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映画の心理プロファイル

『落下の王国』(2006 印・英・米)

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原題:『THE FALL』(118分)
監督:ターセム
脚本:ダン・ギルロイ
    エコ・ソウルタナキス
    ターセム
衣装デザイン:石岡瑛子
音楽:クリシュナ・レヴィ
出演:リー・ペイス
    カンティカ・ウンタルー   
    ジャスティン・ワデル

先日、“昨年見逃して残念に思っていた映画”として『イースタンプロミス』をご紹介しましたが、この映画もまさにその1本。
予告編を見たとき、これは絶対観なくてはと思っていたのになぁ・・・・。

見始めて、やっぱり映画館の大きなスクリーンで観るべきだったなぁ、と余計に後悔しちゃった。
とにかく映像の素晴らしさがハンパじゃない。
まあ、ロケーションの地が24カ国以上で、その中には13の世界遺産が含まれてる。
単にカメラに収めるだけでも絵になるのに、それに4年の期間を費やし、
芸術家や工芸家が巧みの技を披露するかのようにカットのひとつひとつが丹精され磨き込まれているのです。

そのどれもが現実にこの地球上にあるものなのに、
圧倒的に透明感があるためかそのどれもが現実離れしているというか、桃源郷のように見えてしまうこの不思議。
(CGはまったく使われていないんだそうな)

なぜそこまで映像が極められているのかといえば、それらの映像が主人公の少女の空想の世界だからということが見ているうちにわかってきます。
それくらい幼い子供の空想力・想像力はに限りがないっていうことか・・・。
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少女の名はアレクサンドリア。
移民の親を手伝ってオレンジを収穫中に木から落ち、左腕を骨折して病院に入院中の5歳の少女だ。
幼児体型のおデブさんなんだけど、この子が見てるうちにどんどん可愛くなっていくんだなぁ。
骨折だけで他は健康体のアレクサンドリアにとって、病院内は遊園地のようなもの。日々探検に余念がない。
そんな中出会ったのが、撮影中に両脚を骨折する重症を負い、しかも恋人を主演俳優に奪われてしまったため自暴自棄になっているスタントマンの青年ロイ。
ロイは、動けない自分に代わって自殺するための薬を少女に盗ませようと思い付き、アレクサンドリアに作り話を聞かせ始めます。
それは、愛する者や誇りを失い、深い闇に落ちていた6人の勇者達が、力を合わせ悪に立ち向かう愛と復讐の物語。
が、しかし、少女を操るためのたわいない寓話は、いつしか少女に希望を与え、やがて自分自身をも救う壮大な物語へと化学変化してく・・・というもの。

映像重視の映画かと思っていたら、お話も映像に劣らない内容なのです。
というわけで、物語は現実の世界(ロイとアレクサンドリアがいる1915年のL.A.の病院)と、ロイが語るおとぎ話の世界の2つのパートに分かれます。
思わずニンマリしちゃうのは、おとぎ話の世界の登場人物がアレクサンドリアが病院で関わっている人たちと重なっている点。
『オズの魔法使い』(1938)もそうだったし、毎晩見る夢の世界にも通じることだけど、
現実世界の人たちが、それぞれに役柄を与えられておとぎ話に登場するのです。
これはもちろん、おとぎ話の映像がアレクサンドリアが思い描く空想の物語だから。
だから、おとぎ話の中に出てくる美しいお姫様になるのは、彼女が病院で一番大好きな看護士のお姉さんなのです。
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お話の脚本を書いているのはロイだけど、演出やキャスティング、撮影をしているのはアレクサンドリア。
つまり、このお話は2人の合作なんですね。

万華鏡のように魅惑的な映像と思わず感動してしまうストーリーの素敵なコラージュ。
未見の方には、お薦めしたい1本です。

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by kiyotayoki | 2009-09-19 11:26 | 映画(ら行)