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映画の心理プロファイル

『ミッション:8ミニッツ』(2011 米)

『警告:このラスト、映画通ほどダマされる』
という謳い文句にはすっかりダマされてしまった。

これ、罪作りだなぁ。
というのも、この宣伝コピーのおかげで、観る前にある種の心構え(先入観)が生まれてしまったからだ。
それは、どんな風にダマしてくれるのだろうという期待感と、ちょっとやそっとじゃダマされないぞという警戒感が相混じったもの。
そのせいで映画を純粋に楽しめなくなっちゃったのだ。

うまくダマしてくれたら、まあ結果オーライだったかもしれない。
だけど、この映画は、そういう“ダマし”をメインテーマにしたものではなかった。
それだけに、なんか肩すかしをくらった感じで、後味がよくなかったのだ。
宣伝コピーを知らなかったら、ラストだってもう少しは感動できたかもしれないのに・・・。

いやホントに罪作りな宣伝コピーです。

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原題:『SOURCE CODE』(93分)
監督:ダンカン・ジョーンズ
脚本:ベン・リプリー
音楽:クリス・ベーコン
出演:ジェイク・ギレンホール
    ミシェル・モナハン
    ヴェラ・ファーミガ

お話自体は、そそる内容ではあるんです。
列車爆破事件の犯人を見つけるべく、主人公が特殊な装置で爆発8分前のある乗客の意識に入り込み、
事件の真相に迫っていくというユニークなもの。
すでに起きた事件の、しかも死んだ被害者の意識にどうやって潜り込むのか、
既存の科学じゃできそうにないことなので、そのカラクリを理解するのにはちょいと手間取りましたけど
(映画のほうも詳しく説明しても仕方がないと思ったのか、カラクリの説明は最小限にとどめておりました)。

8分じゃ到底真相にはたどり着けないから、主人公はタイムアップするたびに悲惨な死を味わってしまう。
それも何度も。
その度に主人公は、悪夢から目覚めた時のような後味の悪さを繰り返し味わうことになる。
同じ状況を何度も繰り返して体験する・・・というと、映画好きの人なら、きっと『恋はデ・ジャブ』を思い出すんじゃないだろうか。

過去に起きた爆破事件を食い止めるという点では、デンゼル・ワシントン主演の『デジャヴ』(2006)を
思い出す人もいるかもしれないな。
そっちのほうには、現在から“4日と6時間前”の映像をリアルタイムで再生することができるという、
これまたとんでもない装置が登場。
それでもトニー・スコットらしい硬派な絵づくりもあって、結構楽しめた作品だった。
ラストに至るまでのスリリングな展開では、この映画の上をいっていたんじゃないだろうか。

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監督は、デビュー作『月に囚われた男』で注目を集めた英国人のダンカン・ジョーンズ。
知らなかったけど、この人、デヴィッド・ボウイの息子なんだってね。
思い返せば、一人の人間が何度も生き死にを繰り返すという設定は、すでに『月に囚われた男』でも使われていた。
フロイトが意識と無意識に注目した心のスペシャリストなら、
ジョーンズ監督は生と死の狭間に注目したスペシャリストといえるかも。
この仕事を引き受けたのは、主演のジェイク・ギレンホールから依頼があったからという話。
ギレンホールは、『月に囚われた男』を観て依頼を決めたそうだから、そのスペシャリストぶりに期待したのかな。

映画はまだ始まったばかりだし、感想をネタバレにならないように書くのはかなり難しい作業になりそうなので、
映画鑑賞に役立つ(?)、お話の背景となる街や乗り物のお話をいたしましょうか。

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テロリストによって爆破されることになる、いかにもアメリカンな色使いの列車は、
ハイライナーという通勤列車(調べてみたら車両は日本製らしい)。
向かっていたのは大都市シカゴ。
そうです、この夏にマリリンモンローの巨大オブジェが街の中心地に出現したあのシカゴです。

シカゴは、パブリックアートの街としても知られているようで、
街を歩くと、いろんなアート作品に出くわすらしい。たとえば、こんなのとかこんなのとか・・・

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この映画にも、象徴的なモニュメントが出てきます。
それが、こちら。

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クラウドゲート(雲の門)と呼ばれる100トン超の鏡の塊のようなオブジェ。
独特の形から「ザ・ビーン(豆)」という愛称で親しまれているそうな。
鏡の塊と書いたけど、ただの鏡じゃない。楕円型の形状は反射した像をゆがめ、ねじ曲げる。
そのねじ曲がり方は、このオブジェの内部に入ってみると、もっと極端になる。

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自分の歪んだ姿があちらにもこちらにも・・・。
どれが実像で、どれが虚像か、なんだか混乱してしまいそうだけど、一度入って見上げてみたいもの。

このオブジェが映画の最後に出てくるんですが、
さて、監督のダンカン・ジョーンズはこのオブジェでどんなメッセージを観客に伝えようとしているのでしょうか・・・。
たぶん、そのメッセージはひとつじゃないだろうし、このクラウドゲートが映し出す像と同じように
観る人によって受け取り方も違ってくるんだろうな。

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by kiyotayoki | 2011-11-12 00:04