映画の心理プロファイル

カテゴリ:映画(か行)( 116 )

『コールドマウンテン』(2003 米)

a0037414_8411243.jpg  
原題:『COLD MOUNTAIN』(155分)
監督・脚本:アンソニー・ミンゲラ
原作:チャールズ・フレイジャー
出演:ジュード・ロウ
    ニコール・キッドマン
    レニー・ゼルウィガー
キャシー・ベイカー
    ナタリー・ポートマン
ドナルド・サザーランド

究極の遠距離恋愛ドラマとでも銘打ちたくなるような作品。
南北戦争を背景に、一途に純粋な愛を貫こうとする男女の姿を雄大なスケー
ルで描いたラブストーリーです。

南北戦争末期の1864年、インマン(J・ロウ)はヴァージニア州ピーターズ
バーグの戦場で、エイダ(N・キッドマン)はノースカロライナ州の西、アパラチ
ア山脈の麓にある寒村コールドマウンテンで、互いの消息がわからないまま、
相手の面影をなんとか脳裏に描こうと苦心していました。最後に互いの姿を見
たのは3年も前ですから、それも無理のないこと。
そんな2人を分かつ距離は500キロ。

出会ったのは、インマンの住むコールドマウンテンにエイダが牧師の父と移り
住んできたのがきっかけでした。一目惚れだったのでしょう。けれど、互いに思
いを秘めたままインマンは南軍の兵士として出征することに。
故郷を離れる日、2人は初めて熱いキスを交わします。思い出はそれだけ。
それだけで3年間、互いを思い続けるなんて今の時代のカップルにはマネでき
ないでしょうね。

もともと遠距離恋愛は続かないもの。
アメリカの心理学者ポッサードが5千組の既婚カップルを調査したところ、そ
のうちの3分の1までが、独身時代、互いに5ブロック以内に住んでいたことが
わかったそうです。また、婚約中に住んでいた家が離れていたカップルほど
別れてしまった確率が高かったことも確かめられました。
遠く離れてしまうと、余計な気苦労や手間、相手への疑心暗鬼が増え、関係
がスムーズにいかなくなるのです。
遠距離恋愛経験者なら、その難しさは身にしみておわかりのはず。
その難しくて続きそうにないことを2人は3年も続けてきたんですね。

戦場で負傷し病院に担ぎ込まれたインマンは数ヶ月遅れで受け取ったエイダ
からの手紙を読んで脱走を決意し、それを決行。徒歩で故郷を目指します。
その行く手を阻む障害は険しい山道と、脱走狩りの兵士たち。
脱走兵は、優雅(?)な拘留生活を送るジェンキンズ軍曹とは違い、即、銃殺
刑に処されるのです。
一方、エイダは父を亡くし天涯孤独の身になっていました。箱入り娘として育
った彼女にとって慣れない土地で一人で生きていくのは至難の業。そんな彼
女を救ってくれたのは隣人のサリー(C・ベイカー)。彼女が生活力のある頼も
しいい助っ人ルビー(L・ゼルウィガー)と一緒に住むようにと勧めてくれたの
です。

この映画を通して痛感させられるのは、男の愚かさ。政治の世界から男を追
放し、そのすべてを女性にゆだねれば、少なくとも大きな戦争は起きないの
ではないか。そんな思いにかられる作品です。
アカデミー賞を助演女優賞(L・ゼルウィガー)しかとれなかった一因は、テー
マがアメリカの情勢に合わなかったせいもあるかもしれません。
[PR]
by kiyotayoki | 2004-09-18 08:49 | 映画(か行)

『刑事ナッシュ・ブリッジス』(1996~2001 米)

a0037414_10530100.jpg
原題:『NASH BRIDGES』
出演:ドン・ジョンソン
    チーチ・マリン


1996年から米CBSネットワークで放映され、6シーズンも
続いた人気ポリスアクションドラマ。東京圏ではテレビ東京でやってましたね。
ここでなぜ紹介するかというと、一時期マニアックに収集していた「飛び降り
自殺を止めるシーン」があったから。
飛び降り自殺を止めるためには、いろんな心理テクニックが使われているの
でとても参考になるんです。それが主人公のキャラにぴったり合ったものだっ
たりすると思わず拍手したくなっちゃうんだなっ、これが。

