「ほっ」と。キャンペーン

映画の心理プロファイル

『破獄』(1985 緒形拳主演)


a0037414_1030469.jpg

NHK・BS2で、緒形拳さんが主演した『破獄』(85年放送)を観た。
戦前から戦後にかけ無期懲役で服役し、4度も監獄から脱走した実在の囚人の半生を描いたTVドラマ。

共演が、親友として緒形さんの最後を看取った津川雅彦さんということもあって、1時間半、画面に惹きつけられてしまった。
TVという制約の中、1時間半という枠内で主人公の半生を描くわけで、もちろん映画のような濃密さは望むべくもないけれど、一方で、脱獄への執念にポイントが集約されている分、見応えは十分ある作品に仕上がっていた。

脱獄をテーマにした映画は、ジャンルとして成立するくらい沢山あるし、名作も多い。
だけど、考えてみるとそれは洋画ばかりで、邦画では思いつかない。
それはやっぱり日本人の従順で淡泊な国民性のせいかもなァ・・・と漠然と思っていた。
何が何でも脱獄するという執念というか執着心が、日本人には欠けているような気がしたからだ。

ところがなんの、こんなにも脱獄に執着する男が日本にもいたんだね。
主人公・佐久間清太郎が実行した脱獄は計4回。
昭和11年青森刑務所脱獄。昭和17年秋田刑務所脱獄。
昭和19年網走刑務所脱獄。昭和23年札幌刑務所脱獄。
戦前、戦中、戦後に渡って計4回も成功してる!

津川雅彦演じる看守・鈴江圭三郎との出会いは、最初に入所した青森刑務所から始まる。
佐久間は、入所したその日から問題を起こし、看守の鈴江とぶつかる。
そして、その日から佐久間と鈴江の長い戦いの日々か始まるのだけれど・・・。


「禁止ほど好奇心をひきおすものはない。
 これはいわばことさら違背(命令や約束事にそむくこと)を挑発する
 最も確かな方法である」

これは、C・G・ユングの言葉。
人間の心の奥底には『トリックスター』という天の邪鬼が潜んでいて、
「見ちゃダメ、しちゃダメ、触っちゃダメ」と禁止されればされるほど、反発心と好奇心がむくむくと頭をもたげてくる。
この佐久間という男は、刑務所に監禁され自由を奪われることによって、自分の中の『トリックスター』が全開になっちゃったのかもしれないね。
脱獄によってその欲求が満たされると安心するので、無防備になって案外簡単に捕まってしまう。
で、また脱獄を繰り返すことになっちゃう。

それにしても驚いたのは、緒形拳さんの肉体だ。
1985年の作品だから、緒形さんは47、8歳の頃だ。
50間近といえば、体に贅肉がついていて当たり前。
なのに、緒形さんの肉体には無駄な肉のかけらもついていないように見えるのだ。
昭和10年代といえば、不況続きでかなりの国民が飢えていた時代。
東北の寒村で生まれ育った主人公に贅肉がついていては困るんだけど、
緒形さんに限ってはその心配はまるでなし。
体質的にあまり太らない方なのかもしれないけれど、たとえTVでもコンディション作りに手を抜かない、
そのプロ魂にまたまた感服してしまったのでした。


a0037414_15145531.jpg


原作は、吉村昭さんの同名小説。
これ、読んでみたいなぁ。
[PR]
by kiyotayoki | 2008-10-12 15:15 | TV