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映画の心理プロファイル

『メルシィ!人生』(2000 仏)

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原題:『LE PLACARD』(84分)
監督・脚本:フランシス・ヴェベール
出演:ダニエル・オートゥイユ
    ジェラール・ドパルデュー
    ティエリー・レルミット 

フランス映画にも「飛び降り自殺を止めるシーン」がありました。
これは知り合いの放送作家に勧められて見た作品。自分ではなかなか手を
出しそうにない作品ですから、教えてもらわなければきっと出会うことはなか
ったでしょう。ありがたや。

主人公は、コンドーム会社に勤めるまじめなだけが取り柄の冴えない中年男
フランソワ・ピニョン氏(D・オートゥイユ)。
そんな夫に嫌気がさしたのか、妻は子どもを連れて家を出ていき、おまけに
追い打ちをかけるように20年勤めた会社からは解雇を予告されてしまいます。
そんな目にあえば誰だって人生に絶望します。
案の定、ピニョン氏は茫然自失、ふらふらとベランダへ。
アパートの高層階に住むピニョン氏。飛び降りれば確実に死ねそう。
そう思って身を乗り出した時です。
「下にある車、あれは私のなんだがね」
と、声がしたのです。
眼下を覗くと確かに車が停まっています。思わず身を引くピニョン氏。
声の主は隣に住む初老の男性でした。
「何か悩みがあるなら聞こうじゃないか。どうだい、うちに遊びに来ないかい」
ベランダ越しにそう言う初老男の優しい眼差しに、ピニョン氏は自殺を思いとど
まり、彼に悩みを打ち明けることに・・・。

その後、隣に住む初老男は元産業カウンセラーであったことがわかります。
どうりで物腰が柔らかいはず。

飛び降り自殺をしようとする人の心理を覗いてみると、
「誰に迷惑をかけるわけじゃなし、自分で自分の始末をつけてどこが悪い」と
いう思い込み(スキーマ)が心に出来上がっています。
そんな時、下に車があって、飛び降りれば車の持ち主(他人)に迷惑がかかる
ことに気づかされると、そのスキーマが壊れ、罪悪感が生まれます。
と、途端に飛び降りようという意欲に急ブレーキがかかっちゃう。
この映画のような発作的な飛び降り自殺を止めるにはそれで十分なのかも。

ピニョン氏から事情を聞いた初老男は、「クビにならない、いい方法があるよ」
と、ある策略を伝授してくれるんですが、さてそれは・・・・。

それにしてもG・ドパルデュー(55歳)、どんな役でもこなす人ですね。
by kiyotayoki | 2004-09-07 21:30 | 映画(ま行)