映画の心理プロファイル

『ブラック・サンデー』(1977 米)

新聞なら「毎朝新聞」、省庁なら「国防省」・・・といった具合に、
映画や小説のようなフィクションの世界では実際にある会社や組織の名前を
それらしく匂わせるだけに留めるケースが多いけれど、
この映画は、「黒い九月」という当時世の中を騒がせたテロ組織の名前をそのまま使ってる。
しかもタイトルも「黒い九月(ブラック・セプテンバー)」をもじった「ブラック・サンデー」だ。
そのせいもあってか、公開直前に「上映中の映画館を爆破する」という脅迫が入り、
あえなく公開中止になり、用意したプリントは廃棄され、幻の映画となってしまった。

それから早35年、その映画が「午前十時の映画祭」で公開中というのを知って、
日比谷のみゆき座へ行ってまいりました。

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原題:『BLACK SUNDAY』(143分)
監督:ジョン・フランケンハイマー
原作:トマス・ハリス
脚本:アーネスト・レーマン
音楽:ジョン・ウィリアムズ
出演:ロバート・ショウ
    ブルース・ダーン
    マルト・ケラー

今回、初めて知ったのだけど、原作はハンニバル・レクター・シリーズで有名なトマス・ハリスだったんだね。
トマス・ハリスとしては最初のベストセラー作だったようだ。

監督は、『大列車作戦』(1964)『フレンチコネクション2』(1975)など社会派アクション映画の名手として
知られるジョン・フランケンハイマー。
主演は、『007 ロシアより愛をこめて』(1963)の冷酷な殺し屋役や『JAWS/ジョーズ』(1975)の
シャークハンター役などが印象に残るロバート・ショウ。
どちらも当時40代後半。油の乗り切った2人の仕事ぶりはさすがに見事だったけど、
テンポのいい現代のアクション物を見慣れているせいか、143分がちょっと長く感じられたのは確か。

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映画の見どころは、大統領(カーター大統領らしき人物が一瞬登場)を含む8万人の観客を呑み込んだスーパーボウルの競技場を爆破しようと企むテロ組織と、イスラエル特殊部隊(モサド)の攻防。
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そのモサドの隊長カバコフを演じるのがロバート・ショウだ。
カバコフという名前からしても、イスラエル建国を押し進めたロシアやウクライナ系のユダヤ人なんだろう。
コテコテのシオニストって感じかな。だから、テロリストたちには容赦がない。
そんなカバコフが一つだけミスを犯す。テロリストのアジトを襲撃した際にひとり女を見逃してしまうのです。
その女が復讐の牙を剥くとは思いもよらず・・・(甘いゾ、カバコフ)。

思い出してみると、この映画が公開されるはずだった1977年頃はパニック映画がよく作られていた時代で、
この映画とよく似た設定の『パニック・イン・スタジアム』という作品もあった(調べたら1976年)。
『パニック~』のほうもスーパーボウルが行われているスタジアムが舞台となるパニック映画で。
だけど、テイストはかなり違うものだった。
あちらは、いわゆるグランドホテル形式で、その時スタジアムに居合わせた様々な人間の、
それこそ“人間模様”を描くところに主眼が置かれた作品だったという記憶がある。
それだけに、当時のスターがいっぱい出ておりまして(中には、『逃亡者』のデヴィッド・ジャンセンも)。

その点こちらは、主要なキャストは、ロバート・ショウと、ブルース・ダーンとマルト・ケラーの3人だけ。
その3人が3人ともスターというよりは、脇が似合う個性派俳優というところがなんとも渋いじゃありませんか。

そうそう今回、映画を実際に観て意外だったことが、ひとつ。
主演のロバート・ショウはこの映画があちらで公開された翌年、心臓発作で51歳の若さで亡くなっている。
そのことを知っていたので、きっとロバート・ショウの顔にはやつれ感というか死相が表れているんじゃないかと心配していたのです。
でもそれは杞憂でした。まあ、ロバート・ショウの走ること走ること!
死の予感なんか微塵も感じさせないタフガイぶりでありました。

ま、それだけに、本人もまさかこのあと1年余りで自分が死ぬとは思いもよらなかっただろうなぁ・・・
と、しみじみしてしまった帰り道ではありました。
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by kiyotayoki | 2012-06-20 10:54 | 映画(は行)