『ワンダーボーイズ』(2000 米)
原題:『WONDER BOYS』(111分)
監督:カーティス・ハンソン
原作:マイケル・シェイボン
脚本:スティーヴン・クローヴス
音楽:クリストファー・ヤング
出演:マイケル・ダグラス
トビー・マグワイア
ロバート・ダウニー・Jr
フランシス・マクドーマンド
観たばかりの映画、『トロピック・サンダー/史上最低の作戦』
は、おまけ付きのお菓子みたいな映画で、
意外なところで実名の俳優がカメオ出演したり、特殊メイクで扮装した大物俳優が出てきたりして楽しませてくれたけど、そのひとりがトビー・マグワイアだった。
出てくるのは、高名な神父と禁断の関係にあるゲイの修道士を描いた映画の予告編。
それは、ロバート・ダウニー・Jr扮するオスカー俳優ラザラスの主演作なんだけど、高名な神父役の彼とこっそり手をつなぎ、何食わぬ顔で並んで祈りを捧げているのがトビーなのです。
その2人が、この『ワンダーボーイズ』でも同じようにちょっと妖しい関係になる役で共演していることは、ダウニー・JrファンのRuijiさんがご自身のブログに書いていらっしゃった(^^。
それを先月、NHK-BS2でやってくれたので、僕も予習ができたのでした。
映画の主人公は、かつては天才作家(ワンダーボーイ)と騒がれたものの、出版された本は1冊のみで、その後は7年もの間、終わりの見えない大長編小説を延々と書き続けている大学教授のグラディ(M・ダグラス)。
この《一発当てた後はずっとスランプ状態の作家》というキャラクター設定は、映画の中にはホントによく出てきます。
『D.O.A』でデニス・クエイドがやった役はまさにそんなキャラだったし、生活の糧として大学教授をやっているのも同じ。
『主人公は僕だった』のエマ・トンプソンも長らくスランプ状態みたいだったし、
『小説家を見つけたら』のショーン・コネリーも新作が書けなくて隠遁生活を送ってた。
きっと実際に、そういう作家が山ほどいるのだろう。
こちらの写真(→)がグラディのプライベートライフ。
手元にあるのはパソコンではなく、長年使い込んだタイプライター。
彼が羽織っているのは、出ていった妻のバスローブ。
この姿が彼の今を雄弁に物語っている。
過去に執着し、過去を捨てられずに生きている男なのです。
そういえばこの映画には、過去への執着を象徴するようなアイテムがいくつも出てくる。
そのひとつが、マリリン・モンローがジョー・ディマジオと結婚した時、一度だけ袖を通したというジャケット(写真)。
グラディが勤める大学の学長自慢のコレクションなんだけれど、これをグラディの教え子ジェームズ(T・マグワイア)が気まぐれを起こして盗んだことから、物語が動き始める。
このジェームズが、ありがちな話じゃあるけど天才的な素質を持った作家のタマゴ、つまりワンダーボーイであることがわかって、グラディ担当の編集者テリー(ダウニー・Jr)が色めきだち、
ちょっと妖しい関係になっちゃうんですが、それは置いといて・・・。
お話は、過去への執着・愛着を象徴するものを登場人物たちが捨てて、前向きな人生を手に入れることができるかというところが焦点となって進んでいくことになります。
派手な展開はないものの、登場人物たちの謎の行動の理由がだんだんわかってくるサスペンスタッチの構成や、フランシス・マクドーマンド、リップ・トーンといった脇を固める顔ぶれも魅力的で(ケイティ・ホームズはあまり魅力的じゃなかったけれど^^;)、十分楽しめる一編に仕上がってた。
監督は『L.A.コンフィデンシャル』のカーティス・ハンソンで、脚本が『ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』のスティーヴン・クローヴスだから、楽しめたのは当然かもしれないけどね。
【印象に残ったセリフ】
「(マリリンのジャケットを巡り巡って恋人からプレゼントされた女性に)
そのジャケットはマリリン・モンローが着ていたんだ。
彼女は肩幅が狭かった。君のようにね。
意外だがね」
抱きしめると、壊れてしまいそうな華奢な肩の持ち主・・・
マリリン・モンローが今も多くの人、特に男性に愛されるのは、このせいもあるんだろうな(^~^