『アウトロー』(2012 米)
1976年のは、クリント・イーストウッド監督・主演の西部劇で、アウトロー(無法者)がわんさかいた時代のお話。
だけど、2012年、つまり今公開中の映画の舞台は現代。アウトロー(無法者)にはすこぶる生きづらい時代のお話だ。
さて、そんな時代に出現したアウトローはどんな活躍を見せるのだろうか。
しかもこのアウトローも、イーストウッドが演じた主人公同様ストイックに自らが信じた正義を貫こうとする。
そんなクールで一徹な男を演じるのは、トム・クルーズ。
監督・脚本は、ああ、知らなかった、ミステリー映画の傑作『ユージュアル・サスペクツ』の脚本で
オスカー像を手にしたクリストファー・マッカリーだったんだね。
原題:『JACK REACHER』(130分)
監督・脚本:クリストファー・マッカリー
原作:リー・チャイルド
音楽:ジョー・クレイマー
出演:トム・クルーズ
ロザムンド・パイク
リチャード・ジェンキンス
ロバート・デュヴァル
観る予定はなかった映画だったので、ほとんど予備知識なし。
でも、それが結果としてみたら良かったのかも。意外性があって、楽しめたもの。
というのも、トム・クルーズ主演だから、てっきり派手なアクションとCGてんこ盛りの映画だと思っていたから。
観てみたら、いやいやなんの、探偵映画華やかりし頃のムードを漂わせる
ハードボイルドミステリーに仕上がっているじゃありませんか。
しかも、主人公ときたら拳銃どころか携帯やスマホも持たないアナログ男だ。
いや、着の身着のままで、家も妻子も免許証(身分証明書)さえ持っていないから、
下手をすると浮浪者にだってなりかねない男なのです。
なのに主人公ジャック・リーチャーがそうならないのは、元米国陸軍の秘密捜査官という経歴な上に、
明晰な頭脳と鍛え上げられた肉体の持ち主だから。
米国陸軍のそういう組織というと、『将軍の夜』(1999)でジョン・トラヴォルタが演じていた捜査官を思い出す。
あの映画を観た時に知ったことだけど、米国陸軍にはC.I.D(米国陸軍犯罪捜査司令部)という組織があるらしい。
ジャックもその一員だったのかな?
お話は、白昼のピッツバーグ近郊の川沿いで、向かいの駐車場から発射された銃弾で
5人の通行人の命が奪われる凶悪な無差別殺人事件が起きるところから始まる。
ただ、容疑者は呆気なく捕まり、事件は一件落着かと思われた。
が、そこにふらりと現れた一人の男ジャック・リーチャーが、単純に見えたその事件の裏に隠された
真実を次々と暴き出していく・・・というもの。
ジャックの捜査方法は当然ながら、体を張ったハードボイルドタッチになるのだけれど、
その過程でやり取りされる会話や相手の行動から、五手先、十手先を読んで推理を展開していく
ジャックの謎解きは、本格的な推理小説の手法そのままで、説得力があって楽しめるものだった。
登場人物もそれぞれがはまり役。
ジャックと共に事件の真相を探ろうとする弁護士ヘレン役のロザムンド・パイクは、知的な役が合う女優さんだし、
そのヘレンの父親役リチャード・ジェンキンスも脇で光る味のある俳優さんだ。
だけど、それより何より嬉しかったのは、お話の後半に射撃場の管理人役でロバート・デュヴァルが出てきたこと。
ロバート・デュヴァルさん、もう82才になるんだね。最近、久しくお顔を見ていなかったので、
お元気なのか、ちょっぴり心配していたところだった。
だけど心配は杞憂でした。いやいや元気元気。飄々とした役柄と持ち前の人懐っこい笑顔が
緊迫感のあるクライマックスにユーモアをひと味加わえた感じで、この作品に愛着さえ覚えたほどだった。
この味のあるキャスティングも続編への布石だとしたら、上手いなぁ。