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映画の心理プロファイル

『スティル・クレイジー』(1998 英)

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原題:『STILL CRAZY』(95分)
監督:ブライアン・ギブソン
脚本:ディック・クレメント
    イアン・ラ・フレネ
音楽:クライヴ・ランガー
出演:スティーヴン・レイ
    ジミー・ネイル
    ティモシー・スポール
    ビル・ナイ
    ジュリエット・オーブリー

以前から観たいと思っていた映画。
WOWOWでやってくれたので、やっと願いが叶いました♪

20年ぶりにロックバンド再結成をめざす中年男たちの姿をコミカルに、またシニカルに描く作品です。
イギリス映画で、バンド結成ものというと『ザ・コミットメンツ』(1991)を思い出すけれど、あちらは20代の若者たち。こちらは、50代前後の中年男たち。ふつうなら哀愁と加齢臭が漂うお話になりがちなところですが、なんのなんの(そういう部分も確かにあるものの)、タイトルがタイトルだけに、中年のおじさんたち頑張ります。ロック魂炸裂します♪♪♪
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メイン・ヴォーカルのレイを演じるビル・ナイ、ホントに歌ってるんだね♪
長らくまともに歌ってなかったという設定だけに、ちょっと声がよれても迫力不足でも大丈夫ということにはなってるけれど、70年代ロックのスピリッツをちゃんと体現してくれています(画像は『アンダーワールド』からの流用ではありません。ステージ用にド派手メイクをした時のものです。念のため)。

映画はまず、1977年、伝説のウィズベック野外ロックコンサートを最後に解散してしまった人気バンドストレンジ・フルーツ(奇妙な果実)の5人の20年後の姿を描き出します。
キーボードのトニー(S・レイ)は、あら、コンドームの販売員。
ベースのレス(J・ネイル)は、あらら、屋根葺きの作業員。
ドラムのビーノ(T・スポール)は、あららら、借金抱えて母親んちで居候。
一番マシなリードヴォーカルのレイ(B・ナイ)は、立派な屋敷に住んではいるものの、ここ10年レコーディングは無しで家計は火の車(屋敷も実は売りに出している)。
そして、カリスマギタリストだったブライアン(B・ロビンソン)は行方不明で死亡説もささやかれているといった具合。
みんな20年前が人生のピークで、後は下り坂状態であった模様。

解散のきっかけは、レイが加入する前にリードヴォーカルを務めていた実力派キースの薬物中毒死(ある意味ロックンローラーの鑑?)。その時点で解散は決まったようなものだったんでしょう。後釜に入ってきたレイは歌唱力よりパフォーマンスで勝負するタイプ。キースに心酔していた他のメンバー(特に、レス)は、そんなレイが気に入らない。で、結局、ステージで罵り合って喧嘩別れ同然の解散とあいなった。
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そのしこりが残ってるから、再結成も簡単にはいかない。それからのてんやわんやは、ありがちな展開ではあるものの、それぞれのキャラが立ってるだけにダレることはありません。
一応主役と思われるスティーヴン・レイはキャラが薄い分、ワリを食ってる感じですけどね^^;。女性マネージャーとの恋もヤマアラシのジレンマ的な心理が働いて、うまくいきませんし。

ヤマアラシのジレンマというのは、ドイツの哲学者ショーペンハウアーの用いたこんな寓話。

「冬のある寒い日、2匹のヤマアラシがいました。
寒いので2匹は体を寄せ合って暖め合おうとするのだけれど、
お互いの針が当たって「イタタタ」。
だけど、離れると今度は寒くて仕方ありません。
近づくとお互いに傷つけあうし、離れると寒い。
それを繰り返すうちに、ちょうど良い距離を保つようになりましたとさ」

この寓話は、お互いに傷つかない距離を保とうとする対人関係のたえとして、しばしば引用されるもの。だけど、傷つけ合うことを恐れてばかりでは、結局、空しさがつのるだけ。
一歩踏み込む勇気あれば、あの恋だってもう少しは進展しただろうにな・・・。
そんな経験、ありますよね(あるある何度も^^;)。

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by kiyotayoki | 2007-05-20 12:03 | 映画(さ行)