主人公ナッシュ・ブリッジス(D・ジョンソン)は、サンフランシスコ市警SFPD
の特捜班SIUのチーフを務める敏腕刑事。ナッシュは相棒のジョー・ドミンゲス
(C・マリン)と共に難事件を次々と解決していくんですが、そんなナッシュの
特技はマジック。
そのマジックを使って、ナッシュは自殺を未然に防ぐのですから拍手もの。

今回検索してみてわかったんですが、「飛び降り自殺を止めるシーン」があっ
たのは、第2シーズンの第10話『天使と悪魔』の回。
ナッシュとジョーが車でサンフランシスコの坂道を走っていると、渋滞にぶつ
かります。渋滞の原因は、坂の上でシスコ名物の路面電車が立ち往生してい
たため。よく見ると、路面電車の上に天使の格好をしたホームレス風の男が
手榴弾を手にして仁王立ちしているではありませんか。
2人が近づくと、「来るな!来るとこれを爆発させるぞ」と男が叫びます。
ナッシュはそんなのお構いなしに、見物してたおばさんの買い物袋から卵を
1個拝借すると路面電車の屋根に上っていきます。
焦った男は「俺は本気だぞ!」と手榴弾のピンを抜いて捨てます。
ナッシュはそのピンを拾うと、片方の手に卵、もう片方の手にピンを持って
こう言います。
「このピンと卵でお前を助ける」
「そんなことができたら奇蹟だ」
「そうかい、じゃちょっとした奇蹟を見せてやるよ。これからこのピンを卵に押し
込んで消し去って見せる」
そういうとナッシュは得意のマジックで卵の中にピンを押し込んでしまいます。
「ど、どうやったの?」と素直に驚く男にナッシュは、「マジックだよ、ほら見て
みな」と卵をポイッと男に放る。
それを男が受け取ろうとした瞬間、ナッシュは男の手から手榴弾をもぎ取り、
隠し持っていたピンを装着し直します。
自殺道具を取り上げられた男は自殺の意欲をなくして、一件落着。

ここで使われたのは『ミスディレクション(誤導)』という心理テクニック。
これは相手の意識を誤った方向へ誘導し、その間に目的を達成する方法。
人の意識は動くものにつられやすい(集中しやすい)という心理法則がありま
す。ナッシュはその心理法則を活用して卵を放り投げたのです。
当然のごとく男の視線は飛んでくる卵に集中します。落ちたら簡単に割れて
しまう卵ですから、それをうまくキャッチしようと、男は余計神経を集中したこと
でしょう。
人間はひとつのことに集中すると、ほかの部分は無防備状態になります。
手榴弾を持つ手の握力も若干弱まったはず。だから簡単にもぎとることがで
きたというわけ。
ナッシュは相手の意識を「飛んでくる卵」へ誘導し見事目的を達成したのです。
   ※ちなみに、ナッシュに助けられた天使男は、その後、順レギュラーとして
    ドラマにちょくちょく顔を出すようになりましたっけ。
[PR]
by kiyotayoki | 2004-09-06 10:11 | 映画(か行)

『交渉人』(1998 米)

a0037414_161592.jpg
原題:『THE NEGOTIATOR』(139分)
監督:F・ゲイリー・グレイ
出演:サミュエル・L・ジャクソン
    ケヴィン・スペイシー
    デヴィッド・モース

『狼たちの午後』を書いていたら、籠城モノの秀作としてこの作品があるの
を思い出しました。

ローマン(S・L・ジャクソン)はシカゴ警察東地区で人質事件の交渉人と
して辣腕をふるっていました。
ところが青天の霹靂。ローマンは警察年金に絡む汚職事件と同僚の警官
殺しの濡れ衣を着せられて一転、警察から追われる身に。
窮地に立ったローマンは大胆な行動に出ます。内務捜査局のオフィスに
乗り込み、捜査局員ら4人を人質に籠城してしまったのです。
ビルの周囲は、アッという間に警官隊が幾重にも包囲。周辺のビルの屋上
には何人もの狙撃手が配置され、蟻の這い出る隙間もありません。
けれど、ローマンは交渉のプロ中のプロ。
籠城犯に対して警察がどう出てくるかは全てお見通し。
警察側が連れてきた交渉人などは、ローマンの誘導尋問に乗せられて
「ノー」と言ったばかりに
「ノーは言わない、それが交渉人のイロハだろうが!」と、一喝される始末。
そんなローマンが最初にした要求は、「30分以内に西地区の交渉人、
セイビアン(K・スペイシー)を連れてこい」でした。
ローマンとしては、同じ地区の警官はもう誰も信用できなかったのです。

