人気ブログランキング | 話題のタグを見る

映画の心理プロファイル

『死ぬまでにしたい10のこと』(2003 加・西)

『死ぬまでにしたい10のこと』(2003 加・西)_a0037414_21103970.jpg
原題:『MY LIFE WITHOUT ME』(106分)
監督・脚本:イザベル・コイシェ
出演:サラ・ポーリー
    スコット・スピードマン
    マーク・ラファロ


わずか23歳で余命2ヶ月と宣告されたアンの物語。
アンは幼い二人の娘や夫に病状を打ち明けることなく、
残された時間で本当にしたいことをノートに書き連ね、
そのささやかな願いをひとつひとつ実現していく中で、
迫り来る死と折り合いをつけながら、限りある命の火を懸命に燃やし続けていきます。

個人的にかなり辛い内容で、何度もビデオを止めてしまいましたが、アンと担当医との心のふれあいには救われた思いがしました。
担当医がアンに余命2ヶ月であることを告げるシーンでは、担当医はアンと面と向かわず、
横の椅子に彼女と並んで腰をかけます。
「面と向かう勇気がないから」というのがその理由でしたが、心理学的に見るとそれが医者の最大限の心遣いであったことがわかります。
パーソナル・スペースという心理用語があります。「個人空間」ともいい、他人に入り込まれたくない範囲の空間をいいます。別に空間に印がついているわけではありませんが、
その空間に他人が侵入すると「イヤな気」がしたり「居心地が悪く」なるのですぐわかります。
横に座るということはパーソナル・スペースに侵入するということ。
それを苦に感じないということは互いに心を許しあっているという証し。
ゆえに横の位置を「恋人のポジション」と呼ぶ人もいます。
医者は彼女の横に並んで座ることで、自分が心を許せる人間であることを無言のうちに彼女に知らせたのです。
また、横に座ると、相手の視線を気にしないですみます。互いに相手を気にせず本音を語りやすくなります。
口べたな人でもドライブ中は会話が案外はずむのはそのせいでもあります。
残酷な告知をすることに変わりはありませんが、そんな医者の心遣いが感じ取れたからこそ、
彼女もその医者にだけは夫にも話せないホンネを打ち明けることができたのでしょう。
by kiyotayoki | 2004-08-03 16:37 | 映画(さ行)