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映画の心理プロファイル

『ひかりのまち』(1999 英)

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原題:『WONDERLAND』(109分)
監督:マイケル・ウィンターボトム
脚本:ローレンス・コリアット
音楽:マイケル・ナイマン
出演:ジーナ・マッキー
    シャリー・ヘンダーソン
    モリー・パーカー
    ジョン・シム
    スチュアート・タウンゼント
    イアン・ハート

同じ3人姉妹を描いても、アメリカ映画とイギリス映画では随分と雰囲気が違ってきます。

監督は、セミドキュメンタリータッチの『ウェルカム・トゥ・サラエボ』(1997)の悲惨さが印象に残るM・ウィンターボトム。
このお話も、主人公は3人姉妹の真ん中、次女のナディア(G・マッキー)。
11月のロンドン、27歳のナディアはソーホーのカフェでウェイトレスとして働いています。
恋人は常時募集中。でも、日々の生活の中で出会う人には魅力を感じることができず、意外性のある出逢いを求めて伝言ダイアルで相手を探しているところ。
今のところの意中の相手は、伝言ダイアルで知り合ったカメラマンのティム。
仕事もルックスも理想に近いし、話していてもいい感じ。でも将来像はまだ見えてきません。

長女のデビー(S・ヘンダーソン)は、バツイチの美容師。9歳の息子と気ままに暮らしていますが、息子の顔を見にやってくる元亭主のダン(I・ハート)に金を無心されるたびにキリキリカリカリ。
ちゃんと結婚しているのは三女のモリー(M・パーカー)だけ。夫のエディは優しいし、もうすぐ出産だし、幸せの日々・・・・
と思ったら、最近エディの様子がちょっと変。その理由はのちほどわかります。勝手に仕事をやめてしまったのです。
そのことをモリーに責められたエディは、結婚生活に自信をなくして突然家出。行方がわからなくなってしまいます。

簡単に責任を放棄してしまうエディのような男のメンタリティーは、今時の日本の若い男性(若者だけじゃないけど)と共通したものがありそう。
ほとんど何でもそれなりに与えられて育ってきたし、少子化のおかげて競い合う兄弟姉妹もいないし、親は妙に物わかりがいい。だから我慢する、責任をとるということをあまり体験せずに、いつの間にか年齢だけはふわふわと“大人”になってしまう。
エディだけが例外とは言えないところがツライですね、男としては。

そんな3人姉妹の日常生活が淡々と綴られていくのですが、原題は意外な感じのする『WONDERLAND』。
この“不思議の国”は『不思議の国のアリス』からとられたもののようです。
考えてみたら『不思議の国のアリス』はとってもシニカルなファンタジー。
そのシニカルさは現実世界と合わせ鏡になっている感じ。
アリスの行った“不思議の国”は“自分の思うようには絶対いかない国”でしたものね。
この映画は、アリスだけでなく私たちだって“不思議の国”の住人なんだよって言いたいのかも。
その世界を楽しめるかどうかは、あなた次第。そんな風に突き放しているところがイギリス映画らしいなあ、ホントに。
by kiyotayoki | 2005-01-06 11:22 | 映画(は行)