映画の心理プロファイル

カテゴリ:映画(た行)( 89 )

『チョコレートドーナツ』(2012 米)

五月も終わってしまうというのに、この月は映画を1本も観ていなかった。
これはまずい!「月に1本は映画を観る」という年始の誓いが守れなくなっちゃう。

そこで、重い腰を上げて久しぶりにシネスイッチ銀座へ。
観たのは『チョコレートドーナツ』。
ゲイのカップルとダウン症の男の子が織りなす物語。実話が元になっているそうな。

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原題:『ANY DAY NOW』(97分)
監督・脚本:トラヴィス・ファイン
音楽:ジョーイ・ニューマン
出演:アラン・カミング
    ギャレツト・ディラハント
    アイザック・レイヴァ

映画の舞台は、1979年の米国。ゲイに対する理不尽な差別や偏見が渦巻いている時代。
救いは、エイズ問題がまだ表面化していなかったことぐらい。
そんな中で、ゲイのカップルが親に見放されたダウン症の少年と一つの家庭を築き、家族としての愛情と
絆を育んで行こうとするのだけれど・・・・。

米国映画は邦画だと愁嘆場になるところをサラッと描く。それでいて余韻は深い。

主人公の歌う「I shall be released」の熱唱がまだ耳に残ってる。


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by kiyotayoki | 2014-06-01 13:55 | 映画(た行)

『タイピスト』(2012 仏)

美術館にするか映画にするか迷った末、閉館が5時の美術館だとゆっくり見られないので映画を選択。
出かける前にパソコンで予約を入れたら、スクリーンから2列目の端k席しか空いておらず、
2時間、ずっと右向け右の状態を続けることになったけれど、映画が楽しかったので助かりました。

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原題:『POPULAIRE』(111分)
監督・脚本:レジス・ロワンサル
音楽:ロブ、エマニュエル・ドルランド
出演:ロマン・デュリス
    デボラ・フランソワ
    ベニレス・ベジュ

これは、自分磨きが大好きな今どきの女子におすすめの映画☆☆☆

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現代版マイフェアレディみたいなお話(時代設定は1959年)で、
田舎町から憧れの都パリに出てきた女の子ローズが
タイプライターの早打ちという唯一の特技を、雇い主の
マンツーマンの指導の下、磨きに磨いて仕事も恋も
ゲットしちゃうというサクセスストーリー。

ローズを演じるデボラ・フランソワという女優さんのことは初めて知ったけれど、とってもキュートだし、50年代ファッションもお似合いで、お肌は雪のように真っ白だ。
お歳はいくつだろ。
映画の中の彼女は、十代に見える時もあるし、二十代後半の落ち着きを感じる時もある。
調べてみたら、今年26歳なんだそう。

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50年代後半のお話ということもあってか、フランス人でも簡単には恋に落ちません。セックスなんてとんでもないって感じ。
恋への積極性という意味では、「あまちゃん」の主人公のほうがよっぽどラジカルだ。
でもね、なかなか一線を越えない二人の微妙〜な関係は日本人好みというか、
今どきの日本女子にも意外と新鮮に映るんじゃないかしらん。

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タイプライターを効果的に使った映画としては『つぐない』(2007)を思い出すけれど、こちらはある意味タイプライターが主役といってもいい映画。
この時代に本当にあったというタイピストの世界大会に憧れの上司と共にトライしていくローズの姿は、下手なスボ根モノよりスリリングでハラハラドキドキさせられる。

また、主人公のファッションからインテリア、小物に至るまで、女の子が「かわいい~っ」を連発しそうなものが
ズラリと出てくるところはさすがフランス映画。
中で、僕が思わず「かわいい~っ」て叫びそうになったのがこの車。
この丸っこいフォルム☆ どこのなんて車だろ。 

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調べてみたら、この車「パナール・ディナZ(Panhard Dyna Z)」というんだそうな。
かつてフランスに存在したパナールという自動車メーカーが1954年から1960年まで生産していた、
今で言うコンセプトカーみたいな車だったらしい。
会社はその後シトロエンに吸収合併されちゃったそうだから、幻の車って感じ。
そんな車を使うところが映画の作り手のこだわりを感じさせる。

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ひと目見てウーパールーパーに似てると思ったけれど、ドアの開き方も独特でエラみたいだし、
ますますウーパールーパーに見えてしまう車なのでした(^_^;)
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by kiyotayoki | 2013-08-31 11:33 | 映画(た行)

