映画の心理プロファイル

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『近距離恋愛』(2008 米・英)

医学博士の姫野友美さんの著書によると、
脳科学的には恋愛感情の有効期限は3年なのだそうだ。
というのも、人の恋愛感情をコントロールしているのはフェニールエチルアミン(PEA)という
脳内神経伝達物質らしいのだけど、そのPEAの分泌が3年もするとガクンと減ってしまうのだとか。
すると、相手に飽きがきてしまう。
けれど、PEAは麻薬のような働きをするので禁断症状が出てくる。
それに耐えきれず、人は相手を変えてPEAの分泌を促進させようとする。
“3年目の浮気”という言葉が生まれたのは、そのせいもあるのではというのだ。
実際、ある調査では、離婚が最も多いのは全世界的にみて結婚4年目なんだとか。
3年目に浮気して、それが原因で4年目に離婚すると・・・(^^;。
ま、これがすべてのカップルに当てはまるわけではないということは言うまでもないことですけどね。

さてさて、今回ご紹介するのは、知り合って10年目を迎える男女が登場する映画です。
恋愛3年限界説を当てはめると、もうとっくに別れていてもいい2人なのですが・・・・
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原題:『MADE OF HONOR』(101分)
監督:ポール・ウェイランド
原作・脚本:アダム・スティキエル
音楽:ルパート・グレグソン=ウィリアムズ
出演:パトリック・デンプシー
    ミシェル・モナハン
    ケヴィン・マクキッド
    シドニー・ポラック

恋に落ちる可能性のある男女の間に友情は成立するか・・・・
この命題にトライした映画といえば、『恋人たちの予感』(1989)を思い出す。
結局、ハリーとサリーは出逢って11年目にしてめでたくゴールインすることになるんだけど、こちらの映画のトムとハンナも、ほぼ同じ10年間、友情関係を保ってきたカップル。しかも、舞台となる都市も同じニューヨークだ。

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トムに扮するのは、初めて見たときはショーン・ペンを柔和にしたような顔だなと思ったパトリック・デンプシー。
まだ新顔かと思ったら、もう43歳。テレビドラマだけでなくキャリアも実力も結構ある人なんだね。そんなデンプシーが最初のシーンでは大学生を演じているんだけれど、ちゃんと若く見えるからスゴイ!
ハンナを演じるのは、『M:i:III』(2006)でヒロインを演じたミシェル・モナハン。
個人的には、その前の出演作『キスキス,バンバン 』(2005)の彼女のほうが好みだったけど(^^ゞ。

そんな2人が演じるトムとハンナは、大学時代から10年来の大親友。
親友でいられるのは、互いに相手を恋愛の対象として見ていないから。
最初っからPEAの分泌も抑えられていた。だからガクンと減ることもなく、つき合いも長続きしているということでありましょうか。
ただ、なにせつき合いが長いから、2人は互いを知り尽くしてるし、恋人同士のように度々一緒に出掛ける。
何でも打ち明けられる男女の壁を越えた間柄なのです。
そんな2人の関係は、男がゲイであることで真実味があった『ベスト・フレンズ・ウェディング』(1997)と比べると、少々無理して親友でい続けている感が拭えないのではあるのだけれど。

その無理はすぐに表面化します。
ハンナがスコットランドへ6週間の長期出張に発つと、トムはいつも自分のそばにいることが
当たり前の彼女と離れたことで、遅蒔きながらハンナに恋していることに気付く(^^;。
でもって、彼女が帰国したらその想いを伝えようと腹を決める。
ところが、再会したハンナが恋人を連れて帰国した上に、その恋人と結婚するので筆頭花嫁付添人(メイド・ブ・オナー)になってくれと頼んできたものだから、さあ大変。なんとか2人の恋路の邪魔をしてハンナを取り戻そうとするのだが・・・といったお話。

ハンナの婚約者の住むスコットランドの風景が美しかったこともあって、ラブコメとしては一応最後まで楽しく観られたかな。

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ひとつ気になったのは、ハンナを演じるミシェル・モナハンの声がますます野太くなったこと。
『キスキス、バンバン』の頃は、もう少し声のトーンが高かったような気がしたんだけれど、
この映画の彼女は、スカーレット・ヨハンソンとタメをはるくらいドスのきいた声をしていらっしゃるのです。

