『オルランド』(1992 英・露・伊・仏・蘭)
原題:『ORLANDO』(94分)
監督・脚本:サリー・ポッター
原作:ヴァージニア・ウルフ
音楽:デヴィッド・モーション
サリー・ポッター
出演:ティルダ・スウィントン
シャルロット・ヴァランドレイ
ビリー・ゼイン
先日、パチモン解析機『前世歴解析機』を作った時、思い出したのがこの映画。久しぶりに見直してみました。
数奇な運命をたどる英国人の若者オルランドの四百数十年に渡る半生(!)を描いた作品です。
「四百数十年?それで半生って、どういうこと?」
そう首を傾げた人がいるかも。
キーの打ち間違い・・・、いえ、そういうお話なんです。
16世紀後半、特権階級の貴族として生を受けたオルランドはエリザベス一世の寵愛を受け、「屋敷を与える代わりに決して老いてはならぬ」と言い渡されます。と、どうしたことか、オルランドは歳をとらなく、いや、とれなくなってしまうのです。
オルランドを演じるのは、『ナルニア国物語』で白い魔女を演じていたティルダ・スウィントン。
でも、オルランドは男です。この時代の貴族の若者は、育ちの良さを演出するために女性的に装ったんだとか。
このオルランド、失恋などのショックを受けると現実から逃避でもするかのように6日も7日も昏々と眠り続ける性癖の持ち主。18世紀初頭、外交官として中東へ赴き戦争を体験、人の死を目の当たりにした時もまた昏睡してしまいます。そして、目覚めた時、彼はなんと女性になっていたのです。
太古の昔、最初の人間は男と女が胴体でくっついた両性具有(アンドロギュノス)の存在だっといいます。それをゼウスが引き裂いたので、以来男と女は離ればなれになった相手を求めて恋をするのだという古代ギリシャの神話がありますが、オルランドはまさにアンドロギュノスのような存在なのかも。
ユングは、男女両性のバランスの意識的な維持を表す言葉としてこの“アンドロギュノス”を使っています。ティルダ・スウィントンという女優さんは、男女両性の微妙なバランスを維持できるバイセクシャルな魅力を持つ希有な人と言えるかも。
女になったオルランドは世紀を越えてなおも生き続け、恋をし、セックスも経験し、女の子を授かった頃には時代は20世紀(現代)に・・・。四百数十年の時が過ぎていたというお話。
昨日会った近い将来作家になりそな女性がこんなことを言っておりました。
「生まれてくる赤ちゃんは産道を通る時に前世の記憶をなくしてしまうと言いますよね」
オルランドはひょっとしたら昏睡状態の時に実は生まれ変わっていたのかもしれませんね。だけど産道を通ってきてないから前世の記憶をなくしてしまわない。だから、四百数十年ずっと生きてきたような気になっていたのかも・・・。そんな空想までふくらんじゃう不思議な映画です。