『テッド』(2012 米)

遅ればせながら、話題の映画を観てまいりました。
最新CGによって命を吹き込まれたぬいぐるみのテッドは本当に生きているようで、人間との絡みもまったく違和感なし。
その点では、映画の完成度を別にすれば、同様の映画『宇宙人ポール』(2010)にも負けず劣らずの出来でした。


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原題:『TED』(106分)
監督・原案・脚本:セス・マクファーレン
音楽:ウォルター・マーフィ
ナレーション:パトリック・スチュワート
出演:マーク・ウォールバーグ
     ミラ・クニス 
     ジョヴァンニ・リビシ 
     サム・ジョーンズ

お話は、ちょっとサエなくてだらしのない35才の主人公(マーク・ウォールバーグ)が、
恋人(ミラ・クニス)から「私をとるか、それとも腐れ縁の悪友テッドをとるのか」との選択を迫られ、
愛と友情を天秤にかけつつ悩みまくるというもの。
二者択一を迫りながら相手から望み通り「イエス」の返事をもらう心理テクニックに『エリクソニアン・ダブルバインド』という手法があるけれど、そういうテクを使うとお話がすぐに終わってしまうので、恋人ロリーはそんな気の利いた手は使いません。
まずは忍耐。そして、その反動で爆発(^^;
そのたび主人公ジョンは頭を抱えちゃう。

と、まあ、お話自体はありがちなんだけど、なにしろ三角関係の一角がクマのぬいぐるみだものだから、
大したことのないお話が大したことになっちゃう。
逆に言うと、特異な設定とキャラクターにおんぶに抱っこの分、お話は正直薄いし、ひねりも足りない。
足りない分を、幼稚で下品なギャグの連発と、フラッシュゴードンなど監督の趣味らしい懐かしの映画の小ネタと、カメオ出演の豪華な俳優たちで補ってる感じ。
そこが『宇宙人ポール』との大きな違いかな。
宇宙人のポールもかなりのオヤジで下品なギャグを連発していたけど、テッドと比べれば上品に思えるほどだもの。
それに、お話の完成度も高かった。

ただ、テッドは文句なしにユニークで愉快なキャラだし、
冒頭にも書いたように、本当に命を吹き込まれたように喋り動き回るし、まったく違和感がないので
大人になってもぬいぐるみに愛着を持つ女性や、こういう幼なじみとの交友に郷愁を覚える男性はハマること
間違いなしの映画だと思います。
つまり着眼は抜群だということ。
もし続編が作られるとしたら、お話の展開もキャラクターに負けずにユニークでひねりの利いたものにしてもらえたらなと、コメディ映画ファンとしては切に願う次第です。


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by kiyotayoki | 2013-02-06 12:10 | 映画(た行)

『ディクテーター 身元不明でニューヨーク』(2012 米)

いきなり、「金正日を偲ぶ」というテロップと共にスクリーンにでかでかと映し出されたのは
故金正日主席のお顔。
いやあ、かなりのぶっ飛び映画だとは聞いていたけれど、
初っぱなから意表を突かれました(^_^;)。


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原題:『THE DICTATOR』(83分)
監督:ラリー・チャールズ
脚本:サシャ・バロン・コーエン他
音楽:エラン・バロン・コーエン
出演:サシャ・バロン・コーエン
    アンナ・ファリス
    ベン・キングズレー
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タイトルにもなっているディクテーターは「独裁者」という意味。
オープニングで金正日元主席が登場したのも独裁者つながりだったんだね。
この映画で、アフリカにある架空の国の独裁者・アラジーン将軍(正日さんと同じく二代目)を演じるのは、
コメディアンのサシャ・バロン・コーエン。『ボラット』や『ブルーノ』でもかなりひねくれた個性を発揮していた人だ。
後で知ったことだけど、この人、今年のアカデミー賞授賞式のレッドカーペットで、
「親友を連れて来きた」といいつつ、抱えていた骨つぼ(故金正日氏の顔写真付き)の遺灰をぶちまける
というパフォーマンスを披露したんだそうな。
映画のPRとはいえ、そんな過激なパフォーマンスをする男が作った作品というわけで、
内容は推して知るべしって感じかな。