ま、お2人とも、顔に似合わないその声が、ある意味個性になっていて、また魅力にもなっているとは思うのですが(^~^ゞ
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by kiyotayoki | 2009-10-02 23:19 | 映画(か行)

『恋のからさわぎ』(1999 米)

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原題:『10 THINGS I HATE ABOUT YOU』(98分)
監督:ジル・ジュンガー
脚本:カレン・マックラー・ラッツ
    キルステン・スミス 
音楽:リチャード・ギブス
出演:ヒース・レジャー
    ジュリア・スタイルズ
    ジョセフ・ゴードン=レヴィット
    ラリサ・オレイニク

この映画、ヒース・レジャーのハリウッド・デビュー作だったんだね。
撮影時はたぶん19才。いやあ、ホントに若い。
まさか10年も経たずに亡くなってしまうなんて思いも寄らない。

学園(高校)を舞台にした軽妙なタッチの恋愛ドラマ。
若い俳優陣のフレッシュな魅力が詰まった作品で、
オープニングからエンディングロールの思わぬNG集まで楽しく鑑賞できた。

フレッシュな俳優陣のひとりでヒースと“恋のからさわぎ”をすることになるのが、
ちょっとふてくされたような顔が魅力のジュリア・スタイルズ。
彼女が演じるのは、読書好きで男嫌いのクールな女子高生キャット。
キャットには彼女とは正反対で恋に恋する妹ビアンカ(L・ビアンカ)がいる。
ただ、ビアンカは父親から「キャットより先に恋愛をしてはならん」との厳命を受けているので、デートもできずに不満たらたら。
そんな彼女に恋をした転校生キャメロン(J・G・レヴィット)は一計を案じて学校のはみ出し者パトリック(H・レジャー)を金で雇い、手練手管を使ってキャットを落としてくれと依頼するのだけれど・・・。

日本語タイトルは、このお話がシェイクスピアの『から騒ぎ』や『じゃじゃ馬ならし』をベースにしているからつけられたのだろう。
原題のほうは、『10 things I hate about you 』。
このタイトル通り、キャットがパトリックのイヤなところを10個挙げていくシーンがある。
ただ、その後に続けてキャットはこう言うのです。

「でも、一番イヤなのは、そんなあなたのことが嫌いじゃないってこと」

素直に「好き」と言えないところが、いかにも男嫌いで通してきたキャットらしい、でしょ。
さて、この恋の行方は・・・。まあ、収まるところに収まるに決まってますか(^~^ゞ。

ところで、この映画のハイライトといえば、やはりこのシーンでありましょう。
ヒース・レジャー扮するパトリックがブラスバンドを買収した上に、学校放送のマイクと
スピーカーを使ってキャットの前で「君の瞳に恋してる(Can't take my eyes off of you)」
を歌って告白するこの(↓)シーン♪



そうそう、上のシーンを探していたら、ヒースのもっと若い頃の映像を見つけてしまいました。

ヒース・レジャーのもっと若い映像とは・・・
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by kiyotayoki | 2009-08-23 17:42 | 映画(か行)

『空軍大戦略』(1969 英)

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原題:『BATTLE OF BRITAIN』(133分)
監督:ガイ・ハミルトン
脚本:ジェームズ・ケナウェイ他
音楽:ロン・グッドウィン
出演:ローレンス・オリヴィエ
    マイレル・ケイン
    ロバート・ショウ
    トレヴァー・ハワード
    クリストファー・プラマー
    スザンナ・ヨーク

寝苦しかったこともあって、深夜にやっていたのをついつい観てしまった。

舞台は、第二次世界大戦前期(1940年7月~10月)の英国と英仏海峡。
その制空権を巡る英独の戦い「バトル・オブ・ブリテン」を描く戦争大作です。

1940(昭和15)年だから、米国も日本もまだ参戦していない。
そんな頃に、英独間ではこんなにも激しい戦いがくり広げられていたんだね。

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この年の5月、フランスをあっという間に占領したドイツ軍の次なる標的は、もちろん英国。
改めて地図を見てみたのだけれど、フランスからだと英国は海峡を挟んで目と鼻の先なんだなぁ。

