映画の心理プロファイル

『ゴーストワールド』(2001 米)

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原題:『GHOST WORLD』(111分)
監督:テリー・ツワイゴフ
製作:ジョン・マルコヴィッチ他
原作:ダニエル・クロウズ
脚本:ダニエル・クロウズ
    テリー・ツワイゴフ
出演:ゾーラ・バーチ
    スカーレット・ヨハンソン
    スティーヴ・ブシェミ
    ブラッド・レンフロ

このところ“子役が活躍する映画”を取り上げていますが、この映画は“子役の成長ぶりが
楽しめる映画”とも言えそう。
お話の主人公イーニドを演じるゾーラ・バーチを初めて見たのは『パトリオットゲーム』(1992)でしたが、
『オーメン』(1976)のダミアンの再来かと思ったその仏頂面はこの映画でも健在。
おまけに並みの男子生徒ならたじろいでしまいそうな黒縁メガネに個性的なファッションで登場します。
そのイーニドの親友レベッカを演じるのはスカーレット・ヨハンソン。この人も子役出身で、
最近は『ロスト・イン・トランスレーション』(2003)で印象的な役を演じていました。
また、2人の男友達ジョシュ役でブラッド・レンフロも登場。『依頼人』(1994)や『マイ・フレンド・フォーエヴァー』(1995)で注目された子役でした。
でも、この映画での彼にはその頃の輝きはもはや見られませんでしたけれど・・・。

映画の原作は全米の若者の間でカリスマ的な人気があるというダニエル・クロウズの同名コミック。
ある映画専門サイトでは、「おしゃれでキッチュで、とびきり切ない低体温系青春ムービー」と紹介されていましたが、
“低体温系青春ムービー”というのは言い得て妙なフレーズだなと感心。
お話は、高校の卒業式から始まります。
みんなが卒業パーティで大騒ぎしている中、イーニドとレベッカだけはそんな連中をクールな目で眺めています。
そこへ男子生徒が美人のレベッカ目当てに話しかけてくる。
「何で大学行かないの?」
レベッカへの質問でしたが、それを遮るようにイーニドがこう答えます。
「Just because(なんとなくよ)」
《どうせ説明したってリアルワールドに住んでるあんたにゃ理解できないわよ》
とでも言いたげに・・・。
実際、リアルワールドの住人である大人の目から見るとイーニドの行動は不可解なことばかりです。
高校を出ても、大学へ行くでも職につくでもない。
せめて仕事を探すぐらいはしているかと思うと、ダイナーに通っては人を観察したりバカにしたりして
“なんとなく”暇をつぶしているだけ。
あげくの果てには、新聞の出会い欄に載っていた中年男を名前を騙ってダイナーに呼び出し、
待ちぼうけを食ってる惨めなその男の姿を見て舌を出して笑ってる。
大人が「何でそんなことをする」と問えば、またイーニドの口からは同じセリフ
「Just because(なんとなく、別にィ)」が飛び出すことでしょう。
所詮、リアルワールドの住人にはゴーストワールドに住むイーニドの気持ちはわからないと原作者は言いたげ。
この映画のイーニドの気持ちがわかる人、「イーニドは私だ」と思った人はきっとゴーストワールドの住人、
あるいは最近まで住んでいた人なんでしょう。
親友のレベッカが2人で住むアパート探しをしてるのに、イーニドが乗り気じゃないのは、
アパートに住むってことはリアルワールドに足を踏み入れることだということを無意識に察知したからではないかしらん。
また、イーニドが、からかった中年オタク男のシーモア(S・ブシェミ)に親近感を覚えたのは、
彼が自分とは違うけど、リアルワールドではなく別のゴーストワールドの住人だと知ったからではないでしょうか。
なのにイーニドは自分の気持ちを素直にシーモアに伝えられません。
伝えないどころか、恋人いない歴4年のシーモアに恋人をあてがってあげたりもします(心理学で言えば『反動形成』というやつ)。

リアルワールド(大人の世界)は浸食力が強く、曖昧で儚いゴーストワールドは油断するとアットいう間に
雲散霧消してしまいます。あれほど気の合う友だったレベッカもいつの間にかあちらの住人になって、
話がかみ合わなくなってしまった・・・。
自分基準の世界(ゴーストワールド)を保とうとすれば、イーニドみたいにつっぱるか、シーモアみたいにオタクになるしかないのかな。
でも、イーニドのゴーストワールドもあちこち浸食されて穴ぼこだらけ。
さて、イーニドはどうする?どうなる?
怪優スティーヴ・ブシェミのオタク演技も必見。未見の方は是非!
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by kiyotayoki | 2005-01-15 10:46 | 映画(か行)