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映画の心理プロファイル

『博士の異常な愛情』(1964 英・米)

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原題:『Dr.STRANGELOVE』(93分)
監督:スタンリー・キューブリック
原作:ピーター・ジョージ
脚本:スタンリー・キューブリック他
音楽:ローリー・ジョンソン
出演:ピーター・セラーズ
    ジョージ・C・スコット
    スターリング・ヘイドン
    スリム・ピケンズ
    ジェームズ・アール・ジョーンズ

「または私は如何にして心配するのを止めて水爆を愛するようになったか」

という長~いサブタイトルがつくこの映画で強烈な個性を発揮してその怪優
ぶりを見せつけてくれたのがピーター・セラーズ(1980年54才で死去)です。
つい最近、彼の映画人生を綴った『ライフ・イズ・コメディ!ピーター・セラーズ
の愛し方』という映画が封切られたのは記憶に新しいところ(セラーズ役は
『シャイン』のジェフリー・ラッシュ)。

デビュー当時のタモリの得意ネタに「四カ国麻雀」というのがありました。
卓を囲む四カ国人をタモリが1人でインチキ四カ国語を駆使して演じ分けるん
ですが、ピーター・セラーズもこの1人ン役を得意芸にしていた人。
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この映画でも生真面目な英国人大佐
マンドレーク、平和主義の米国大統領、
そして狂気の科学者ストレンジラブの
3役を実に楽しそうに演じています。
中でも、この映画のタイトルにもなって
いるマッドサイエンティスト、Dr.ストレンジラブのキャラは秀逸!
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今は帰化して米国人になっているけれど、元はナチスドイ
ツの下で原爆製造に従事していた科学者という設定。
右腕と下半身がマヒしているため車椅子に乗っています。
普段(感情を制御できている時)は、慇懃丁寧かつ理路整
然と会話をする男。感情を制御しようとするあまりに、ぎこ
ちない笑顔がいつも顔に貼り付いています。
ところが、激昂して感情を制御できなくなると、なんとマヒしているはずの右手
までが制御不能になって勝手に“ハイル・ヒットラー”のポーズをとってしまった
りしちゃう(^^;)。
おまけに大統領のことを思わず「総統」と口走っちゃったり。
フロイトが指摘していますが、言い間違いにはその人のホンネが現れるもの。
どうもこのストレンジラブ博士、いまだにヒトラーへの忠誠心を残しているよう
なんですね。

そんなブラック・ユーモアが随所に散りばめられているものの、お話自体は
核戦争の恐怖を扱ってますから超シリアス。
某米空軍基地の将軍(S・ヘイドン)が、なんと独断でソ連の核基地の爆撃指
令を発してしまったのです。
大統領はソ連の首相と連絡をとって事態の収拾を図りますが、迎撃ミサイル
によって無線を破壊された1機がソ連の防空網を突破してついに目標に到達、
水爆を・・・・(これは書かざるを得ませんね、だいたい映画のポスターからして
水爆が落下していく写真なんですから)とうとう投下しちゃう。
その水爆には、カウボーイハットの機長(スリム・ピケンズ)がロデオよろしく
またがっています。投下装置が壊れたんで修理してるうちに一緒に落下して
しまったんですね。この映画のハイライトシーンです。
実は、この機長の役も最初はピーター・セラーズがやることになってたんです
ってね。1人4役のはずだった。ところがセラーズ、断っちゃった。
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おかげで農家のおっさんみたいな顔のスリム・ピケンズの
名が映画史に残ることになっちゃった。
完成したフィルムを見て、セラーズが悔しがったのは言う
までもありません。
エンディングは、世界のあちこちで水爆のきのこ雲がモコ
モコとわき上がる中、ヴェラ・リンが歌う『We’ll meet again:また会いま
しょう』がやさしく流れます。
最後までブラックに徹したキューブリックの傑作のひとつです。

そうそう、昔の映画を見直す楽しみのひとつに、「俳優の若かりし頃の姿を
見つける」というのがありますが、この映画のソレはジェームズ・アール・ジ
ョーンズでした。あのダースベイダーの声や『フィールド・オブ・ドリームス』
の名演が思い出されますが、彼にとってこの映画は記念すべきデビュー作
だったんですね!
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by kiyotayoki | 2005-03-18 17:22 | 映画(は行)