海軍力では優位に立っていた英国だったけれど、空軍力は相当劣っていたみたいで。
2500機を有する独空軍に対して、英空軍が有するのはわずか600機。
雲霞のごとく来襲してくる独空軍の爆撃機や戦闘機に、数では劣る英空軍機がどう対抗したのか。
それをもちろんCG技術のなかった時代ですから、実物の戦闘機や爆撃機、それにプラス特撮で見事に再現してるところが、この映画の最大の見どころだし、評価に値するところだ。
とにかく空中戦はすごい迫力です。
なんでもスペイン軍が保有していた第二次大戦中の名機を借りて撮影したんですってね。
その分、当時の英国の名だたる俳優がわんさか出てくる群像劇のほうは、おざなりというか、それなりというか、あまり印象には残らない(^^;。

空中戦というと、華麗でかっこいいというイメージがあるけれど、残忍な殺し合いであるということもちゃんと描いてる。
閉所恐怖症の人だとパニクりそうな戦闘機のコクピットもアレだけど、防御機能のほとんどない爆撃機はまるで小型の肉食恐竜になぶり殺しにあう草食恐竜みたいで哀れだった。
また、英国映画だからといって英軍びいきにはなっていないところも良かったかな。視線はあくまで客観的だ。
しかも、さすが英国映画、ドイツ軍にはちゃんとドイツ語を使わせてる。ドイツ語なまりの英語なんかでお茶を濁したりはしないところはエライ♪

ところで・・・
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by kiyotayoki | 2009-08-22 00:04 | 映画(か行)

『群衆』(1941 米)

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原題:『MEET JOHN DOE』(124分)
監督:フランク・キャプラ
原作:リチャード・コネル、ロバート・プレスネル
脚本:ロバート・リスキン
音楽:ディミトリ・ティオムキン
出演:ゲイリー・クーパー
    バーバラ・スタインウィック
    ウォルター・ブレナン
    エドワード・アーノルド

戦前のフランク・キャプラの作品というと、『或る夜の出来事』(1934)、『スミス都へ行く』(1939)と、名作が多いけれど、この作品は全く知らなかった(^^;。
キャプラ監督、『スミス~』の後に、こんな映画を撮っていたんだなぁ。
しかも、これ、“飛び降り自殺を止めるシーン”まであるじゃない♪♪

前にも書いたことですが、ある時期、映画やTVの中に出てくる“飛び降り自殺を止めるシーン”の蒐集を趣味にしていたことがありまして。
というのも、自殺を思い止まらせるためには相手を説得しなきゃいけないんだけど、
そこには様々な心理テクニックが駆使されているんですね。これが面白かった。
しかもよく観察してみると、どれもが説得する人物のキャラクターならではのやり方で止めているのです。

集め始めてわかったことだけど、“飛び降り自殺を止めるシーン”は、必ずといっていいくらいお話の冒頭部に設けられています。
というのも、主人公がどんな止め方をするかで、その人となりが観客に伝わるから。
「こいつは気が小さいから奥手でさ。いまだに女性経験がないんだぜ」なんて
キャラクターの説明をセリフでやっちゃう脚本って稚拙な感じがしますよね。
その点こちらは、どういう止め方をするかで自然にその人となりが見る側に伝わっちゃう。
説明なしで主人公の癖や性格だけでなく信条や価値観まで伝えることができるんですね。
キャラクター設定は、できることなら少しでも早く観客に伝えたい。だから冒頭部にこのシーンがあるというわけです。

そんな効果があるせいか、“飛び降り自殺を止めるシーン”って思いの他たくさんあるんですよ。
たとえば、『ダーティハリー』『リーサルウェポン』『クロコダイル・ダンディ2』『靴をなくした天使』『タイタニック』・・・etc.
そのどれもが、“らしい”止め方をしている。しかも、それぞれが面白い心理テクニックを使って。
ちなみに、下のYouTubeの映像は、『リーサル・ウェポン』の“飛び降り自殺を止める”シーンです。


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前置きが長くなってしまいましたが、この映画は例外の部類だな。
というのも、冒頭部分では、“飛び降り自殺を止めるシーン”は出こないから。
冒頭、「社会の不公平・不公正を世に訴えるために、クリスマス・イブに飛び降り自殺をする」というジョン・ドゥと名乗る人物からの投稿文が新聞に掲載されるところから始まるので、それも仕方がないのかも。
ドラマのラストはクリスマス・イブ。つまり、飛び降り自殺を止めるシーンはラストまでおあずけなのです。

