映画の心理プロファイル

『グエムル 漢江の怪物』(2006 韓国)

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原題:『THE HOST』(120分)
監督・原作・脚本:ポン・ジュノ
音楽:イ・ビョンウ
出演:ソン・ガンホ
    ピョン・ヒボン
 パク・ヘイル
    ペ・ドゥナ
    ユ・アソン

本題に入る前に・・・。
昨日の昼間やっていた『クレージーの大爆発』(1969)って映画はス、スゴかったぁ。
前半は『黄金の七人』(1965)をパロッた金塊強奪作戦がくり広げられたかと思えば、後半はそれに007ばりの秘密組織が絡んできて、水爆まで出てくる。
内閣じゃ、藤田まこと扮する総理が堂々と核武装論をぶち上げる。
でもって、富士山の火口で水爆が炸裂しちゃうんだ、これが。
しかもクレージーの連中は銃で撃たれたヒロイン松岡きっこには目もくれず、宇宙船に乗り込んで地球を脱出。月で宇宙服ナシで自慢の歌を披露しちゃうという脳天気ぶり。
こんな珍品をよくぞ終戦記念日にやってくれたな、と感心(NHK BS2)。

今日も昼間(1時)『クレージー黄金作戦』(1967)というのをやるらしいデス。
これが東宝創立35周年記念映画で、日本初のアメリカロケ(ラスベガス)作品なんだって。
とすると、今回は『オーシャンと11人の仲間』をパロっちゃうのかしらん。
出演陣も豪華だし、コワイもの見たさで観ちゃおっかなぁ(^~^;。


さてさて、こちらは異色の韓国製モンスター・パニック・ムーヴィー。
この映画の主眼は、怪物をいかにして倒すかということより、怪物からいかにして娘を救い出すか。
監督が「殺人の追憶」の人だから、ただの怪獣モノではないんだろうとは思っていましたが、失いかけた家族の絆を取り戻そうとするある家族の死にものぐるいの闘いをユーモラスかつ凄絶に描いた作品に仕上がっておりました。

ソウルの中心を東西に貫く漢江。これが東京の荒川よりもっと川幅がありそうな大河。
灰白色に濁っていて、水質はお世辞にも良いとは思えない。

そんな漢江でなぜ怪物が誕生したのか。
それにはどうも在韓米軍が絡んでいるような・・・。
威圧的な米国人の科学者に命じられて、大量のホルムアルデヒドを渋々下水に流す下っ端の韓国人研究員。その下水の先にあるのは漢江・・・。
つまり、心ない人間による水質汚染が怪物を誕生させたってことなんでしょうね。
この辺りの展開はゴジラ誕生の経緯と似ていなくもない。だけど、原水爆実験みたいな強烈なものじゃない分、誕生した怪物も小粒になっちゃったかな(^^;。

この映画全体の底流に流れているのが在韓米軍に対する抑えた、でも強い嫌悪感。
韓国庶民にとって、戦後ずっと郷土に居座っている米軍は悪の枢軸国から自分たちを守ってくれるありがたい存在というより、同胞である北朝鮮との融和を阻むおじゃま虫的存在なのかも・・・。
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全長15mぐらいあるのかな。魚かハ虫類が巨大化したみたいなヌルヌメ系の怪物が現れたのは、休日の昼下がり。
突然の出来事に泡を食って逃げまどう人々。その中に、怪物にさらわれることになる中学生の少女ヒョンソと、その父カンドゥもいた。
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このカンドウを演じているソン・ガンホという役者さん、韓国映画ではお馴染みの人だけど、いいキャラをしてますね。いかにもモンゴロイドって顔で目鼻立ちは地味なんだけど、一度見たら忘れられなくなる演技力と存在感の持ち主。
この作品でも、頭の回転は鈍いし甲斐性もないくせに食い意地だけは張っている自堕落男を飄々と、そして熱く演じてる。

そんなカンドゥが愛して止まないのが一人娘のヒョンソ。
女房にも愛想を尽かされた不甲斐ない自分だけれど、娘を想う気持ちだけは誰にも負けない。そう思っていたカンドゥだったのに、突然の怪物出現に慌てふためいた彼は間違って違う少女の手を引いて逃げてしまう。
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そのせいで、ヒョンソは怪物の餌食に。
怪物は、どうやら人間が好物らしいのです。
娘が捕食されるシーンを目撃したカンドゥは茫然自失。
ただただ涙にくれるだけ。

ところがどっこい、ヒョンソは生きていた。
この怪物、喰うことにどん欲で、呑み込めるだけ呑み込んでしまう。
で、消化しきれないやつは吐き出して、保存食として巣に貯めておくという習性があるらしいのだ。ヒョンソは保存食として生きながらえていたわけ。
ヒョンソは電池切れ寸前の携帯電話でカンドゥに一度だけ生存のメッセージを送ることに成功する。

さぁそれからは、娘の生存を信じたカンドゥと家族の奮闘が始まるんだけど、とにかく孤立無援なんです。突然の怪物出現でソウル市内は戒厳令でも敷かれたような状態。しかも、怪物が危険なウィルスをまき散らしているという情報が流れて、米軍の細菌部隊も出動してくる。怪物に接触したカンドゥたちは軟禁状態に。
それでも家族はひるまない。愛する娘を助けるために、どんな苦労もいとわない。
怪物に立ち向かう武器はというと、ライフルと洋弓と火炎瓶のみ。
それで堂々と怪物に立ち向かってく。
このあたりの展開は、クレージー映画も真っ青。

そうそう、火炎瓶を使うのはカンドゥの弟なんだけど、大学時代に多くの政治デモに参加して火炎瓶作りには精通しているという設定。
このあたりにお国柄の違いがよく表れていますね。
日本じゃ、政治デモに火炎瓶というと、もう団塊の世代あたりしか経験のない、遠い過去のお話だもの。今の日本人には良くも悪くもそんなエネルギーはない。
そこへいくと韓国は元気です。
だって今もまだ火炎瓶世代がバリバリの現役なんだもの。
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by kiyotayoki | 2007-08-16 09:32 | 映画(か行)