映画の心理プロファイル

『クライング・ゲーム』(1992 英)

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原題:『THE CRYING GAME』(113分)
監督・脚本:ニール・ジョーダン
出演:スティーヴン・レイ
    ミランダ・リチャードソン
    フォレスト・ウィテカー
    エイドリアン・ダンバー
    ジェイ・デヴィットソン

『ザ・コミットメンツ』に続いて、「イギリス映画、やってくれるじゃない」と思った衝撃のラブサスペンスです。

舞台は北アイルランドの中心都市ベルファースト。イギリス軍の黒人兵士が複数の男達に拉致されるところからお話はスタートします。
黒人兵士ジョディ(F・ウィテカー)を誘拐したのは、アイルランド統一を目指す武装組織IRA(アイルランド共和軍)の闘士たち。
一応の和平合意(1998)が成った最近でこそ物騒なニュースは聞こえてきませんが、この映画公開時はまだ紛争の真っ最中。武力ではイギリス軍に劣るIRAはテロや拉致を繰り返していました。当時の北アイルランドは、今のイラクのような状態だったんですね。

彼らがジョディを人質にとったのは、イギリス軍に捕まった仲間を解放させるため。
猶予は3日。しかし、イギリス軍がそんな要求をのむわけもなく、ジョディの余命はあと3日と決まったようなものでした。
死の恐怖に苛まれるジョディの唯一の救いは、見張り役のファーガス(S・レイ)が心優しい男だったこと。その優しさは、タブーを破って自分の名前を名乗ったところにも表れていたような気がします。人は、名を名乗り、名乗られることで互いに相手に親近感を抱くようになるのです。
以前、『狼たちの午後』でも紹介しましたが、『ストックホルム症候群』といって敵対する犯人と人質が心を通わせてしまう現象があります。ファーガスとジョディもまさにそれ。語り合ううちにどんどん心を通い合わせていきます。
そして、死を覚悟したジョディはファーガスにあることを頼みます。
それはロンドンにいる愛する女性に「キミを愛していた」と伝えてくれ、というものでした。
3日目、ジョディはファーガスの手で処刑されることに。
けれどその前に、皮肉にもジョディはIRAのアジトを急襲したイギリス軍の装甲トラックによって命を落としてしまいます。

イギリス軍の攻撃を逃れて行方をくらましたファーガスは、イギリスの首都ロンドンで新しい生活を始めていました。
彼がロンドンに住み着いた理由は2つ。
いつ終わるとも知れない戦いに空しさを感じ、逃避したかったため。
そして、もちろんジョディとの約束を守るため。

昼間は美容院で、夜はバー「メトロ」で歌っているというジョディの恋人ディルに会ったファーガスはその美しさ心を奪われます。ひとめぼれでした。
けれど、相手は自分が殺したも同然の男の恋人。
ファーガスは当然のごとく悩みます。ディルに真実を告げずに、このまま深みにはまってよいものか・・・。
一方のディル(ジェイ・デヴィットソン)もファーガスに思いをよせはじめます。
けれど、ディルにもファーガスに言い出せない秘密がありました。口に出せば、生まれたばかりの恋が一瞬にして消えてしまうことは明かでした。
その秘密とは・・・。

そんな悩み多きファーガスの前にIRAの同志が現れます。
IRAは裏切りを許さない組織。粛清されたくなければ要人を暗殺せよ、とファーガスに命じます。もし拒むなら、つき合っている女の命はない、とも。
IRAはすでにファーガスの身辺を調べ上げていたのです。

国と国との間にある越えがたい壁、宗教と宗教との間にある越えがたい壁、そして人と人、男と女との間にある越えがたい壁。それらは高く、強固で、越えるのは一見不可能に思えます。
でも「越えられない」という思い込み(固定観念)さえ心から消し去ることができれは、そんなもの案外簡単に越えられるものなんだよ・・・、この映画はそう教えてくれているような気がします。
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by kiyotayoki | 2004-11-21 10:05 | 映画(か行)