。でもそれは即、彼らが死と直面
する立場になることも意味していました。

差別意識のような固定観念は厄介なもので、一度人の心に住み着いてしまう
と、なかなか取り払うことはできません。それは、21世紀になった今でも人種
的な偏見や差別意識が残っていることでも明か。
このお話は19世紀の出来事ですから、その偏見の強さは想像を絶するほど
だったのでは・・・。

激戦につぐ激戦で傷つき倒れる兵が続出しますが、そのうちに黒人兵たちの
間には団結心が生まれ、自分たちの自由を自分たちで勝ち取ろうという意欲
がみなぎり始めます。その象徴ともいえる存在がトリップ(D・ワシントン)でし
た。奴隷の子として生まれたトリップは、自由を求めて幾たびも農園からの
脱走を試みた男。その結果として、彼の背中には無数の鞭の傷跡が残って
いました。その傷の数だけ白人への敵対心が強く、また白人の言いなりに
なって働く同朋たちへの嫌悪感も強かったのです。
実際、トリップは軍からも逃亡をはかり、捕らえられてまた背中の傷を増やす
ことになります。
そんなトリップが、少しずつですがロバートら白人と、また仲間の兵たちと心を
通わせるようになっていきます。それは彼らが「黒人の自由」という同じ目的
に向かってひた走っていたから。ただそれを得るには、哀しいかな「命」を引き
替えに差し出さねばなりませんでしたが。・・・大いなる矛盾ですよね。

そして、彼らにとって運命の日がやってきます。
海岸線に南軍が築いたワグナー要塞を攻める一番手を、ロバート率いる第54
連隊が務めることになったのです。守りに易く攻めるに難いのが要塞攻防戦。
攻める側は守る側の3倍以上の兵力が必要とされています。その一番手を
務めるということは全滅を覚悟しろということ。
攻撃前夜、黒人兵たちは自然発生的に即興歌を歌い始めます。ブルースの
原形を思わせるその歌声。そして、その歌声に合わせて“思い”を語り合う
兵士達。この映画で一番心にしみるシーンかもしれません。
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by kiyotayoki | 2004-11-14 12:51 | 映画(か行)