映画の心理プロファイル

『視界良好』 河野泰弘・著

以前、ダイアログ・イン・ザ・ダークで、暗闇体験をしたとき、
暗闇の中で通先案内をしてくれたのはアテンダントと呼ばれる視覚障害者の方だった。
彼らは闇の中を自由に歩き回り、闇の世界に不案内な僕たち参加者を先導してくれるだけでなく、闇を楽しめるように様々な配慮をしてくれた。

そんな貴重な体験をしたあと、この本のことを知った。
生まれつき全盲の人が書いた本だ。
タイトルは、なんと『視界良好』
早く読みたいと思っていたのに、なんだかんだで遅くなり、今頃になってやっと読んだ。

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「手で触れ、手で聞き、香りをかぐ。
それは私にとって『ものを見ている』こと。
そして、世界を見るとは・・・・・・
全身で感じ、味わうことなのだ。 河野泰弘」

本の帯には、こう金釘流の文字で書き連ねられている。
これが生まれつき全盲である筆者の手書きの文字だと知ってまず驚いた。
筆者の河野泰弘さんは、20代後半の若者だ。
一人暮らしをしながら、盲ろう者向けの通訳や介助者として健常者と変わらない社会生活を送ってらっしゃるという。

だけど、五感のうち視覚を除いた四感で暮らす著者の生活は、本当に僕たちと変わらないんだろうか。違いがあるとしたら、どんなことなんだろう。
そんな聞きたくてもちょっと聞けないような疑問に、ユーモアを交えながら丁寧に答えてくれている本だった。

なるほどなと思ったのは、視覚障害者の世界でもIT化が進んでいること。
メールのやりとりに便利なのが、文章を音声で知らせてくれるスクリーンリーダー。
それとは別に、ピンディスプレイという機械もあるらしい。こちらは、文章が点字で表示できるんだそうな。
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ピンディスプレイがどんなものか、画像を探してみた。
黒い帯状のディスプレイにある小さなピンが飛び出すことで点字ができる仕組みなんだね。
便利で簡単なのは音声。だけど、点字だと一字一字内容をかみしめて読めるので、差出人の気持ちまでが伝わってくるのだそう。

全編を通して感じたのは、著者が自分の生活を心から楽しんでいる様子がうかがえること。
「見えない」ことよりも「見ている」ことをより前向きにとらえていらっしゃるのだ。
豊かな感性があればこそだと思う。

また、驚いたことに、全盲の彼が毎晩夢を見るのだという。
家族や友人がよく夢に出てくるのだそうだ。家や学校などの見知った場所が出てくることも多いという。
けれど、それはイメージ映像として出てくるわけではない。
光や音や匂い、手触りで夢を認識しているのだという(ここんとこを理解するのはちょっと難しい)。
夢の中で、周囲の人の話し声を聞いて誰が傍にいるか理解するのだという。
つまり、夢の中でも目は見えていないということか。

たとえば、こんな夢を見たのだそうだ。

「実家の居間にいる。テレビがついており、ドラマをやっている。
突然テレビの声がすぐ傍で聞こえているのに気づいた。
テレビに出ている俳優さんの声が真横でするのだ。
いつの間にかドラマの舞台に入っているようだ・・・・」


視覚障害者の皆さんの内的世界をもっともっと知りたくなってきた♪





たまたまだけど、「みのもんたのサタデーずばッと」という番組で、
盲ろう者の生活の実態を知らせる特集をやっていた。

それによると、目に障害をもつ視覚障害者が全国に約31.5万人、
目だけでなく耳にも障害を持つ「盲ろう者」が約2.3万いるのだとか。

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その特集を見ていて、この本の著者がやっているのは、そんな人たちに点字の読み方や書き方、「指点字」による会話の仕方などを指導する仕事なんだということがやっと理解できた。
無知なもので知らなかったのだけど、「指点字」というのはピンの代わりに5本の指の背中の関節部分を触れることで文字とその意味を盲ろう者に知らせる技法らしい。
指導者が盲ろう者の指の背に手を乗せて、まるでピアノを弾くように文字を伝えているシーンがとても印象に残った。

盲ろう者への国による本格的な支援は、やっと始まったばかりだという。
これにどう取り組むかも、新政権の課題のようだ。
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by kiyotayoki | 2009-09-11 17:46 | 閑話休題