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映画の心理プロファイル

『ターミナル』(2004 米)

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原題:『THE TERMINAL 』(129分)
監督:スティーヴン・スピルバーグ
脚本:サーシャ・ガヴァシ
    ジェフ・ナサンソン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:トム・ハンクス
    キャサリン・ゼタ=ジョーンズ
    スタンリー・トゥッチ
    クマール・パラーナ

正月に映画館に足を運んだのは何年ぶりだったか忘れるほど、久しぶりに
映画を見てきました。六本木ヒルズのシネコンに入るのは初めてだったので
気分はすっかりお上りさん。エントランス付近はポップコーンの匂いが充満。
その匂いに釣られて、お上りさんはつい買い食いしちゃいました。
見た映画の主人公ヴィクトル・ナボルスキー(トム・ハンクス)も東欧の架空の
国クラコウジアからニューヨークへやってきた“お上りさん”だったんで、ちょっ
と親近感がわいちゃいましたけどね。
最後にアメリカを訪れたのは9.11の前年だったので、厳しくなったといわれ
る入国時の雰囲気はいまひとつ実感できていませんが、ヴィクトルはJFKの
入国ゲートでいきなり足止めをくらってしまいます。
というのも、飛行機に乗っている間に彼の祖国でクーデターが起こり、国が
消滅、パスポートが無効になってしまったから。国籍というアイデンティティー
を失ってしまったのです。
出入国を禁じられたヴィクトルは、その日から空港で生活する羽目に。
人が行き交い華やかなショップが並ぶ空港ターミナル。そのベンチに座る
ヴィクトル(英語風だとヴィクター)は、ちょっと見た目にはただの旅行客。
けれど実体はターミナルという異空間に閉じ込められた孤独な囚われ人なの
です。
英語もろくに喋れないヴィクターは、それでも必死で環境に適応しようと頑張
ります。なぜなら彼には死んだ父親と約束したことがあったから。その約束を
果たすまでは帰るに帰れない!ターミナルはヴィクトルにとって、まさにターミ
ナル(終着駅)なのです。
無一文のヴィクターは見よう見まねで小銭の稼ぎ方を覚え、ガイドブックで
英語を覚え、身につけたそのカタコト英語で恋のキューピッド役も務めます。
そうこうしているうちにヴィクターは気づくことになります。孤独で、自分の
アイデンティティーを求めてもがいているのは自分ひとりではないことを。
さすが移民・密入国者大国のアメリカで、空港で働くブルーカラーの労働者
にも移民や密入国者がごろごろ。彼らもヴィクター同様、孤独な、そして自己
のアイデンティティーを求めてやまない人たちだったのです。
彼らだけではありません。ヴィクターが一目惚れしてしまったスチュワーデス
のアメリア(C・Z・ジョーンズ)も実は孤独で自分のアイデンティティーを求め
てもがいているひとりでした。彼女の恋人は妻子持ち。彼女には永遠に妻の
座は巡ってこないのですから。
「類は友を呼ぶ」という諺がありますが、『類似性』といって同じ心根の人、
同じ境遇の人は惹かれやすい。だから、ヴィクターがターミナルで働く人たち
やアメリアと親密になったのは必然だったんでしょうね。

そうした生活が春から夏、秋、そして冬を迎えるまで続くのですが、その間に
は様々な悲喜こもごものエピソードが用意されています。
2時間ちょっとある作品ですが、それほど長くは感じません。それだけ見応え
はあるということ。特に、トム・ハンクスファンには堪えられない作品です。
でもラストは、あれがベストだとは正直思えませんでしたけれど・・・。

それにしても、空港で働くブルーカラーのひとり、グプタを演じたクマール・パ
ラーナさんってインド出身の俳優さん、御年85歳なんですってね。インディア
ン出身の名脇役チーフ・ダン・ジョージか藤村俊二さんみたいに飄々とした
演技が印象的でした。
by kiyotayoki | 2005-01-03 10:55 | 映画(た行)