とにかく、下ネタ、人種&男女差別ネタ、宗教ネタ、民族ネタ、核兵器ネタなど
いわゆるタブーとされるネタ満載の映画でありました。

ちょっと間違えれば信仰心の厚い方々を刺激してデモや暴動なども起きかねない内容です。
もしイスラム教をネタにしていたら、いま現実に起きているような騒動があちこちで起きていたかも。

だけど、そこはサシャ君、心得ています。
自身がユダヤ人ということもあって、宗教ネタ、民族ネタの矛先はユダヤ社会に向けられている。
「核兵器が完成したら、イスラエルに・・・」なんて物騒なことまで自ら口になさる(^^;。

ま、分厚いユダヤジョーク集の大半が自虐ネタであることからもわかるように、
元々ユダヤ人の皆さんはこの手のギャグには寛容、
・・・というかそうしたギャグを利用して逆に自分たちの民族の存在を世界にアピールしていらっしゃる。

なんにせよ、タブーとされていることには神経質すぎるほど自主規制してしまう今の窮屈なご時世にあって、
そうしたものをことごとく笑い飛ばしてくれる本作品は、ある意味痛快ではありましたよ。
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by kiyotayoki | 2012-10-24 11:40 | 映画(た行)

『ダークナイト ライジング』(2012 米)

クリストファー・ノーラン版バットマンの第一作『バットマン ビギンズ』が公開されたのが2005年。
2作目の『ダークナイト』は3年後の2008年。
そして、4年後の今年、トリロジーの完結編『ダークナイト ライジング』公開と相成った。
3作目公開までにちょっと間があいたのは、ノーラン監督が『ダークナイト』の後に
『インセプション』(2010)のメガホンをとったから。
『インセプション』は、ノーラン監督にとって、かなり思い入れの強い作品だったようで、マリオン・コティヤールや、ジョセフ・ゴードン=レヴィット、トム・ハーディといった俳優を本作でも再び起用している。
そのせいもあってか、観ていて何度かデ・ジャヴを覚えるほどだった。
同じ俳優を使うのも良し悪しはあるものです。


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原題:『THE DARK KNIGHT RISES』(164分)
原案・監督:クリストファー・ノーラン
脚本:ジョナサン・ノーラン、クリストファー・ノーラン
音楽:ハンス・ジマー
出演:クリスチャン・ベイル
    マイケル・ケイン
    ゲイリー・オールドマン
    アン・ハサウェイ
    マリオン・コティヤール
   ジョセフ・ゴードン=レヴィット
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ノーラン版のバットマンの特徴は、
単純なアメコミヒーローものから極力距離を置こうとしているところ。
ヒーロー映画ならではのアクションや派手な演出はあるものの、
キャラクター設定やストーリー展開はリアリティを重視している。
2作目のタイトルから“バットマン”を外しちゃったのも驚きだったし、
前作のジョーカーというキャラクターの造形にしろ、
闘うたびに生傷が絶えないスーパーヒーローらしくないバットマンの姿にしても“リアリティ重視”の最たるものだった。
その姿勢は、本作でもオープニングからはっきり表れておりました。
中東の何処かで、CIAと思しきエージェントが国際手配犯らしき男を秘密裏に米国へ移送するところから始まるのだけれど、まるでスパイアクションでも始まりそうなオープニングなのです。
それからの航空機を使ったダイナミックな展開は、まるで007のオープニングかと思うほど。

その国際手配犯らしき男は、ハンニバル・レクターみたいなマスクをしたスキンヘッド野郎なんだけど、これが今回のバットマンの宿敵“ベイン”だった。
こいつが強いのなんの、バットマンは強化スーツを着ていても歯が立たない。ボコボコにされてしまう。
実はその強さの秘密が本作の柱になっている。で、その秘密が徐々に明らかにされていくのだけれど、
それには前の2作を観ておく必要があるから、本作だけを観た人はチンプンカンプンだったかもしれないな。

だけど、シリーズを通して観ている人間からすると、「この破天荒なストーリーをよくまとめたな」と感心することしきりだった。
それに、シリーズのファンには嬉しいサプライズがちょこちょこ織り込んであるので、
思わずニヤリとしてしまう(キリアン・マーフィの意外な場面での登場など)。

