映画の心理プロファイル

カテゴリ:映画(は行)( 139 )

『バーン・アフター・リーディング』(2008 米)

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原題:『BURN AFTER READING』(96分)
監督・脚本:イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン
音楽:カーター・バーウェル
出演:ジョージ・クルーニー
    フランシス・マクドーマンド
    ジョン・マルコヴィッチ
    ティルダ・スウィントン
    and 
    ブラッド・ピット

久しぶりにコーエン兄弟らしい映画を観たな♪
・・・というのがエンドロールを見ながらの感想でした。

タイトルは直訳すると「読んだあとは焼却せよ」ってなことになるんでしょうか。
CIAに関する極秘情報らしきデータが収められたCDをめぐっての珍妙なお話。
いきなりクアンティコにあるCIA本部が出てくるし、国際的陰謀が絡むシリアスな事件に発展するのかと思いきや、これがなんともはや、下手をすると腰砕けになりそうなドタバタのブラックコメディなのです。
まあ、ポスターの歪(いびつ)な手書き風ロゴを見れば一目瞭然かな(^~^。
愛欲と物欲がもたらす悲喜劇とでもいえばいいのか。
とにかくそんなお話を揃いも揃った大スターたちが嬉々として演じてる。
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特に、ブラッド・ピットは45歳にもなってここまでやるか的なお茶目さんキャラを本当に楽しそうに、またルックスからして年齢を忘れて演じてる(こちらは『ベンジャミン・バトン』と違ってCGで若くしてるわけではないようです^^)。

そんなブラピが、なぜか配役では「and」扱い。
その理由を知りたい方は、ぜひ映画をご覧ください(^^ゞ


その他のキャスト、ジョージ・クルーニーも、コーエン兄弟映画お約束女優フランシス・マクドーマンドも、ジョン・マルコヴィッチも、そしてティルダ・スウィントンも、いかにも“らしい”役柄で登場。
コーエン’s movieのファンなら、大いに楽しめる一編です。
だけど、前作の『ノーカントリー』しか観ていない人だとどうかしらん(^^ゞ
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そうそう、気になった俳優がひとり。
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フランシス・マクドーマンド扮するリンダに秘めた想いを寄せている上司(けれど最後まで報われない)を演じた俳優さん。
リチャード・ジェンキンスという、たまに見かける俳優さんです。

最近どこかでお見かけしたなぁと思っていたら、そうそう、今年のアカデミー賞で主演男優賞にノミネートされていらっしゃったんだね(『扉をたたく人』)。
しみじみと哀愁漂う役柄なだけに、オスカーノミネート俳優がこんな役で、しかもこんな展開に・・・・って、ますますしみじみとしてしまったのでした。
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by kiyotayoki | 2009-04-27 17:36 | 映画(は行)

『ブルー・サンダー』(1984 米)

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原題:『BLUETHUNDER』(109分)
監督:ジョン・バダム
原作・脚本:ダン・オバノン、ドン・ジャコビー
音楽:アーサー・B・ルビンスタイン
出演:ロイ・シャイダー
    ウォーレン・オーツ
    キャンディ・クラーク
    マルコム・マクダウェル
    ダニエル・スターン

それまでにない厳つい外装で、最高時速は320Km♪
操縦士の見た方向へ自動的に照準を合わせる強力ガトリング砲♪
ライフル銃の弾丸ぐらいは軽く跳ね返す装甲♪
静音飛行ができ、赤外線暗視装置まで搭載、壁の向こうも見通せる♪
そんな、男の子ならみんなワクワクしそうなスーパー機能を備えた戦闘ヘリが登場する、当時(1984年)としては画期的な映画がこれ、『ブルーサンダー』だった。