ローマンは事件の真相に迫るため、人質にとった捜査局の大物に狙いを
定めます。この男の口を割らせることかできれば、すべての謎が解けるに
違いない。
しかし敵も曲者。ちょっとやそっとでは口を割りそうにありません。
そこでローマンが使ったのが、ちょっとした心理テクニック。
わざと何かを思い出させる質問をしたのです。
すると男は思わず視線を右上のほうに泳がせました。それを見逃さず、
「今、ウソをつこうと考えてるだろう!」と断言。
すると、男の顔に動揺の色が。

右利きの場合、人は何かを思い出そうとすると視線が無意識に左上の
ほうに、新たに何かを考えよう(つまりウソをつこう)とすると右上のほうに
動くという特性があり、ローマンはそれを使って、男のウソを見破ったので
す(まあ、そんなことぐらいで「参りました」という人はいないので、この場
合はそう断言することで相手を動揺させることが第一の目的だったと思わ
れます)。

この籠城でも、後半になると人質がローマンに同情し、協力するようにな
ります。それもこれもローマンの『自己開示』に人質たちが心を動かされ
たからに違いありません。
[PR]
by kiyotayoki | 2004-08-31 16:00 | 映画(か行)

『恋人たちの予感』(1989 米)

a0037414_1536060.jpg
原題:『WHEN HARRY MET SALLY』(96分)
監督:ロブ・ライナー
音楽:ハリー・コニックJr.
出演:ビリー・クリスタル
    メグ・ライアン
    キャリー・フィッシャー

こちらはニューヨークの冬だけでなく四季折々が楽しめる作品です。
というのも、この映画、ハリー(B・クリスタル)とサリー(M・ライアン)がNYに
移り住んでからの11年間を描いたラブストーリーだからです。
といっても2人は最初から恋愛関係にあったわけではありません。
そういう関係になったのは最後の1年位で、それまではつかず離れずの間柄
でした。

人間関係は第一印象が大事だといいますが、2人の互いの第一印象は最悪。
旅費節約のために交代で車を運転しながら生まれ故郷からNYへやってきた
2人は、ワシントンスクエアで別れるまで口論ばかり。特に、
「男と女の間に友情はセックスが介在するかぎりあり得ない」と言い切るハリ
ーのシニカルな物言いには、サリーは心底うんざりした様子。
心理学にも『初頭効果』という用語があり、第一印象がのちのちまで強い影響
力をもつことが様々な心理実験で実証されています。
事実、数年後に空港で偶然再会した時のサリーのハリーに対する態度は相当
よそよそしいものでした。
そんなサリーの心境が変化する時がやってきます。
書店で久しぶりに出会った2人、喫茶店で話をしている内にサリーは
「おやっ?」と思います。というのも、あんなに皮肉屋で言葉にトゲがあった
ハリーがなぜか謙虚なのです。いろんな人生経験をして丸くなった感じ。
思わずサリーは自分から「今度、お食事でも」と、誘いの言葉をかけてしま
います。
この心境の変化は、『新近効果』が生んだものと思われます。
これは、新しい情報のほうが強い印象を与え、それまでのイメージが一変して
しまう現象をいいます。

恋をした人の中には、
「初めて会ったときは下ネタばかり連発して下品な人って思ってたけど、
次に会ったら案外マジメな人だったんで、なんだか好きになっちゃったの」
などと言う人がよくいます。これこそ『新近効果』。
ですから、第一印象で失敗したとしても、恋をあきらめるのは早計。
次に会ったときに、初回とはまったく違った態度でのぞめば『新近効果』が
働いて、恋をゲットできるかもしれないんですから。
[PR]
by kiyotayoki | 2004-08-25 15:34 | 映画(か行)

『カウチトリップ』(1987 米)