実はこの投稿記事、捏造です。
クビになりかけた女性記者アン(B・スタンウィック)が起死回生の策として、一人の架空の自殺志願者を創り出したのです。
それが意外なほど話題になり、アンはクビがつながります。調子に乗ったアンは、捏造記事を本物に見せるために、実在のジョン・ドゥを登場させようと提案、上司も承諾、オーディションをひらくことに。
そのオーディションで、アンの眼鏡にかなったのが若き日のゲーリー・クーパー扮するホームレスのウィロビーでした。
若き日の、といってもクーパーはすでに39才だったんだけど、僕的には初老になってからのクーパーのイメージしかなかったので、十分若く見えちゃったな。

お話は、『スミス都へ行く』と似たテイストを持つ諷刺に満ちた秀作でした。
彼の顔と名を冠した記事は大評判となり、ラジオに出演したジョン・ドゥーの「もっと隣人愛を!」という演説がきっかけで、各地に「ジョン・ドゥー・クラブ」が結成されていく。実はそこには新聞社社長D・B・ノートン(E・アーノルド)の、政治的野心があったのだけれど・・・・。

メディアの捏造と暴走という、いまだに古さを感じさせない普遍的テーマを鋭く衝いていることにまず感心。
また、「ウソから出たマコト」という言葉どおり、ジョン・ドゥ自身が虚像であるはずの自らが及ぼした影響の大きさに戸惑い、人々とのふれあいに真実を見出していくところも、いかにもキャプラらしい。
と同時に、情報操作・心理操作で右へ左へと大きくなびく世論の怖さをも再認識させてくれる。

今回の、衆院解散から投票日までが40日と異常に長く設定されているのも、ひとつの情報操作・心理操作だよね。
人は長考すればするほど保守的になっていく。そして無難な決断を下しがちになる。
つまり政府・与党に有利に働くというわけです(^^;。

そしていよいよ、注目のラストシーンがやってきます。
自分の言葉に共鳴して全国から手弁当で集まってくれた何千何万という人々に真実を伝えようとしたジョン・ドゥ。けれど、ジョン・ドゥの声を封印することなど、権力者には容易いこと。
絶望したジョンは、せめてクリスマス・イブに飛び降り自殺をして自分の真意を人々に伝えようとします。
そこへ、アンが病を圧して駆けつけます。さてさて。
この手の説得は、「やめて、飛び降りないで!」と懇願するばかりでは、相手の気持ちを変えることはできません。かえって逆効果。ムキになって飛び降りようとするのです(それを「ブーメラン効果」といいます)。
では、アンはどういう方法で説得したか・・・。
それを書きたいところなんだけど、なにせ映画のクライマックスですしね。
これは見てのお楽しみということにいたしましょうか。

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by kiyotayoki | 2009-08-15 11:32 | 映画(か行)

『告発のとき』(2007 米)

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原題:『IN THE VALLEY OF ELAH』(121分)
監督・脚本:ポール・ハギス
原案:マーク・ボール、ポール・ハギス
音楽:マーク・アイシャム
出演:トミー・リー・ジョーンズ
    シャーリーズ・セロン
    スーザン・サランドン

原題は「エラの谷で」。
これは劇中、主人公のトミー・リー・ジョーンズがシャーリーズ・セロンの息子に聞かせるお話の中に出てくる地名のこと。

その場所で、後に古代イスラエルの二代目の王となる少年ダビデが、
巨人戦士ゴリアテを石つぶてだけで倒したという旧約聖書の逸話。
欧米人にとってはなじみの深いものなんだろうな。

だけど、わたくしめを含め一般の日本人にはなじみは薄~い(^^;。
だから『告発のとき』なんて、無難だけどあまり印象に残らないタイトルになっちゃったんだろう。
何を告発しているかといえば、それは今もまだ戦後処理が終わっていないないイラク戦争だ。

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トミー・リー・ジョーンズが演じるのは元陸軍軍曹の初老の男ハンク。
今は、妻のジョアン(S・サランドン)と悠々自適の生活を送っているけれど、
現役時代は軍警察に所属して軍内の難事件をいくつも解決した優秀な軍警察官だったようだ。
父を尊敬する2人の息子も当然のように軍に入隊。
けれど、兄はすでに戦死しており、弟のマイクはイラク戦争から帰ってきた途端、行方不明になり、そして無惨な惨殺死体となって発見される。
その事件を捜査することになるのが地元警察のバツイチ子持ちの刑事エミリー(S・セロン)。

