映画の心理プロファイル

『ホテル・ルワンダ』(2004 英・伊・南ア)

a0037414_2128122.jpg
原題:『HOTEL RWANDA』(122分)
監督:テリー・ジョージ
脚本:テリー・ジョージ
    ケア・ピアソン
音楽:ルパート・グレグソン=ウィリアムズ
    アンドレア・グレア
出演:ドン・チードル
    ソフィー・オコネドー
    ニック・ノルティ
ホアキン・フェニックス
ジャン・レノ

気が重くて、なかなか観ようとしなかった映画。お盆休みを利用して、やっと重い腰をあげてみました。

恥ずかしながら、この映画を観るまでルワンダという国がアフリカのどこにあるのか知りませんでした。それに、ここで起きた悲惨な出来事も記憶の端っこにうっすらあるだけで、ほとんど関知してなかった。お恥ずかしいかぎりです。

アフリカ大陸には53もの国があるというのに、いくらか知ってるのは北の端と南の端あたりだけで、中央部となるとまったくの知識の空白地帯(^^;。
a0037414_10512350.jpg
この映画の舞台、ルワンダもその空白地帯にある国。
「どこにあるか指さしてごらん」って言われても、地球儀を前にして照れ笑いするしかない(^^;。

ああ、こんなところにあるんだ。
国名には「千の丘の国」という意味があるんだそうな。

そんな国で1994年に起きたのが、世にもおぞましきジェノサイド(民族殲滅)。そこで実際に起きた衝撃と感動のエピソードを、事件から10年後に映画化したのがこの『ホテル・ルワンダ』。
こういうドラマを作るには、やはり10年という癒しと検証の時間が必要だったのか・・・
この前後に、『ルワンダ 流血の4月』(2005)、『ルワンダの涙』(2005)と、同じ題材を扱った映画が3本も公開されてる。

フツ族によるツチ族大量虐殺が始まったのは、1994年4月6日。
その日から約100日の間に80万から100万の人が惨殺されたというんだから怖ろしい。

この国は、1962年に独立するまでは、欧州の小国ベルギーに統治されていたそうな。
映画の中でも語られることだけど、民族紛争の火種を作ったのはその宗主国だったようだ。
支配階級のベルギー人が統治しやすいように現地人を2つの部族に分けたというのだ。
その分け方がなんとも呆れる。
長身で鼻幅の広くない、つまり自分たちと似た外見を持つ人々をツチ族、それに当てはまらない連中をフツ族に分けたというのだ。しかも少数派のツチ族を多数派のフツ族より上位とした。
平等だった社会に階級制度を持ち込んだわけです。

独立後に国を統治したのは少数派のツチ族。
多数派のフツ族としてはそりゃあ面白くない。嫉妬と怨念が膨れ上がって、1977年フツ族が政権を奪取。その後、案の定フツ族によるツチ族の大弾圧が始まる。

それに反発したツチ族は1990年にルワンダ愛国戦線を組織、内戦がいよいよ本格化。
1993年、一旦、和平合意。が、翌1994年、フツ族の大統領の乗った飛行機が何者かに撃墜され、それがきっかけとなってフツ族によるジェノサイドが始まるのです。

フツ族が目指すのは民族浄化(エスニック・クレンジング)。
ツチ族を根絶やしにして、ルワンダをフツ族だけの国にしようというもの。
そのためには子供だって容赦しない。というより、子孫を増やす可能性のある子供こそ殲滅の対象と目の敵にしたらしい。
フツ族はツチ族を「ゴキブリ」と呼ぶ。殺し方もボクたちがゴキブリにするように容赦がない。その姿を見ただけで嫌悪感をむき出しにして殺虫剤ならぬ機関銃を連射しまくり、鉈(マチェーテ)を脳天に振り下ろすのです。
・・・なんて軽く書いてしまいましたが、考えたらこれは怖ろしいこと。
ゴキブリを平気で殺せるということは、相手をゴキブリ視することさえできれば(理屈をつけて自分に言い訳さえできれば)ボクたちだってジェノサイドの加担者になる可能性があるってことなのですから。
しかも、集団心理が追い打ちをかける。その上、ラジオからはまるで洗脳でもするかのように「殺せ、殺せ」のメッセージが四六時中流れてくる。
自分が当事者だったら・・・と考えると背筋に冷たいものが走ります。
a0037414_11443774.jpg
ドン・チードル扮するフツ族の主人公が加担者にならずにすんだのは、彼が良識の持ち主だったということもあるんでしようが、やはり妻がツチ族で、子供たちは両方の血を受け継いでいるということが大きかったんでしょう。