原題:『THE COUCH TRIP 』(97分)
監督:マイケル・リッチー
出演:ダン・エイクロイド
    ウォルター・マッソー
チャールズ・グローディン

劇場公開もされなかった小品。
そんな作品がなぜ我が家のビデオライブラリーに大切に保管されているかという
と、冒頭に「飛び降り自殺を止める」シーンがあるからです。
刑務所内にある精神病棟に仮病を使って入院している主人公(D・エイクロイド)
が飛び降り自殺をしようとする仲間を助けるためにひと肌脱ぎます。
それを冷ややかな目で見ている底意地の悪そうな病院長。
主人公はこう言って説得します。
「俺達には夢があったじゃん。お前がピッチャー、俺がキャッチャーでワールド・
シリーズで優勝して。美女をはべらせて祝杯をあげるってさ」
けれど自殺志願男の決意は変わりません。誰が考えたってそんな夢が叶う
はずがないからです。
すると主人公、
「じゃあさ、あの院長、気にくわねえヤツだろ。あいつはお前を説得できなかっ
たのに俺ができたとなりゃ、あいつの顔は丸潰れだぜ。だからさ、なッ」
この提案に、ヤな院長をギャフンと言わせるためならと男も折れて自殺を思い
とどまることに。

主人公は知ってか知らずか『シャット・ザ・ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック』と
呼ばれる心理テクニックを使ってたんですね。
“大きな要請を断ったあとは、人は妥協しやすくなる”という心理法則があるん
です。
断るのが当然としても、断ったほうには何かしらの罪悪感が生まれます。
そこで小さい要求を出されると「それ位なら、ま、いっか」とYESと言ってしまい
がちなのです。私生活でも応用できそなテクニックでしょ。
(実は私自身、これで15万円損をしてるんです。知り合いに50万貸してくれ
と頼まれ渋ったところ「じゃあせめて15万」と。ああ、あの15万があれば、
パソコン買い換えられるのに・・・・)

こんな風に、「飛び降り自殺を止める」シーンには様々な心理テクニックが使
われている。だから一時期夢中になって集めていたのでした。 
   
[PR]
by kiyotayoki | 2004-08-06 19:49 | 映画(か行)

『クロコダイル・ダンディ2』(1988 豪・米)

a0037414_1121024.jpg
原題:『“CROCODILE”DUNDEE Ⅱ』(111分)
監督:ジョン・コーネル
出演:ポール・ホーガン
    リンダ・コズラウスキー

オーストラリア奥地で暮らすワニ狩り名人ミック・ダンディーの活躍を描いて
ヒットした『クロコダイルダンディ』(1986)の続編。
ここで取り上げたのは、この作品の中に「飛び降り自殺を止めるシーン」が
出てくるからです(実は、そういうシーンを集めるのを趣味にしていた時期
がありまして)。
ニューヨークの高層ビルの窓辺から今にも飛び降りそうな男。
それを見つけたミックはさっそく外壁の縁を歩いてお節介を焼きに行きます。
日頃、岩山を飛び歩いているミックにとって、そんなことは朝飯前。
「止めてもムダだぞ!オレは飛び降りるんだッ」
ヒステリックにそう叫ぶ男に、ミックはこう応えます。
「そこを通らないと昼飯を食いに行けないんだよ。飛び降りるんなら早くして
くれない?見てると、やりづらいんなら後ろ向いてるからさ、ホラ」
と、後ろを向いてしまうミック。
拍子抜けした男は飛び降りる気力をなくしてしまいます。

このシーンを心理学的に見てみると、ミックは「リアクタンス」の心理を利用
して、見事に飛び降り自殺を防止したと考えられるのです。
「リアクタンス」とは「心残りの心理」。
自殺を止めてくれるのかと思ったら、止めてくれないどころか早くしろと言われ
てしまう。すると、心に「リアクタンス(心残りの心理)」が芽生えて、飛び降りる
に降りられなくなってしまうのです。

この「リアクタンス」の心理テクニックは、いろんなところで使われています。
例えば、TVの人気番組『トリビアの泉』でナレーターが「トンカツは・・・」
で一呼吸置いたり、そのままCMになってしまったりします。
なぜそんなことをするかといえば、視聴者の心に「リアクタンス」の心理が芽生
えるから。すると、その後の情報がとても貴重なもののように思えて、「トンカツ
は・・・」のあとが是が非でも聞きたくなってしまうのです。

ちなみに『ダーティー・ハリー』(1971)にも、クリント・イーストウッド扮する
ハリーが「リアクタンス」を利用して飛び降り自殺を止めるシーンが登場します。
興味のある方はご覧になってみてください。
[PR]
by kiyotayoki | 2004-08-06 16:04 | 映画(か行)