このドラマ、ただの犯人探しのサスペンスで終わっていないところは、さすがポール・ハギス。
ポール・ハギスといえば、すぐに思い出すのは初監督作の『クラッシュ』(2004)
『クラッシュ』ではまるで無法地帯のようなロスが舞台だったけれど、
今度は戦争でまさに無法地帯そのものになったイラクにスポットライトが当てられる。
そこでは人の心はもはや正常を保てないようで・・・。
映画は息子の死の真相を追い、犯人を探し求める父親を追いながら、戦争の暗部を、そして人間の心の暗部をえぐりだしていく。
その暗澹たる現実に突き当たるたびにトミー・リー・ジョーンズの顔は陰影が濃くなっていくのだけれど・・・。

最近は、顔のシワで演技できる人をあまり見かけなくなったけれど、
トミー・リー・ジョーンズはその数少ない俳優さんのひとりじゃないだろうか。
シャーリーズ・セロンは、この映画でも“男社会でタフに生きる女”をらしく演じている。
そんな2人に比べると、スーザン・サランドンは出番が少ない分、役柄と同じく控えめでありました。

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最初にご紹介したダビデvsゴリアテのお話は、「小よく大を制す」の典型例。
小さくても、力が劣っていても、勇気と知恵と機転がきけばどんな難敵でも倒すことができるという喩えとして、あちらではよく語られるお話らしい。
実はこのお話、断片的にしか知らなかったので今更ながら調べてみた。
ゴリアテというのは、旧約聖書のサムエル記に登場するペリシテ人の巨人兵士のこと。
身長は3m近くある巨人で、分厚い鎧と鉄の槍で武装している。
その威容を目の当たりにしただけで、イスラエル兵達は腰を抜かして動けない。
そんな時、「僕があいつをやっつける!」と進み出たのが羊飼いの少年ダビデ。
どうやってやっつけたかというと、左の絵のような手製の投石器を使ったみたい。
この飛び道具で放たれた石が、、ゴリアテの完璧な鎧で唯一無防備だった眉間に当たったものだから、さすがのゴリアテも昏倒。簡単にダビデに首をはねられてしまったのだそうな。

重厚長大の戦艦にこだわって結局は軽武装の戦闘機に敗れ去った戦前の日本軍は、このたとえ話を知らなかったのかな。
このお話を男の子にしたハンクは、このことをよく知っていたし、地上部隊を投入する前に空軍のピンポイント攻撃でイラクの武力をあらかた無力にしてしまう米軍の戦略に自信を持っていた。
だけど、戦争は地上部隊を投入してからが本番(地獄)だということをハンクは知らなかった。いや、忘れていたんだろうね。
だから、イラクから電話してきた息子の「助けて」シグナルを、怪我の心配はしても聞き逃してしまった。

それを悔やむハンクが最後にとった行動とは・・・・

単なる愛国心だけでは解決しない泥沼に直面した米国民に問いかけるこの映画が公開された後、米国では大統領選が行われ、民主党政権が誕生した。
だけど、考えてみればベトナム戦争終結後も似たような政権移譲が行われたんだよね。
歴史はいつまでこうやって繰り返されていくんだろ。
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by kiyotayoki | 2009-07-25 12:00 | 映画(か行)

『恋人までの距離(ディスタンス)』(1995 米)

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監督・脚本:リチャード・リンクレイター
出演:イーサン・ホーク
    ジュリー・デルピー


列車の中で偶然に出会った男(ジェシー)と女(セリーヌ)が、ウィーンの街を歩きながら、互いへのときめきを高めていく一夜の物語。
ドキュメンタリーのような自然な会話とカメラワークで、愛の駆け引きが繊細に描かれる作品です。

映画のラストあたりで、2人が出会い、ウィーンの街に降り立ったのは6月15日だったことがわかるのだけど、
実は、本日6月15日の朝、日本を飛び立ち、その日の午後に自分もウィーンに降り立つ予定になっているのです。

私事でなんだけど、
これってユングのいう「意味のある偶然の一致(シンクロニシティ)」ってやつかしらん(*^_^*)。

旅は・・・
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by kiyotayoki | 2009-06-15 02:53 | 映画(か行)

『グラン・トリノ』(2008 米)

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原題:『GRAN TORINO』(117分)
監督:クリント・イーストウッド
原作:デヴィッド・ジョハンソン ニック・シェイク
脚本:ニック・シェイク
音楽:カイル・イーストウッド マイケル・スティーヴンス 
出演:クリント・イーストウッド
    ビー・ヴァン
    アーニー・ハー
    クリストファー・カーリー
    ジョン・キャロル・リンチ