近所で虐殺が始まり、家族に危害が加わるのを恐れたポールは、自分が副マネージャーをしている高級ホテル「ミル・コリン」に家族や親族、そして近所の知人をホテルにかくまうことにします。
「ミル・コリン」は、元の宗主国ベルギーの資本が入ったホテルで白人客も多いので、政府軍や民兵たちもおいそれとは手が出せなかったのです。

でも、それもいっときのこと。
日に日に、「フツ族をホテルから出せ」という圧力が強くなってくる。実力行使にも出てくる。それをなんとか機転と人脈、そして、国連平和維持軍の力を借りてかわし続けるポール。
その間にもあちこちから救いを求めてフツ族の人々がホテルに転がり込んでくるので、避難民の数は1000人を超えてしまう(最終的には1268人)。
a0037414_12483940.jpg
曲がりなりにも武器を持ってホテルを守っているのは、国連平和維持軍の4人の兵士だけ。でも、彼らは平和を維持するためにいるので、平和を乱す発砲は禁じられている。PKOでイラクに派遣されている自衛隊みたいな存在なのです。荒れ狂う民兵たちを押しとどめる力はない。

この蛮行に、アメリカをはじめとする国際社会はどうしていたかというと、なんと不介入を決め込んでいた。
ルワンダが石油も金も出ない最貧国で、介入しても益がかなったことが第一の理由。
その上、アメリカは前年のソマリアでの軍事介入失敗で、余計に及び腰になっていたようです(『ブラックホーク・ダウン(2001)』はそれを描いた映画でした)。

「(欧米諸国にとって)キミらはニガーですらない。アフリカンだ」
頼みの綱の駐留軍が撤退することを告げにきた
平和維持軍の大佐(N・ノルティ)の言葉が胸に突き刺さりました。

じゃあ、ボクら日本人はどうしていたのか。
情けないけど、たった13年前のことがよく思い出せない。
で、調べてみたら、大虐殺が始まった4月6日の2日後に細川首相が辞意を表明してる。あとを継いだ羽田内閣も2ヶ月でつぶれ、7月には眉毛のじいちゃん村山内閣が誕生・・・・と、関心はもっぱら国内に向かっていた模様(^~^;。
はるか遠くの、アフリカのどこにあるかも知らないような国で起きていることなど、たとえニュースで聞いても右から左へ聞き流していたと思われます。
まったく情けない。






昨夜、TVでやっていた『ER』をみていて、またまた情けない思いを登場人物同様に噛みしめてしまいました。
a0037414_192034.jpg
『逃げ場なし』と題されたこの日のエピソードの後半は、レジデントのプラットがコバッチュの代役で、スーダンのダルフールに着任するところが描かれていましたが、このダルフールがなんと現在進行形で現実にジェノサイドがくり広げられている地域だったのです。
a0037414_19314499.jpg
これまでも『ER』では、カーターやコバッチュを通してアフリカの難民キャンプでの想像を絶する医療事情を描いていたけれど、実はいまひとつピンときていなかった。
なにしろトータルで264回もやってる長寿番組なので、マンネリ対策の、お話を盛り上げるためのひとつのエピソードだろうと軽く考えていたんですね。

だけど、今回はルワンダを調べるついでにダルフールもチェックしていたので、「うわっ、出たぁ」と驚いてしまったのです。
まさかカーターのいた流民キャンプが、終わりの見えないジェノサイドがくり広げられているダルフールだったとは・・・。

なので、ダルフールの悲惨な状況を、着任したプラットと同じ気持ちで見ることになったというわけです。さて来週、プラットはどんな現実に直面することになるのか・・・
ううむ。
[PR]
by kiyotayoki | 2007-08-21 20:43 | 映画(は行)