164分という長尺も気にならないくらい面白かった。
ただ、核兵器の扱い方に関しては、これがアメリカ人の常識なのかなと、また首をひねらずにはいられなかった。
シュワちゃんの『トゥルーライズ』(1994)やTVシリーズの『24』もそうだけど、
核兵器が爆発してもある程度距離が離れていれば全然ノープロブレムという描き方をしているのです。
さすが劣化ウラン弾を平気で使う国と感心してばかりはいられない。
こういう映画を観た人たちの間に、核や原子力など恐るるに足らずなんて
“常識”が根付かないとも限らないのですから。


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by kiyotayoki | 2012-08-19 12:19 | 映画(た行)

『テルマエ・ロマエ』(2012 日本)

この春のヒット邦画『テルマエ・ロマエ』を観てまいりました。

もっと大笑いさせてくれる映画なのかと思っていたけれど、
館内に笑いが起きたのはカルチャーギャップが描かれる前半のみ。
後半はタイムパラドックスをいかに解消しながらエンディングへ向かうかに焦点の当たった
ある意味“生真面目な”つくり方だったので館内はシーン。
ま、それはそれで、面白い展開ではあったんですが・・・。

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(108分)
監督:武内英樹
原作:ヤマザキ マリ
脚本:武藤将吾
テーマ曲:『誰も寝てはならぬ』
出演:阿部寛
    上戸彩
    北村一輝
    市村正親

ネットで原作漫画の第一話を見ることができたので、さらりと目を通してみた。
第一話の内容(阿部寛扮するルシウスが古代ローマから現代日本へタイムスリップするまで)は、
映画のオープニングでもほぼ忠実に描かれておりました。

原作は、マンガ大賞と手塚治虫文化賞のW受賞を果たした、ヤマザキマリの大ベストセラーコミック。
タイトルの“テルマエ・ロマエ”とは、ラテン語で“ローマの風呂”という意味。

ローマ人と日本人の共通項として風呂好きであることに着目した時点で、すでに“勝負あり”だったのかも。
原作者はイタリアに住んだ経験があり、ご主人もイタリア人だという。
昔はあった共同風呂がなぜ現代のイタリアにないのか。そのあたりの疑問を夫婦でディスカッションするうちに
このアイデアが生まれたんだとか。
お風呂限定のタイムスリップという設定もうまく効いていて、後は異質な部分を強調すれば笑いは自然に生まれてくる仕掛け。
浴場造りのアイディアに悩んでいた生真面目なルシウスには、銭湯の富士山の絵や、
ケロリンのマーク入り洗面器、フルーツ牛乳、シャワーキャップ、トイレのお尻洗浄装置などなど、
日本人には馴染みのある物すべてが驚愕の的になってしまうのです。
地味な顔の日本人を形容する“平たい顔族”というネーミングも秀逸。

阿部寛、北村一輝、市村正親などの、濃い顔の俳優たちが堂々とローマ人に扮するキャスティングも効いている。

ただ、それらの物語設定や人物紹介が一段落ついてしまうと、お話は凡庸になっていく。
というか、前半のインパクトが強すぎるので、凡庸に思えてしまうのかも。
いや、やっぱり設定やキャラクターの面白さに脚本や演出があぐらをかいてしまったのが原因か・・・。

現代の日本で阿部寛のルシウスと絡む売れない漫画家、真実という女の子(上戸彩)は
映画オリジナルのキャラクターなんだそうな。
この子が現代っ子のようで実は案外古風で健気なので、重しのような存在になって、
上戸彩ファンには申し訳ないけど、笑いを押し込めてしまったような気がする。
ファニーフェイスなのでコメディエンヌとしても、もっと輝けると思ったんだけどな。
できれば脚本をもうひとひねりふたひねりして、後半も何度か笑わせてくれていたら
第一級のコメディとして大推薦できたのに。

でもまあ、見終わると、なんだか風呂上りのようなぽかぽか&爽やかな気分になれる映画ではありましたよ(^^。


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by kiyotayoki | 2012-05-28 12:19 | 映画(た行)

『ドライブ』(2011 米)

事前にほとんど何の情報も仕入れずに観に行った映画です。
『ドライブ』というタイトルから、派手なカーアクションが目玉の映画かな、ぐらいの予想はしていたけれど。

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原題:『DRIVE』(100分)
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
原作:ジェイムズ・サリス
脚本:ホセイン・アミニ
音楽:クリフ・マルティネス
出演:ライアン・ゴズリング
    キャリー・マリガン
    ロン・パールマン

