映画の心理プロファイル

『華麗なる賭け』(1968 米)

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原題:『THE THOMAS CROWN AFFAIR』(105分)
監督・製作:ノーマン・ジュイソン
脚本:アラン・R・トランストン
音楽:ミシェル・ルグラン『風のささやき』
出演:スティーヴ・マックィーン
    フェイ・ダナウェイ
    ポール・バーク
    ジャック・ウェストン

映画を見ていると、たまに別の映画が挿入されていることがあります。
例えば、前回ご紹介した『チャンス』。主人公のチャンスは大のテレビ好きなの
で、テレビを見るシーンが度々登場します。そんなシーンのひとつで、重要な
役割を果たすのがこの『華麗なる賭け』。
この映画には映画史に残る、まさに“目くるめく”という表現がぴったりのラブ
シーンが登場します。演じるのは硬派のイメージが強いS・マックィーンと当時
売り出し中の知的美人F・ダナウェイ。
テレビのマネをするのが大好きなチャンスは、そのシーンをマネて大富豪夫人
と生まれて初めて熱烈なキスを交わすことになるのです。

さて、『華麗なる賭け』は、『夜の大捜査線』(1967)のノーマン・ジュイソン
監督が手がけたスタイリッシュなクライムムービーです。
子供の頃憧れていたマックィーンが演じるのは、大富豪の実業家トーマス・
クラウン。マックィーンというと『大脱走』や『荒野の七人』の埃にまみれた男の
イメージが強すぎるので、スーツ姿でビシッとキメる役柄はどうかなと思いまし
たが、なんのなんのしっかりと余裕で大富豪を演じてくれています。
でも、ただの大富豪ではありません。スリルを求めて、また自分の才能を証明
するために銀行強盗を働いてしまうのです。しかも自分は一切手は下さずに。
当時としては斬新だった画面分割で見せる銀行襲撃シーンは話題になりまし
た。
そんなトーマスを犯人とにらんで証拠を掴もうと接触を図ってくるのが保険会社
の腕利き調査員ヴィッキー(F・ダナウェイ)。けれど、そこは魅力的な男と女。
恋が芽生えないわけがなく、2人はまもなく恋に落ちてしまいます。
2人がチューンナップされたサンドバギーで砂浜をかっ飛ばすシーンはとても
印象的。あのサンドバキー、プラモでもいいから欲しかったなぁ。
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この『華麗なる賭け』は近年『トーマス・クラウン・アフェアー』
(1999)という、原題をそのまま使ったタイトルでリメイクされ
ています。トーマスを演じるのは007でおなじみのピアース・
ブロスナン。恋に落ちる保険調査員はレネ・ルッソ。
こちらの監督は、『ダイハード』のジョン・マクティアナン。
基本的な設定は同じですが、違う部分も多々あります。
オリジナルは銀行を襲いますが、リメイクが襲うのは美術館。
盗むのは金ではなく、モネの絵。
また、こちらではトーマス自ら美術館に出向き、絵を盗んでしまいます。
舞台もオリジナルは、よりハイソなイメージのボストン。こちらはニューヨーク。
テーマ曲は同じ『風のささやき』ですが、こちらはスティングが歌っています。
また、リメイク版にはオリジナルには登場しない精神科医が出てきます。実は
その精神科医を演じているのはフェイ・ダナウェイ。オールドファンならニヤリと
してしまう演出です。
そうそう、よくブログの行き来をさせていただいているgloriaさんが指摘してく
ださったんですが、リメイク版では美術館が犯行の舞台となるだけに、美術愛
好家をニヤリとさせてくれる演出も施されています。
トーマスをはじめとする犯人グループが皆、まるでマグリットの絵に出てくるよう
な紳士のスタイルで登場するのです。それが目くらましとなって、張り込んでい
た警察は右往左往してしまいます。

それにしても、トーマス・クラウンという主人公、頭はいいし、カッコイイし、金は
あるし、スポーツは万能だし・・・と非の打ち所のない男。なのにこんな犯罪を
おかしてしまうのは、心に満たされない何か、歪んだ部分があるのでしょうね。
F・ダナウェイ扮する精神科医なら、そんなトーマスに「自己愛性人格障害」と
いう診断を下すかもしれません。
その人格障害の特徴は、自分は人よりもユニークで、特別な才能を持ってい
るという自負があるという点。自分は特別だという思いが強いので、その才能
をことさらに見せつけようとしがちなのです。
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by kiyotayoki | 2004-12-28 10:12 | 映画(か行)