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映画の心理プロファイル

『ドア・イン・ザ・フロア』(2004)

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原題:『THE DOOR IN THE FLOOR』
(112分)
監督・脚本:トッド・ウィリアムズ
原作:ジョン・アーヴィング
音楽:マーセロ・ザーヴォス
出演:ジェフ・ブリッジス
    キム・ベイシンガー
    ジョン・フォスター
    ミミ・ロジャース
    エル・ファニング

米国現代文学の巨匠で、映画ファンには『ガープの世界』(1982)や『サイダーハウスルール』(1999)の原作者として知られるジョン・アーヴィングの小説『未亡人の一年』の映画化作品なんだそう。
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自伝的要素の強い作品らしいけど、調べてみて驚き。物語に登場する夫婦の娘を演じる子役エル・ファニングちゃんは、あの天才子役ダコタちゃんの妹なんだと!
この映画の撮影中に5歳の誕生日を迎えたというエルちゃん、芸達者なところと、ちょっと病弱な感じのするところはお姉ちゃんそっくりかな。(※2人は『隣りのトトロ』の英語版でサツキとメイの声を担当してるんだそうな)

2人の息子を事故で失った家族の物語。
舞台はNY郊外の高級リゾー地ロングアイランドの海辺に建つ瀟洒な屋敷。
主のテッド(J・ブリッジス)は著名な児童文学作家で、自作の絵本は自分で絵も描くほどの画才の持ち主。ちなみに、タイトルバックのイラストはジェフ・ブリッジスがイカ墨で描いたものだそう。ふーん。
自堕落な役はジェフの得意とするところですが、今回の自堕落ぶりは芸術家ならではの奔放さも加わってかなりのもの(すぐ裸になりたがるし^^;)。
その妻マリアンを演じるのはキム・ベイシンガー。この時、もう50歳を超えていたと思われますが、夏の間だけ夫の助手になった高校生がひと目で恋に落ちたのも宜なるべしと思えるほどの美貌と脚線美を保ってらっしゃる(“ぼかし”が大きくてよく見えませんが、大胆なHシーンも披露してくれますし)♪
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家は、そこに住む人、家族を投影しているとよく言われますが、この映画を観ると、まさにそんな感じがします。
屋敷は3人家族にはあまりにも広すぎる。もちろん夫婦の部屋は別々。廊下の壁は死んだ息子たちとの思い出の写真で埋め尽くされてる。
そして、これまた広すぎる庭は荒れ放題・・・。
2人の息子の死が、この家族にもたらした喪失感、空疎感、過去への固着、夫婦の間の埋められない溝、その他諸々が象徴された家という感じ。
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それでも2人は2人なりに夫婦を、そして家族の絆を修復しようと努力はしてきたようです。息子達の死後、もうひとり子ども(ルース)を産み育てたのもその努力のひとつだったのでしょうし、この家を買ったのも新しい環境で再出発しようという意気込みがあったからでしょう。
それでも絆の修復は難しかった。
上っ面は変えてみたものの、心は以前のままだったから。
夫のテッドは創作活動を兼ねた情事に逃げていたし、妻のマリアンは過去の思い出の中に浸り込んだままだったのです。

こんな家族で一番ワリを食うのは、娘のルースなんでしょうね。
というのも、下手をするとルースは将来、自ら求めて破滅的な行動をとることになりかねないからです。
両親は死んだ兄たちの思い出の中に沈んでいて、自分の世話はほとんど子守り任せ。そんな幼少時代を過ごすと、“自分は存在してはいけない”という無意識の衝動、前回ご紹介した『ゲーム』の虜になってしまう危険性があるから。
自己否定的な構えから抜け出せないから、人生のいろんな場面で自分がいかにダメな人間かを周囲に証明してみせたくなっちゃう。親に反抗したり、友達をいじめたり、いじめられたり、終いにはリストカットしたり、本当に自殺してしまったり・・・。
そういう子にしないためにも、親は自分のことばかりにかまけていないで、しっかり真心をこめて子育てをするべきなんでしょうね、やっぱり。

夏だというのに、なんとも寒々しいロングアイランドの景色が印象に残る映画、あ、それと『誰かに見られてる』(1987)から17年、48歳にして裸体を披露してくれたM・ロジャースもある意味すごく印象に残る映画ではあります^^;。
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by kiyotayoki | 2007-02-09 18:03 | 映画(た行)