映画の心理プロファイル

『崖っぷちの男』(2012 米)

主人公が“飛び降り自殺志願の男”だと知って、
これは是非とも観なければと思った映画です。

というのも私、ある時期、映画やドラマの中に出てくる
「飛び降り自殺を止めるシーン」
を集めるのを趣味にしていたものですから(^^ゞ

止めるためには、説得して自殺志願者の「死にたい」気持ちを「生きたい」に変えなきゃいけないんだけれど、
そこには様々な心理テクニックが使われているんですね。
それが映画ごどに工夫があって面白かったので集め始めたら病みつきになってしまいまして(^^;

どんな映画にそんなシーンがあったかですって?
そうですね、例えば、『タイタニック』(1997)では二人が知り合う重要なシーンで使われていましたし、古いところでは『素晴らしき哉、人生!』(1946)にもあったし、『ダーティハリー』『リーサル・ウェポン』(1987)、『クロコダイル・ダンディ2』(1988)etc
と、数え上げたらキリがないほどあります。

でも、それらの主人公はほとんどが“止める側”。だけど、本作の主人公は“止められる側”。
さて、どんな作品に仕上がっているのか、興味津々で映画館へ出かけたのでした。

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原題:『MAN ON A LEDGE』(102分)
監督:アスガー・レス
脚本:パブロ・F・フェニベス
音楽:ヘンリー・ジャックマン
出演:サム・ワーシントン
    エリザベス・バンクス
    ジェイミー・ベル
    エド・ハリス

NYの街角で、衆人環視の中、主人公がひとりどんどん窮地に陥っていく展開というと、
『フォーン・ブース』(2002)を思い出すけれど、 こちらは展開的には似ているものの、主人公が自ら進んで渦中の人になっていくところが決定的に違う。

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映画の舞台は、マンハッタンの高級ホテル。
ひとりの男が21階の窓枠を乗り越え、幅わずか30cmの縁に立ち、いまにも飛び降りようとするところから始まる。
通行人によってその姿は発見され、たちまち警官隊や消防隊、そして群衆が集まり、界隈は騒然となる。

いったい男は何者で、なぜ飛び降り自殺を試みようとしているのか? 
その謎が前半のつかみ。で、次第にその男がやろうとしているある計画が明らかにされてゆくという展開。

男の名は、ニック。元刑事。けれど、無実の罪で投獄され、つい先日脱獄して行方をくらましていた男だった。
捕まったが最後、もう刑務所からは出て来られないだろう。まさに崖っぷちの男だ。
そんな男が本当にビルの淵(Ledge)の上に立つというアイデアが面白い。

そうこうしているうちに、飛び降り自殺の現場にはお約束の巨大な空気マットが運ばれてきます。
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ちなみに、米国では17分に1人、誰かがどこかで自殺しているんだそうな(そういうデータがさりげなく挿入されてるので飛び降りフリークとしては気が抜けません!^^;)。
そして、こういう現場にはこれまたお約束の女性TVリポーターが自分勝手にレポートを始めちゃう。
演じているのは、ベテラン女優のキーラ・セジウィック。
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もちろん、飛び降り自殺を止めるよう説得する係=交渉人(ネゴシエイター)の資格を持つ刑事もやってくる。
でも、ニックは「あんたじゃダメだ。リディア・マーサーという女性刑事を呼んでくれ」と注文を出します。
なぜ?
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実は、ニックには計画があったんですね。自分の無実を証明するという。
そのためには、ある一定時間、衆人の目を自分に集めておく、釘付けにしておく必要があった。
そのあいだに、ニックの弟とガールフレンド2人に秘密裏にあることをさせようというのが彼の作戦。

リディアを交渉人に選んだのも、彼女には前に説得に失敗して飛び降り自殺を許してしまったという過去があるのをニックが知っていたから(米国じゃそういうことまで実名付きで報道されちゃうみたいなんだね)。
そんな彼女なら、名誉挽回のために必死に説得してくれるのではないか。そうなれば時間が稼げると。

うまいことを考えたもんです。
だけど、そういう作為が前面に出ているので、なんか予定調和っぽい印象がぬぐえないんだな。
しかも、飛び降りようとしている男を演じているのがタフガイのサム・ワーシントンだからか、あんまり悲壮感がない。
それにカメラワークのせいか、ニックは60mはあろうかという高所に立っているのに、その恐怖感があまり伝わってこない。もっとお尻をゾワゾワさせて欲しかったのに。
思うに、カメラがもっと主人公の目になっていたら、恐怖が実感できたかもしれないのにな。

しかも、秘密裏にあることをしているニックの弟とガールフレンドに今ひとつ緊張感がないので、スリルを感じられないし、「素人なのになんでこんなことができるの?」と、つい思ってしまうので、なんか説得力にも欠けるんだな。

その上、僕にしてみたら肝心の“飛び降り自殺を止めるシーン”に工夫があまり見られなかったのも残念だった。
ま、説得を長引かせるために使われているので、工夫がなくても仕方がないんだけれどね。

と、まあ、後半は辛口批評になってしまったけれど、
全体としてみれば及第点はあげられる作品には仕上がっていたのではないでしょうか。
後味もいい映画だし。

そうそう、ニックの弟を演じているジェイミー・ベル。どこかで見た顔だと思ったけれど、
な、なんと『リトル・ダンサー』(2000)の男の子だったんだね。
いい役者さんになったもんです。
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ガール・フレンドを演じたジェネシス・ロドリゲスという女優さんもスタイル抜群で、目の保養になりました♪
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by kiyotayoki | 2012-07-16 10:20 | 映画(か行)