映画の心理プロファイル

『打ち上げ花火、下から見るか、横から見るか』(1993 日)

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監督・脚本:岩井俊二
音楽:REMEDIOS
    「Forever Friends 」  
出演:山崎裕太
    奥菜 恵
    反田孝幸
    石井苗子
    麻木久仁子

子役が活躍する作品は、もちろん日本にも沢山あります。
その中から、小粒だけれど、とても瑞々しくて、しかも郷愁あふれるこの作品をご紹介。
94年に劇場でも公開されたようですが、元々は『ラブレター』や『スワロウテイル』で知られる岩井俊二監督がTVのディレクターだった時代に撮ったテレビドラマです。
主人公の典道を演じているのは、当時TVのバラエティー番組で子どもタレントとして活躍していた山崎裕太(当時12才)。典道が淡い恋心を抱く相手なずなを演じるのは、この映画がデビュー作という奥菜恵(当時13才)。

小学校最後の夏休みの、とある1日のお話です。
この日は登校日。お話の舞台となる飯岡町(千葉に実在するそうです)の夏最大のイベント、花火大会が開催される日でもありました。
典道にはクラスに密かに憧れている女の子がいました。それがなずな。
でも友達の祐介が「なずなに告白したい」と公言していることもあって何も言えずにいます。
ところが2人の熱い視線を受けているなずなは終始浮かない顔。
その原因は、朝、母親(石井苗子)から担任の春子先生(麻木久仁子)に渡すようにと持たされた手紙にありました。手紙には、なずなの両親が離婚すること。そしてなずなを転校させる旨がしたためられていたのです。
なずなは決心します。家出をしようと。でも一人じゃ心もとない。そうだ、プールで50メートルの競争をしようとしている典道と祐介の勝ったほうを誘おう・・・、そう心に決めました。
そんなこととはつゆ知らず、祐介はなずなに告白するきっかけを作ろうと典道に50メートルの水泳勝負を持ちかけていたのでした。
「俺が勝ったら、なずなに告白する」
結果は、ターンで足を痛めた典道の負け。さあ告白、と思ったら、その前に「花火へ行こう」と、なずなに誘われ茫然自失の祐介。
一方、典道や祐介を含めた仲良し5人組の間では、ひとつの話題でもちきりでした。それは「花火を横から見たら、丸いのか、それとも平べったいのか」という疑問。
5人はそれを確かめるために、花火を横から眺められる灯台へ行こうと約束します。
なぜか大乗り気の祐介。
せっか憧れの子とデートできるのになぜ?
そこが恋心の複雑で面白いところ。いざとなると不安になるんですね。
不安が募って逃げ出したくなっちゃう。
結局、祐介は典道に伝言を頼むことにします。「花火には行けない」と。
「何でだよ、花火、行けばいいじゃん。なずなのこと好きなんじゃねえの?」
と詰問する典道に祐介はこう言い放ちます。
「なわけないだろ、あんなブス!」
こういうのを心理学では『反動形成』といいます。好きなのに返っていじめたり、「あいつ変なヤツだよね」と悪口をいったり・・・。相手を意識すればするほど逆の行動に出てしまうことってよくありますよね。
こういうことって自分でも思い当たるので、面はゆくなっちゃうんですよね。

裏切られた形になったなずなは典道に恨みがましくこうつぶやきます。
「裏切られるの血筋みたい・・・・。ホントはね、君を誘おうと思ったの。50メートル、君が勝つと思ったから」
典道にしてみれば、なずなからの思わぬ衝撃の告白。
ここは男気を見せなければ。「俺は・・・、俺は裏切らないよ」。
精一杯の言葉でした。ところが、その舌の根も乾かないうちに典道はなずなを裏切ることになるのです。
家出を知ったなずなの母が連れ戻しに来たのです。助けを求めるなずな。
でも、母親に鬼のような形相で睨まれた典道は、引きずられていくなずなを何もできずに見送ったのでした。
「あの時、俺が勝ってれば、勝ってれば・・・・」
後悔の念に苛まれる典道。

このあと、お話は「もし50メートルの勝負で勝っていたら」という典道の空想の世界に入っていきます。
50分弱ということもあって、とにかく無駄のないストーリー。
かといって展開が慌ただしいかといえば決してそうではなく、少年たちの心の脈打つ様が独特のカット割りで詩情豊かに表現されており、若き日の岩井監督の才能のきらめきが感じられる作品に仕上がっています。
とにかく10年以上前の作品なのに古さを感じさせない。その点ひとつをとっても名作といえるかも。
  
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by kiyotayoki | 2005-02-05 10:41 | 映画(あ行)