何が画期的かって、その戦闘ヘリがこの映画のために造られたものだったってこと。
しかもミニチュアじゃなく、実際飛行も可能。さすがハリウッド映画だなぁと驚いたもんです。
その外観がこちら。
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このブルーサンダーがF16や別の戦闘ヘリと空中戦を、なんとロスの街中でくり広げちゃう。
それだけでもポイントが高いのに、主演がお気に入りのロイ・シャイダーで、敵役は『時計仕掛けのオレンジ』の片目付け睫毛男マルコム・マクダウェルときた。しかも、好漢ウォーレン・オーツの遺作だと知って、公開初日に映画館にはせ参じたことをいまも覚えてる(^^ゞ。
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シナリオは、なんか消化不良というか、ツッコミどころ満載ではある。
だいたいロス五輪の警備のためとはいえ、こんな物騒な攻撃ヘリを配備する必要がどこに・・・
あ、そういや、どこかの国でも某国のロケット(ミサイル)迎撃のために超高額な武装を配備してたっけ(^^;。

だけど、そんな不満を吹き飛ばすくらいのケレン味たっぷりの映画ではありました。

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今回、見直してみて嬉しかったのは、
エンドタイトルの最後のウォーレン・オーツへの悼詞にスタッフ・キャストの愛が感じられたこと。
普通なら一言ですますところを、こうあったのだ。

for Wallen Oates
with love for all the joy
you gave as   
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by kiyotayoki | 2009-04-20 09:43 | 映画(は行)

『パーフェクト・ワールド』(1993 米)

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原題:『A PERFECT WORLD』(1993 米)
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ジョン・リー・ハンコック
音楽:レニー・ニーハウス
出演:ケヴィン・コスナー
    クリント・イーストウッド
    T・J・ローサー
    ローラ・ダーン

映画って、時をおいて観ると印象ががらりと変わってしまうことがあります。
この映画はまさにそれかな。

初めて観た時は、正直それほどの傑作とは思わなかった。
お話自体は良質だけど、主役のコスナーが役柄に合っていないような気がしたし(お腹もたるんでるし^^;)、主役とほとんど絡まないイーストウッドのシークエンスもなんかモタモタしてるなぁと。

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ところが、今回改めて観てみたら、逆の印象になってしまった。
主役のコスナー、お腹のたるみ具合も含めてこの役柄にぴったりじゃん。
それに、人質にとった8歳の少年との絆の深まり具合や、胸に突き刺さるようなエンディングは深く深く心に刻まれるものだったし。
なのに、重たくならないんだな。ある種の開放感まで覚えさせてくれる。
広い草原で、まるで日光浴をしながら眠っているように見えるコスナーを俯瞰から撮るというアングルを考えたイーストウッド監督に拍手を送りたくなった。

犯人を追うイーストウッドとローラ・ダーンのくだりだって、捨てたもんじゃない。

この作品は、1963年のテキサスを舞台に、刑務所を脱走した男と、やむなくその道連れになってしまった幼い少年との心の絆を描いたヒューマン・ドラマです。
全体を通して描かれるのは、父と息子の不器用すぎる絆探し。

自分自身を振り返ってみても、父親とはどうも素直に絆を確認し合えないところがある。
互いに肩肘張っているというか、見栄や恥じらいがあって、ついつい視線をそらしてしまうし、話していても深いところまで入っていけないし行かない。なぜかよそよそしくなってしまうのです。
自分に似た部分をたくさん持つ相手だけに、妙に意識してしまうのか心に壁をつくってしまってる感じ。
これは年をとってもあまり変わらない。これ、僕だけ?・・・(^^;
母と娘の場合は、ある程度年をとると、心を開いて親友のような関係になれる場合が多いというのに・・・。

映画の中でも、そんな不器用だけど互いを求めてやまない父と息子の気持ちが描かれていて、
それが痛いほどこちらに伝わってくる。
なのに、映画が公開されてからもう15年も経つというのに、僕と親父との心の距離は相変わらずだ。
だからこそ、この映画がこんなに心に染みたんだろうな。

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ところで、映画の途中まではパンツ姿、そして後半ではお化けのキャスパーのコスプレ(?)姿が健気で可愛かったフィリップ少年。それを演じたT・J・ローサー君のその後が気になって調べてみた。
だけど、ほとんど目立ったキャリアがないんだよね。
今、どうしてるんだろ。

T・J・ローサー君の近影
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by kiyotayoki | 2009-03-25 10:24 | 映画(は行)

『ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー』(2008 米)