オープニングは、想像通りカーアクションから始まった。
主人公は、強盗の逃走を請け負うプロのドライバーのようだ。
となると思い出すのは、ライアン・オニール主演の『ザ・ドライバー』(1978 W・ヒル監督作)だ。
役柄も同じように凄腕の逃がし屋ドライバーだった。おまけに、寡黙なところもそっくり。
だけど、ちょっと様子が違う。
普通なら、フルスロットルで、タイヤを軋ませながら疾走するところだけど、
このドライバーは法定速度をちゃんと守るし、赤信号ではちゃんと止まる。なのに捕まらない。
というのも、警察無線を傍受して、パトカーのいない所いない所をすり抜けていくから。
もちろん警察ヘリをまくドライブテクニックも持っているんだけれど、
頭がキレる上に判断力や察知能力に優れているので、冷静に危機を回避できるんだね。
このオープニングは意外性があって面白かったな。

オープニングで意外だったことがもう一つある。
タイトルや出演者紹介のロゴがピンク色なのだ。
都会の夜景にピンク色がやけに目立つんだな、これが。
こういう硬質でタイリッシュな始まり方をする映画にピンク色のロゴは珍しいと思う。

心理学的にはピンク色は「幸せを希求する色」「誰かに優しくされたい、優しくしたいという願望を表す色」
とされている。
そういう色をタイトルのロゴに使うというのは、どういう意味があるんだろう・・・・。
映画を観ながら、それが気になっていたのだけど、観ていくうちになんとなく腑に落ちた感じ。

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主人公には名前が与えられていない。
そのことに象徴されるように、主人公については映画のスタントドライバーをしているが、
普段は自動車修理工場で働いていること、質素なアパートに一人住まいであること、
寡黙で自分の過去については何も語らないことぐらいしか明らかにされない。
(あと、背中にサソリの刺繍のあるジャンパーを常時愛用していることぐらい)

そんな男の人生が、アパートの隣室に住む若い母子と知り合うことで少しずつ変わっていく。
母子の人生に関わり合いを持ち、二人を優しく見守ることに今までにない生き甲斐を感じ始めるんだね。
もしかしたら映画の作り手はそんな男の気持ちをタイトルのピンク色で表現したかったのかもしれない
(母と子に献身的に尽くす主人公の姿は、マチルダに命を捧げた孤独な殺し屋レオンの姿とオーバーラップした)。

だけど、男にとっての幸せな時間は長くは続かない。
若い母親の夫が刑務所から出所してきたからだ。
そして、その夫は不幸の種も一緒に持ち帰ってくる。
そのせいで母と子は命を狙われ、それを守ろうとする男の身辺にも死のニオイが立ちこめ始める。
ピンク色がいささか濃いのは、それによって流される血の色も連想させようという企みがあるのかも。
それもあってかバイオレンスシーンは過激だ。

若い母親を演じるのは、『17歳の肖像』で一躍脚光を浴びた若手女優のキャリー・マリガン。
ショートヘアーの似合うキュートな女優さんだ。

母子、そして主人公を死の淵に追いやるのは、2人の男。
一人は、ロン・パールマン。『ロスト・チルドレン』『ヘルボーイ』のあの怪優だ。

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そして、もう一人は、どこかで見たことがあると思ったけど、
映画を観てる時は思い出せなかったアルバート・ブルックス。

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帰って調べてみて驚いた。
この強面の人、コメディ畑出身で『ブロードキャストニュース』(1987)では軽妙な演技が印象に残る俳優さんだった。
いやあ、変われば変わるもんです。

悪役が強くて個性的で、ある意味魅力的なほど、主人公が輝く。
その点ではこの映画、主人公を輝かせるのには成功しているのかも。

その主人公を演じたライアン・ゴズリングはというと、『ステイ』(2005)で自殺志望の若者を演じた彼じゃありませんか。
最近では、ついこないだまで公開されていた『スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜』でも主演。
そうそう、先日観た『フラクチャー』(2007 日本未公開)でもA・ホプキンスを向こうにまわして
野心家の検事役をシャープに演じていた。これからが楽しみな若手の俳優さんだ。

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この映画、ワンシーン、ワンシーンが妙に長い。
普通ならここでカットかと思うシーンが、そのあと1、2秒、長い時は3秒ぐらい続く。
ま、それが一種独特のリズムを作り出していたのは確か。