いきなりスクリーンに映し出されたのは、モノトーンの、
まるで墓標のようなワーナーブラザーズのロゴマーク。
それを見て、この映画の行く着く先に不安を覚えたのは僕だけじゃなかったと思うな。

でも、物語が始まって、ちょっと安心した。
自分の妻の葬式で喪主を務めるウォルト役のクリントは、いつもの偉丈夫、そして、いつもの鋭い眼光だったから。
そして思った。クリントみたいに年をとった時こそ、背広にネクタイは必需品だなって。引退したサラリーマンが途端に老け込んで見えるのは、見映えをキリッと整えてくれる背広にネクタイをしなくなるからでもあるんだろうな。

葬儀にはウォルトの2人の息子とその家族も参列しているんだけれど、
この2人が母親似なのか、クリントとは似ても似つかない中年太りのオヤジたちで・・・。
2人は、会話のやりとりの中で主人公であるウォルトの人となりを一気にまとめて紹介してくれる。
これは下手くそな脚本の常套手段。・・・と思ったら脚本家が新人と知ってちょっと納得。

新人なのは脚本家だけじゃない。ウォルトが後に深く交流することになるモン族(東南アジアからの移住者)の人たちもオーディションで集められた素人同然の人たち。クリントには自分の知識や経験を手垢のついていない人たちにできるだけ吸収してもらいたいという願望があったのかもしれないな。

それだけに、作劇や演技の面でもたつきを感じる場面はあったけれど、作品自体は心に深く残るものだった。

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タイトルにもなっているグラン・トリノは、1972年製のフォード車のこと。
50年もフォード社の製造工場に勤めていたウォルトは、その愛車が自分でハンドルをつけた車であることを誇りにしている。
形こそ古いが外観や車の機能は新品同様。
それはウォルト自身の理想の姿を具現化・投影化したものといえるかも。
ただ、理想は理想。現実のウォルトは若いゴロツキたちに負けない気概と胆力は保持しているものの、体力の衰えは隠しようもないし、ウオルト自身がそれをしっかり自覚してる。
そのせいか、ウォルトが愛車と一体になる(運転する)シーンは結局一度もなかった。

お話は、オーソドックスな西部劇のスタイルを彷彿とさせつつも、病める多民族国家であるアメリカの今を頑固で自己本位な老人ウォルトを通して描き出していく。
そうしたお話の中で、クリント・イーストウッド監督は、いかにも彼らしいやり方で俳優クリント・イーストウッドに最後の花道をつくってやるのです(それには息子のカイルも音楽で手助けしてる)。

ああ、本当にこれで見納めになっちゃうのかな、俳優としてのクリント・イーストウッド。

だけど、嘆いていても仕方がない。
この映画のための画像を探していたら、こんなのを見つけました。
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Tシャツの胸に染められた文字は、EVERLAST(永遠に)。
俳優業はやめるかもしれないけれど、クリントさん、映画への情熱はまだまだ衰えることはなさそうです♪
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by kiyotayoki | 2009-05-02 17:32 | 映画(か行)

『刑事ジョン・ブック 目撃者』(1985 米)

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原題:『WITNESS』(113分)
監督:ピーター・ウィアー
脚本:ウィリアム・ケリー
    アール・W・ウォレス
音楽:モーリス・ジャール
出演:ハリソン・フォード
    ケリー・マクギリス
    ルーカス・ハース

以前、映画の中にレモネードを飲むシーンが出てくると、思わずゴクリ、無性に飲みたくなっちやう・・・って話を書いたことがありましたが、そういえばこれもまさに思わずゴクリの映画だったんだな。

アーミッシュの村で傷を癒したジョン・ブック(H・フォード)が村人総出で行う納屋づくりに参加した時のこと。
額に汗して、みんなで力を合わせてひとつのものを作る喜びを味わったジョンが、丸一日の労働の対価としてレイチェルから手渡しでもらったのがレモネードだったのです。
それをこぼれるのも構わず一気に飲み干すジョン。
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禁欲をむねとするアーミッシュの人々は電気も文明の利器も使わないから、レモネードはもちろん氷抜き。
だけど、ホントに美味しそうに飲んでたな♪
それを見つめるレイチェルのまなざしには、ハートマークが見え隠れ。

