映画の心理プロファイル

『クラッシュ』(2004 米)

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原題:『CRASH』(112分)
監督・原作・脚本:ポール・ハギス
主題歌:キャスリーン・ヨーク
出演:ドン・チードル
    マット・ディロン
    サンドラ・ブロック
    ジェニファー・エスポジート
    ブレンダン・フレイザー
    ライアン・フィリップ他

来月にはもう今年度のアカデミー賞が発表されるというこの時期になって、やっと観ました(^^;。
昨年度のアカデミー作品賞受賞作です。
もういろんな方が書いてらっしゃるだろうから、何を書いていいものやら。
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映画を見終わっても耳に残るのは、『In The Deep』という主題歌。
歌っているのはキャスリーン・“バード”・ヨークという歌手。
女優として映画の中にも出ていたそう(女警官役)だけど、んーっ気がつきませんでした。
映画の前半は特に言葉の暴力で傷つけ合うシーンが続くので、この曲が癒しになります。
舞台は、人種のるつぼのようなL.A.。まるで心に荒いヤスリでもついているかのように、人と人が触れ合うたびにガリガリ擦れ、怒りという火花がバチバチっと散ります。
なので出だしは、どんな悲惨な結末が待っているんだろうと不安になる映画。

群像劇であるこのお話で主役を探すとしたら、“拳銃”かもしれません。
何丁も出てきますが、それがそれぞれに人を操りドラマをつくり出していく。
痛いドラマもあれば、ホッとするドラマもある。
それに操られる人間達がまた引き金の軽い拳銃みたいな連中ばかりだもんだからすぐ暴発しちゃう。
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そのひとりがマット・ディロン扮する警官ライアン。
こいつが「お前はひとりアメリカ合衆国か?!」と言いたくなるような男。差別意識丸出しで、“俺が法律だ”的に力で人の心を踏みにじるかと思えば、危険も省みず人の命を救おうともする。まさにブッシュ・アメリカの体現者なのです。
アメリカって、精神分析風に考えると、「横暴な父親(イギリス)から早くひとり立ちしたのはいいけれど、そのために子供の頃に消えるはずの万能感を成長しても持ち続けてる大人」って感じの国。だから、“世界の警察”とか平気で名乗って他国に介入するし、その一方でお節介なほどの慈愛あふれる行為もしちゃう(^^;。

このマット・ディロンという役者さん、万年青年っぽい人ですが、もう42歳になるんですね。調べて驚きましたが、共演のサンドラ・ブロックとドン・チードルも同い年だそうです。

そうそう、この作品、クリスマス映画でもあるんですね。
なので、心がジワッと熱くなるエピソードも用意されています。
それが“見えないマント”のエピソード。これが憎らしいほどよく出来てる。
群像劇らしく、いろんな人にスポットライトが当たる映画なんですが、その1人がマイケル・ペーニャ扮するダニエル(『ワールドトレートセンター』でも儲け役をやってました)。善良を絵に描いたような男。殺伐としたL.A.では絶滅危惧種に指定されそうな真面目な錠前職人で、ひとり娘をこよなく愛す善きパパです。
そんなダニエルに、憎悪という悪魔が背後から忍び寄るんです。その悪魔がいつ牙を剥くか、このシーンか、それともこのシーンかと、ハラハラドキドキ。
なぜハラハラするかといえば、ダニエルが“見えないマント”を娘に渡していたからです。それは神経過敏な娘のためにダニエルが考え出した架空のマントでした。
「パパが今までケガひとつせず元気でこられたのはこのマントのおかげなんだ。これをお前にあげるからもう安心しなさい。パパにはもう必要ないものだから」
そのセリフを聞いた途端、観客は胸騒ぎを覚えるんです。
「ダニエル、やばいよ。渡して大丈夫なんかい?」って。
しかも、物語はダニエルの死の予感を補強するように進んでいく。このへんのストーリーテリングが上手いんですね。
そして、ついに悪魔が牙を剥く時がやってきます。
しかも、愛する娘の目の前で!
嗚呼、ダニエルの運命や如何にっっっ・・・・

さすが作品賞をとっただけはあります。
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by kiyotayoki | 2007-01-31 18:05 | 映画(か行)