監督のニコラス・ウィンディング・レフンはデンマーク出身の人らしいけど、
さて、次回作はどんなものを手がけてくれるだろうか。
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by kiyotayoki | 2012-05-13 22:53 | 映画(た行)

『つばさ』(1927 米)

知らなかったな、こんな映画があったなんて。

今年のアカデミー賞で主要5部門を受賞した『アーティスト』。
サイレント映画が受賞するのは第1回の『つばさ』以来、実に83年ぶりの快挙ということで話題になった。

だけどさ、『つばさ』ってどんな映画だ?
まったく知識がなかったので調べてみたら、これが凄い映画なのです。
何が凄いって、85年も前の映画ながら、戦闘機が空中戦を繰り広げる特撮スペクタクル活劇なんですから。

予告編の映像があったので、ちょっとご覧になってみてください。



出だしの主人公にカメラが寄っていくシーンも、当時としては斬新だったのではないかしらん。
見せ場の空中戦は、なんでも20台をこえるカメラを駆使して撮影されたんだそうな。

お話は、第1次大戦を背景に男の友情と恋のドラマを描いた青春ロマンス的なストーリーらしいんだけど、
これは是非全編観てみたいなぁ。

そうそう、この映画には、まだ新人だったゲーリー・クーパーが見習い飛行士の1人として
1カットだけ登場しているという。
その1カットを見ることができる予告編もあったので、もし良かったら。


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by kiyotayoki | 2012-03-25 13:52 | 映画(た行)

『ドラゴン・タトゥーの女』(2011 米)

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マレーシアを旅行中に、テレビで『ソーシャル・ネットワーク』をやっていたので、
思わず見入ってしまった。特に、オープニングのシーンを。
というのも、この『ドラゴン・タトゥーの女』でパンクなタトゥー女リスベットを演じた
ルーニー・マーラーが“いかにもコンサバなお嬢様女子大生”というまるで違う役柄で
出ていたからだ。

いやあ、さすが女優、変われば変わるもんです。


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原題:『THE GIRL WITH THE DRAGON TATTOO』(158分)
監督:デヴィッド・フィンチャー
原作:スティーグ・ラーソン
脚本:スティーヴン・ザイリアン
音楽:トレント・レズナー アッティカス・ロス
出演:ダニエル・クレイグ
    ルーニー・マーラ
    クリストファー・プラマー
    ステラン・スカルスガルド

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ちょっと見た目には、ハリセンボンの箕輪はるかにも見えてしまうほどの変貌ぶり。
原作は読んでいないけれど、リスベットは「背中にドラゴンのタトゥーを入れた、少年と見紛うような小柄な女性」という設定らしいので、役作りのためにかなりダイエットをしたのではないだろうか。

24歳の凄腕のハッカーであるリスベットは、
その腕を買われて、40年近く前の迷宮入りの失踪事件を調査中のミカエル(D・クレイグ)の助手をつとめることになる。
けれど、その過去や現在置かれている立場は舞台となるスウェーデンの薄暗い白夜の世界のように不透明だ。
原作にも描写はあるのだろうけれど、フィンチャー監督はそんな彼女の人となりをその姿や立ち振る舞いで
表現してくれている。
アシンメトリーな髪形もそうだし、体のあちこちに不規則に穴を空けてつけられているピアスもそう。
そして何か事あるこどに体に刻み入れるタトゥーが、リスベットという、天使的で悪魔的な個性を、充分過ぎるほどあらわしてる。

そんな強烈な個性の上に行動力も持ち合わせた女性だけに、さしものダニエル・クレイグも影が薄くなりがちだったけれど、
なんとか踏みとどまって主役の座を死守したのはさすが。

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お話としては、このまま舞台を日本に移したら横溝正史の世界になってしまうんじゃないかと思うほど、
お話が進めば進むほど名家にまつわる血ぬられた過去がこれでもかと描かれていく。

ややこしいのは、登場人物の名前だ。
例えば、主人公ミカエルの苗字はブルムクヴィストだし。
そのミカエルに仕事を依頼するのはヘンリック・ヴァンゲル(クリストファー・プラマー)。
その弁護士はディレク・フルーデ・・・
と、スウェーデンが舞台だけに聞き慣れない名前ばかり。
だから、前半はその名前や人間関係を把握するだけでひと苦労だった(;^^

それでも2時間半という長丁場でミステリアスな緊張感を緩ませることなく持続させるあたりは、さすがフィンチ監督。
ほろ苦いエンディングも個人的に好印象だった。


そうそう、
ソニー・エンターテイメントの作品なのに、
ふたりが使っているパソコンはそろいもそろってアップル社製。
これ、原作がそうなっているからかしらん???


