『サイコ』(1960 米)
原題『PSYCHO』(109分)
監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック
原作:ロバート・ブロック
脚本:ジョセフ・ステファノ
音楽:バーナード・ハーマン
タイトル・デザイン:ソウル・バス
出演:アンソニー・パーキンス
ジャネット・リー
ヴェラ・マイルズ
マーティン・バルサム
「自分のキャリアを決定する作品になるだろう」
これは、この作品に出た時、主演のA・パーキンスが友人に語ったと
される言葉。
実際その通りで、これ以後、パーキンスといえば
『サイコ』、『サイコ』といえばパーキンスというイメ
ージがすっかり定着してしまいました。
腹をくくったのか、パーキンスはその後、『サイコ2』
(1983)『サイコ3』(1986:監督・主演)そして一応
の完結編となる『サイコ4』(1990)を撮り上げると、
満足したかのように1992年エイズで亡くなってしま
いました。
「青春スター」だったパーキンスがこの映画に出たのは27歳の時(享年
60歳)。オーバーに言えば人生の半分を『サイコ』に捧げてしまったの
ですから、怪優の称号(?)を与えるにふさわしい人といえそう。
お話は、前半と後半でガラリと様相を変えてしまいます。
前半の主人公は、ジャネット・リー扮するマリオンという女。
彼女は会社の金4万ドルを横領して車で逃走します。
運転に疲れたマリオンは、幹線道路を外れて、さびれたモーテルに身を
隠すことにします。
その宿「ベイツモーテル」の主人こそが後半の、そして本当の主人公で
あるノーマン・ベイツ(A・パーキンス)なんですね。
ノーマンは純朴そうな恥ずかしがり屋の青年で、
丘の上に建つ母家に頑迷固陋な母と2人で住ん
でいるようです。
自分を見る目は好奇心いっぱいだけど、実害は
なさそうだわ。女としての魅力に自信を持つマリ
オンは安心してシャワーを浴びることに。
けれど、その女としての魅力が彼女に死をもたらす結果になろうとは・・・。
映画史上あまりにも有名なシャワー室での惨劇が
繰り広げられるのはその直後のことです。
『サイコ(PSYCHO)』は『サイコパス(PSYCOPA
TH)』の略で、「精神病質者」という意味。
ただ、今は専門用語としては使われなくなっており、
「反社会性人格障害」という用語が一般的になっています。
用語の解説は置いといて、こんな専門用語がタイトルになるということ、
そして心の病が起因する犯罪がテーマになるということは、それだけ当時
のアメリカ社会が病んでいたという証拠なのでしょうね。
光には影がつきものであるように、爆発的な繁栄を続けていアメリカは
一方で人の心に暗い闇をはびこらせていたのですね。