レイチェルは、夫を亡くしたばかりのアーミッシュの美しい未亡人。演じているケリー・マクギリスは当時27歳。たぶんレイチェルも同じくらいの歳なのだろう。
その一人息子サミュエル(ルーカス・ハース)が、フィラデルフィア駅のトイレで殺人を目撃したことから、厄介な事件に巻き込まれてしまう。

何が厄介かといえば、殺人を犯したのが警察官だったから。捜査にあたるジョンの仲間の犯行だったのだ。
しかも、上司である本部長まで事件に絡んでいたものだから、ジョンとレイチェル母子は窮地に陥ってしまう。

ま、よくあるお話ではあります。
けれど、目撃者をただの一般人ではなく、アーミッシュの民にしたことで、殺人事件には不釣り合いなほど詩情溢れる牧歌的な風景を物語に出現させることができ、また、異文化との遭遇という新たな切り口を加味した作品に仕上がった。

今回、久しぶりに観て、改めて、このシーンはいいなぁと思ったのは、
ジョンとレイチェルが、カーラジオから流れてくる曲に合わせてダンスをするシーンでした。

流れてきたのはサム・クックの往年のヒット曲、『(what a)wonderful world』♪
YouTubeにその映像があったので、貼り付けておきますね。



サム・クックは33才という若さで死んだソウルシンガー。
“ミスター・ソウル”とも呼ばれておりました。

Don't know much about history
Don't know much about biology
Don't know much about a science book
Don't know much about the French I took
But I do know that I love you
And I know if you love me, too
What a wonderful world this would be

歴史なんてわからない
生物の授業もわからない
科学の教科書だってわからないし
習ったフランス語もまるでチンプンカンプン
でも、僕が君のことを好きだってことならよ~くわかってる
君が僕のことを好きかどうかだって知ってる
ああ、この世はなんて素晴らしいんだろう!

訳してみると、脳天気な恋の歌って感じだけど、「歴史」や「生物の授業」「フランス語」のところを「アーミッシュ」や「戒律」「伝統」って言葉に替えてみたら、まるでジョンのために作った曲みたいになる(^^。

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そうそう、この映画は、今や売れっ子ヴィゴ・モーテンセンの
デビュー作でもあるんだってね♪
当時27歳のヴィゴ君が演じていたのは、アーミッシュの若者A。
セリフ、一言ぐらいあったかも。
隣りは、アレクサンダー・ゴドノフ。『ダイハード』で印象的な悪役を演じていたけれど、こちらでもとっても印象に残る儲け役をやってらっしゃる。

そしてもう1人、この映画を語るのに忘れてならないのは、この子役、ルーカス・ハースくん♪
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ルーカス・ハースくん
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by kiyotayoki | 2009-04-12 11:14 | 映画(か行)

『グリーンフィンガーズ』(2000 英・米)

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原題:『GREENFINGERS』(91分)
監督・脚本:ジョエル・ハーシュマン
音楽:ガイ・ダガル
出演:クライヴ・オーウェン
    ヘレン・ミレン
    デヴィッド・ケリー
    ウォーレン・クラーク

このところ英国映画づいているので、今までずっと手を付けずにいたこの作品も観てみることにした。 
タイトルになっているグリーンフィンガーとは、イギリスの口語で「園芸の才能がある人」「天才的庭師」という意味だそうな。

映画のストーリー展開はガーデニング版『フル・モンティ』といった感じ。
罪を犯して人並みの人生から落ちこぼれた受刑者たちが、フラワーショウへの出品を通して生き甲斐を見出し再生していくお話。
先日、ご紹介した『やわらかい手』にしても、それから『キンキーブーツ』にしても、主人公が生き甲斐を見つけて前向きに生きていくってところは同じ。
手を替え品を替え、英国映画はこの手の作品がほんとに十八番(おはこ)になっちゃってる感じだな。

主演は、クライヴ・オーウェン。
ちょっと“うどの大木”っぽくて、掴みどころのない俳優さんだなぁと思うんだけど、最近の作品ではどうなんだろ。
主人公のコリンは殺人の罪で十代の終わりに受刑し、人生の半分近くを塀の中で無気力に過ごしてきた男。
そんな男に転機が訪れる。
自然豊かなコッツウォルズにある開放型の更正刑務所に移送されたのです。
この刑務所には、高い塀もなければ部屋にカギもない。
外界との接触をゆるやかに保ちながら、囚人たちに職業訓練を施して更正の手助けしようという施設なのです。
コリンはここで、たまたまガーデニングの仕事を与えられ、仲間になった受刑者と共に
土を掘り返し種や球根を植えていくうちに、仲間に心を開き、生きる意欲を取り戻していく。