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by kiyotayoki | 2012-03-07 22:13 | 映画(た行)

『鉄コン筋クリート』(2006 日本)

以前から観てみたかったアニメ映画です。
友人が貸してくれたおかげで観ることがてきた♪


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(111分)
監督:マイケル・アリアス
原作:松本大洋
脚本:アンソニー・ワイントラーブ
音楽:Plaid
声の出演:二宮和也
       蒼井優

エンドロールを見ていてびっくり。
主人公のひとり「シロ」の声は、蒼井優だったんだ!
彼女ってこんな声も出せるんだな。
吹き替えの映画やアニメを観ていて、声を出してる人の顔が浮かぶと
ガッカリしてしまう(例えば『シュレック』の浜ちゃん)のだけれど、
シロの声に関しては、まったくその心配はなかった。というか、蒼井優とはまったく気づかなかった。
それだけ彼女がシロになりきっていたということだろう。
ただ、女性の声なので、映画を見始めてしばらくはシロの性別が男の子か女の子か分からず戸惑ったけれど。

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前から観たかったわりに、予備知識はゼロに近かった(原作の漫画も知らない)ので、
舞台となる混沌とした街“宝町”を鳥瞰図のように空からぐるりと見渡していくオープニングショットから
その独特の映像世界には圧倒的されっぱなしだった。

三丁目の夕日的な懐かしさを醸しつつも、すこぶる非現実的な架空の街「宝町」。
街並みの徹底的な描き込みぶりには、作り手の熱い思いを感じずにはいられない。
そんな街で盗みやカツアゲを働きながらたくましく自活する孤児のクロ(声:二宮和也)とシロ(声:蒼井優)。
そのぶっ飛びぶり(実際ひゅんひゅん飛んじゃう)には地元のヤクザでさえ一目を置くぐくらい。
そんな二人の耳に、宝町再開発のニュースが届く。
それに合わせるように街に不穏な空気が流れ始める中、二人はやがて怪しげなデベロッパーから街を守るための争いに巻き込まれていくという、お話としてはバブル時代を彷彿とさせる内容。
それプラス、神話時代からある普遍的なテーマ、“己の影との戦い”が絡めてあるので、ちょいとばかし辛気くさい(良くいえば深遠な)お話にもなっておりました。
それだけに、「この映画は人を選ぶかもしれないなぁ」と思ったのも確か。

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主人公二人の名前は、シロとクロ。シロは11歳、クロはひとつ上ぐらいか?
孤児の二人が兄弟かどうかも、いつ頃から一緒に暮らし始めたかも不明。
また、二人がなぜヤマカシやスパイダーマンもびっくりの運動能力を持っているのかも不明。
ただ、じっちゃというホームレスのじいさんが、二人のことをよく知っていて、何かというと訳知り顔で秘密を教えてくれる。
二人を見ていたら、『スラムドッグ$ミリオネア』や『シティ・オブ・ゴッド』のスラム育ちの主人公達を連想してしまった。
とにかく生命力はゴキブリ並みに強い。
そのせいかどうか、シロもクロもまだ12歳前後だっていうのに、何十年もこの街に巣くっているように思えるし、
じっちゃの口ぶりからもそう錯覚しちゃうほど。

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光と闇、陰と陽、生と死、非情と情、絶望と希望・・・と、この物語は二元論的なキーワードで形作られている。
主人公の二人からしてそうだ。
心に闇を抱えたクロと、そんなクロを慕い信じ続けるシロ。相反する2つ色は、互いを補完し合い、バランスを保っている。
クロはシロを守っているようで、実は守られている。
後半のクロ自身の心の闇との葛藤、それに呼応するように叫び狂うシロの姿は、
陰陽道の太極図を思い浮かべてしまうほどだった。
宝町という狭い世界のお話なのに、地球的な広がりを感じたのはそのせいもあったかな。


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by kiyotayoki | 2011-08-08 08:58 | 映画(た行)