映画の心理プロファイル

『フィッシャー・キング』(1991 米)

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原題:『THE FISHER KING』(137分)
監督:テリー・ギリアム
出演:ロビン・ウィリアムス
    ジェフ・ブリッジス
    アマンダ・プラマー
    マーセデス・ルール

テリー・ギリアム監督の映画の中で、個人的に一番のお気に入りがこの作品です。
ギリアム監督にしては毒気が足りないという評もありますが、その分とても心温まるヒューマンドラマに仕上がっています。

主人公ジャック(J・ブリッジス)は毒舌で人気のラジオDJ。
番組ではリスナーから悩み相談を受け付けていますが、回答はまことに傲慢不遜。
ギター侍も真っ青の毒舌で適当にあしらって次々と解決してしまうというのが彼のスタイル。
なのに人気は絶頂。TV進出も決まり、まさに我が世の春。
ところが好事魔多し。
相談電話をかけてきた根暗な常連リスナーへの不用意な一言が男を凶行に走らせ、NYのまっただ中で銃乱射事件が発生。
それをマスコミがセンセーショナルに報道したため、ジャックは業界から抹殺されるはめに。

3年の時が流れ・・・。
ジャックは愛人アン(M・ルール)が経営するレンタルビデオショップに居候するただの飲んだくれに落ちぶれていました。
前途を悲観したジャックは川縁で衝動的に自殺しようとしますが、
行動を起こす前にそこへ現れたホームレス狩りの若者たちによって死の淵へ。
その危機を救ってくれたのは、パリー(R・ウィリアムズ)をリーダーとするホームレスの一団でした。
このパリーとの出会いが、その後のジャックの運命を変えます。
実は、パリーはジャックの不用意な一言から起きた乱射事件で最愛の妻を亡くしていたのです。
そのショックで精神に変調をきたしたパリーは、自分が大学教授であったことを忘れ、
ホームレスとなってNYのはきだめのような所で自分で虚構の世界をつくり出して生きていたのでした。
自分の罪の重さを再確認するジャック。
そんなジャックを救ってくれたのは、パリーの底抜けの明るさでした。
パリーはキリストの聖杯の在処がわかったことをジャックに熱く語る一方で、街で見かけた女性に密かに片思いをしているのです。
ジャックは、その片思いを成就させてやることで自分の抱え込んでしまった重荷を軽くしようと行動を起こします。
すべてに投げやりだったジャックの中に変化が起きた瞬間でした。

こうしてストーリーを書き起こしていくと、なんだか地味な作品のように思えるかもしれませんが、
そこはギリアム作品、映像のあちこちに“らしさ”が垣間見えます。
例えば、過去を心の奥底に葬り去ったパリーの脳裏にその過去が蘇りそうになる時があります。
すると決まって闇の中から恐ろしい赤い騎士が現れてパリーを恐怖のどん底に陥れるのですが、
その映像はまさにギリアムタッチ。

また、とても美しく幻想的なシーンも登場します。
それはNYのグランドセントラル駅の雑踏の中でパリーが片思いの女性リディア(A・プラマー)を
探していた時のこと。
パリーがリディアを見つけた途端、その場にいた群衆が隣の人と手と手を合わせワルツを踊り出すのです。
広い駅のホールが一瞬にして舞踏会場に変化してしまう見事さ。
その宴はパリーがリディアの姿を見失った途端、終焉しホールは再び現実の世界に戻ってしまいますが・・・。
「人が生き甲斐を持って生きていくためにはファンタジーが必要なんだよ」っていうギリアム監督のメッセージが聞こえてきそうなシーンです。

この作品に登場する人たちは皆、心にいくつものトラウマを抱え込んで生きています。
それは私たちも同じ。だからこそ彼らが見いだした希望に、思わず拍手を送りたくなっちゃうんでしょうね。 
 
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by kiyotayoki | 2004-11-17 09:48 | 映画(は行)