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映画の心理プロファイル

『ホルテンさんのはじめての冒険』(2007 ノルウェー)

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原題:『O' HORTEN』(90分)
監督・脚本:ベント・ハーメル
音楽:
出演:ボード・オーヴェ
    ギタ・ナービュ
    ビョルン・フローバルグ
    モリー

不思議な味わいの映画を、試写会で観た。
『ホルテンさんのはじめての冒険』という可愛らしいタイトルのついた
ノルウェーの映画である。
ノルウェー映画といって思い出すのは人形アニメの
『ピンチクリフ・グランプリ』(1975)ぐらい。まったくの未知の国だ。
恥ずかしながら王国だってことも知らなかった。
でも、知らないってことは、興味がわくということでもある。
さて、未知の国の人はどんな映画を作るのか、興味津々でスクリーンに見入った90分だった。

主人公は、ノルウェー鉄道の機関士として40年間、真面目に勤め上げ、数日後に定年を迎えるオッド・ホルテンさん。
驚いたのは、その年齢。67歳だって!かの国では67まで現役で働けるんだね。
でも考えたら、長寿・少子化の時代、60代はお爺ちゃんお婆ちゃんとは呼べない位まだ若いし。
あちらのシステムのほうが理にかなっているんじゃないかしらん。

謹厳実直を絵に描いたようなホルテンさん。常時パイプを薫らし、煙を出して歩くので、旧式の蒸気機関車みたいにも見える人。長身で肩幅もあり、ものに動じない風格もある。
だけど見ていくうちに、この人かなりの不思議ちゃんで、しかも小心者でもあることが判明する。

まず、厄介なことが起きると、その場から逃げ出す癖があるのです。
定年退職を迎えた朝、ひょんなことから人生初の遅刻をし、運転するはずの列車に乗れなかったときがそう。
駅にかけつけたホルテンさん、ホームに同僚の姿を見つけた途端、スタコラと逃げ出したのだ。
しかも、そのあとは家に引きこもって、鉄道会社からの電話にも一切出ない。
あららら、ホルテンさん、こんな人だったの・・・。さすが未知の国の映画は人物設定もユニークだ。

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どうやらホルテンさん、人間関係を築くのが苦手な人のようなのだ。
とにかく口が重い。この歳で独身だし、家で飼っている生き物といえば小鳥だけ。
趣味のパイブだって、口にくわえていればしゃべらなくてすむ口実になるからかも。
ヨットという意外な趣味もあるけれど、それもよく考えれば海でならひとりになれるからなのかもね。
ホルテンさんがいくらか積極的に喋るのは、定宿としているホテルの女主人と、痴呆症の母親と相対しているときだけ。

だけど、決して人間嫌いじゃないんだな。自分の関心のあることや人となら、わりと積極的に交流を持つ。
しかも、妙に行動力もあって、自分の目的を達成するためなら入っちゃいけないところ(空港の滑走路や深夜のプールや他人の家)にも平気で入り込む。
そのせいで、空港じゃ警備員に捕まっちゃうし、プールじゃ靴をなくしたために女性物のハイヒールを履くはめになっちゃうし、他人の家からはなかなか出られなくて初遅刻の原因になっちゃう。
このあたりのエピソードは、Mr.ビーンの20年後を見ているような心持ちでありました。
そう、この映画、ユーモアがあちころちにちりばめられたコメディなのです。

なのに、劇場内の笑い声が控えめなのは、そのユーモアが押しつけがましくないせいなのかも。
これ見よがしに「ここ、笑いどころですよっ」と押しつけてこないのだ。このあたりの慎み深さも国民性なのかな。

見たところ、こんなホルテンさんが40年もの間、謹厳実直に大過なく仕事をまっとうできたのは、ひたすらレールの上を走るだけという職業のおかげだったのかもしれない。
けど、その仕事はなくなった。ということは、これからはレールから外れた生活をするということ。
ホルテンさんの人生が脱輪していくのは必然だったのかも。

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さて、そんなホルテンさんの唯一の心残りは、冒険心を封印してきたこと。
ホルテンさんの母親は冒険心あふれる人で、若い頃は女性スキージャンパーの草分け的存在として名を馳せた人だったようだ。
なのに恐がりなホルテンさんは、スキージャンプとは無縁の生活を送ってきた。
そんな自分が情けないホルテンさんだったのだけれど、ある人の一言がホルテンさんに一歩踏み出す勇気を与えることになります。

その言葉とは・・・

「人生は手遅ればかりだが、逆に考えれば何でも間に合うということだ」


この言葉に力を得、あることを実践するためにホルテンさんがとった行動は・・・・
いやあ、ちょっと「オヨヨ」な驚きがありました(^^ゞ。
どんな風に「オヨヨ」なのかは、ぜひご自分の目で。


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ちなみに、映画のポスターでホルテンさんが抱きかかえている犬の名前はモリー。
エンドロールを見たら、本名もモリーでした(^~^ゞ
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by kiyotayoki | 2009-01-30 19:42 | 映画(は行)