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映画の心理プロファイル

『七年目の浮気』(1955 米)

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原題:『THE SEVEN YEAR ITCH』(104分)
監督:ビリー・ワイルダー
原作:ジョージ・アクセルロッド
脚本:ビリー・ワイルダー
    ジョージ・アクセルロッド
音楽:アルフレッド・ニューマン
タイトル・デザイン:ソウル・バス
出演:トム・イーウェル
    マリリン・モンロー
    イヴリン・キース  

今回は、「妄想」つながりで。
地下鉄の通風口からの風でモンローのフレアースカートが舞い上がるという、あまりにも有名なシーンが登場するのはこの映画です。
舞台は、ちょうど今頃、夏真っ盛りのニューヨーク。妄想にとりつかれることになるのは、雑誌社に勤める平凡な中年男リチャード(T・イーウェル)。奥さんと子供をサマーキャンプに送り出し、ひとりで留守番をすることになったのが事の始まりでした。
束の間の独身生活を送ることになったリチャードは心ウキウキ。でも、自制心は人一倍強い男。妻子を送り出した途端に街行く美女を見て鼻の下を伸ばす男どもを軽蔑の目で見たりします。また、医者と妻の忠告どおり禁酒禁煙を誓い、コレステロール値を下げるためにベジタリアン専門レストラン(50年代にもうあったんですね、こんな店!)で夕食をとる模範亭主ぶり。
けれど、彼が謹厳居士を気どっていられたのは帰宅するまでのこと。というのも帰宅した途端、彼は遭遇してしまうのです。フェロモンの塊のようなマリリン扮する2階の新住人に! 彼女は夏休みで留守をする2階の住人から、その間だけ部屋を間借りしたらしい。
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以来、リチャードは気もそぞろ。なんとか冷静さを保とうと会社から持ち帰った原稿のチェックに専念しようとしますが、そのタイトルがいけなかった。
『男性の潜在意識~中年男の抑圧された本能、その原因と結果~』
精神科医が書いたこの本の中味はというと、結婚7年目を迎えた既婚男性の8割以上に浮気願望があり、実際、浮気しがち。しかも浮気の9割は夏に集中する。そんな既婚男性の性癖を“7年目のムズムズ(The seven year itch)”と名づける!というもの。当時のアメリカは空前の精神分析ブームでしたから、こういう本が出ても不思議じゃないって感じ。
そんな本を読んでる最中に2階から植木鉢が落ちてきます。水をまいてて誤って落としちゃったと謝る彼女。そこでリチャード、思わず口走っちゃうんですね。「そんなことより、うちで一杯どう?」。早くも浮気心がムズムズしちゃったわけです。だって季節は浮気にピッタリな夏。しかもリチャードは結婚7年目!
いよいよリチャードの妄想モードにスイッチが入ります。
彼女を落とすにはどうする?
まずはムードづくりだな。それには音楽。ならばラフマニノフのピアノ協奏曲2番だな。そう思ってレコードをかけた時にはリチャードはベルベットのスーツに身を包んだピアニストに変身しています。そして彼女を横に侍らせ、女性に触れるように優しくピアノの鍵盤に指を這わせます。すると紡ぎ出されたメロディに刺激されてか彼女が悶えはじめるじゃありませんか。そんな彼女にリチャードは熱い熱いキスを・・・って、これすべてリチャードの妄想なんですけどね^^;。
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でも、頭が妄想だらけになるのは致し方ないのかもしれません。なにせ相手はマリリン・モンロー。しかも、本人にはその気はないのかもしれませんが、男の気をそそるような行動を平気でとっちゃうんですから。冒頭の有名なシーンだって、あれはリチャードの妄想が生んだシーンではなく、彼女が何げなくやってしまう行為なのです。そういうのを見せつけられて欲情を覚えない男は、男としての能力が欠如しているといわれても仕方ないかも。
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実際、あのシーンの撮影は深夜に行われたにもかかわらず、野次馬がどっと押し寄せたんだそうです。で、それを見た当時の夫ジョー・ディマジオが激怒。それが離婚の遠因になったというのは有名な話。
 
by kiyotayoki | 2005-08-07 16:55 | 映画(さ行)