このお話、実話が元になっているらしい。たぶん映画に登場した開放型刑務所と、そこの受刑者たちがハンプトンコートのフラワーショウに出品したというエピソードが実際にあったんだろう。
いい話ではある。
でも、刑に服するってこんな楽でいいのかしらんっていう疑問はやっぱり最後まで頭にまとわりついてしまう映画でもある。
ただ、植物や動物とふれ合わせることで、命の大切さ、奉仕することの喜びを体感させることが受刑者の更正に役立つことは確かだと思う。
実際、米国などでは殺処分されしまう犬を刑務所が引き取って、しつけを覚えさせ里親に引き渡す奉仕活動を受刑者たちにやらせることで更正に役立てる試みが実際に行われて、効果をあげているそうだし。

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“うどの大木”風のクライヴ・オーウェンはいまひとつだけど、共演者は魅力的。
主人公に植物を育てる楽しみを教えてくれる同じ房の受刑者の老人、その味わい深い顔、どこかで見たと思ったら、『チャーリーとチョコレート工場』のジョーじいちゃんじゃありませんか。
また、受刑者たちに王立園芸協会の主催するフラワーショーへの道を切り開いてくれる高名な園芸家には、ヘレン・ミレン。
そういえば、彼女が主演した『カレンダーガールズ』(2003)も、主人公たちが生き甲斐を見つけて前向きに生きていく映画でありましたね。


日本にもこの手の“人生の負け組が自分たちで生き甲斐を見つけて前向きに生きてく”映画はないかしらん・・・




あ、『フラガール』って、それっぽいかな?
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by kiyotayoki | 2009-01-27 11:31 | 映画(か行)

『傷だらけの男たち』(2006 香港)

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原題:『傷城 CONFESSION OF PAIN』
監督:アンドリュー・ラウ アラン・マック
脚本:フェリックス・チョン アラン・マック
音楽:チャン・クォンウィン
出演:トニー・レオン
    金城 武
    スー・チー
    シュー・ジンレイ

トニー・レオンが八嶋智人に見えるという噂(^^;)の映画を
WOWOWで観た。

だからってコメディじゃないんですよ。
『インファナル・アフェア』の製作チームが新たに手掛けた得意の“恨み節”映画。

かつて刑事として上司と部下の関係だった2人の男がある殺人事件をきっかけに再会、
真相を追うにつれ哀しみと痛い過去が浮き彫りになっていくというストーリー。

クリスマスのイルミネーションとジャジーにアレンジされたSilent Nightで始まるオシャレな出だしから、
夜の空撮で見せる車の追跡シーンへと続くオープニングは、心地よく、また期待感ふくらむものだった。

“だった”と書くと、その後、期待感がしぼむような印象を受けるかもしれない。
確かに、仮面をかぶって生きているトニー・レオン扮する主人公は前作が前作だけに既視感を覚えるし、
展開を早くするためか、ムード先行のためか、ストーリーが端折られている感じで、戸惑うこともあった。
けれど、演出なんかはさすがだなと思う部分も多々あるんです。
たとえば、過去と現在を同時に同じ空間で映像に入れ込む演出法とか。
『インファナル・アフェア』以来の作品ということで過剰な期待をしなければ、
香港映画独特の“恨み節”を堪能できる映画だとは思いましたよ。
ただ、タイトルは一考の余地があったんじゃないかな。
原題の『傷城』にサブタイトルでもつけたほうが良かったんじゃないかしらん。


判断を迷ったのは、金城武という俳優さんの役者としての力量かな。
恋人を失って自暴自棄になり、酒におぼれて刑事を辞め、しがない探偵稼業に身を落としている役なんだけど、
酔いどれぶりがな~んか板に付いていないんだな。
先日観た『レッドクリフ』でも、諸葛孔明役はミスキャストな気がしたし。
カッコイイし、雰囲気のある役者さんだから、期待してるんだけどな。
今、テレビで盛んに予告を流してる「K-20 怪人二十面相・伝」 はさて、どうだろ。

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そうそう、八嶋智人似のトニーさんって・・・
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by kiyotayoki | 2008-11-10 09:34 | 映画(か行)