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原題:『HELLBOY Ⅱ:THE GOLDEN ARMY』
(119分)
監督・脚本:ギレルモ・デル・トロ
原作:マイク・ミニョーラ
音楽:ダニー・エルフマン
出演:ロン・パールマン
    セルマ・ブレア
    ダグ・ジョーンズ

客の入りが今ひとつと聞いていたので心配していたけれど、観に行った日が映画サービスデーで、しかも日曜日だったせいもあってか、劇場内は8割方埋まっておりました♪

『メン・イン・ブラック』がアウタースペースの監視役なら、このヘルボーイはインナースペースの監視役といったところだろうか。
デル・トロ監督得意の不気味なクリーチャーがうじゃうじゃ出てくる怪作でありました。
一作目よりダークなムードが抑え気味で軽快感もあったので、こっちのほうが一般ウケするんじゃないだろうか(前作の『パンズ・ラビリンス』がめいっぱいダークだったので、監督、その反動もあったかしらん・・・)。

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パート2ともなると、ロン・パールマン扮するヘルボーイ(愛称レッド)の異形ぶりにもずいぶんと慣れ、水棲人間エイブとのパートナーシップもより強固に、そして、恋人リズとの仲は同棲するまでに発展しており、ファンとしてはニンマリ。

だけど、葛藤は引き続きある。
超常現象捜査防衛局(BPRD)の腕利きエージェントとして組織内部では一目を置かれているものの、一般にはその存在さえ秘密にされている。
目立ちたがり屋のレッドはそれが面白くない。だから人目につくようなことを平気でやるんだが、容貌が容貌なだけに助けた人間には怪物扱いされてしまう。しかも、マスコミには日本の侍みたいな髪型を「頭に便座をつけてる(!)」と揶揄される始末。

それに、同棲はしているものの、女心のわからないレッドは不満を訴えるリズの気持ちを測りかねて悩んでしまう。ヘルボーイ、人間以上に人間くさいヤツなのだ(笑;)。

そんなヘルボーイたちの今回の敵は、エルフ族のヌアダ王子。その強欲さで自然の王国を破壊した人間を憎み滅ぼそうと企む王子は、そのためにエルフ族の王が封印した最強の鋼鉄兵団“ゴールデン・アーミー”を蘇らせようとする。
それを知ったヘルボーイたちは、人類を守るためその恐るべき計画の阻止に立ち上がる・・・といった筋立て。

全体的にコメディタッチなつくりになっていたけれど、もし続編ができるとすると、パートⅢはパートⅠよりもっとハードでダークなお話になりそうな気配。
というのも、遠くない将来、ヘルボーイが人類を破滅に追い込みかねない存在になることが、このパートⅡの中で明らかにされているからなんですが・・・・

さて、パートⅢはいつ頃公開されるんだろ。
デル・トロ監督の次回作は『ホビットの冒険』らしいから、何年か先の話になりそう。

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だけどね、まだまだ若いと思っていたロン・パールマン、もう58歳なんだね。還暦も間近だ。
デル・トロ監督、もし続編を作るつもりなら、パールマンが「体力の限界」を理由に主演を辞退する前に是非お願いしたいな。
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by kiyotayoki | 2009-02-04 22:08 | 映画(は行)

『ホルテンさんのはじめての冒険』(2007 ノルウェー)

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原題:『O' HORTEN』(90分)
監督・脚本:ベント・ハーメル
音楽:
出演:ボード・オーヴェ
    ギタ・ナービュ
    ビョルン・フローバルグ
    モリー

不思議な味わいの映画を、試写会で観た。
『ホルテンさんのはじめての冒険』という可愛らしいタイトルのついた
ノルウェーの映画である。
ノルウェー映画といって思い出すのは人形アニメの
『ピンチクリフ・グランプリ』(1975)ぐらい。まったくの未知の国だ。
恥ずかしながら王国だってことも知らなかった。
でも、知らないってことは、興味がわくということでもある。
さて、未知の国の人はどんな映画を作るのか、興味津々でスクリーンに見入った90分だった。

主人公は、ノルウェー鉄道の機関士として40年間、真面目に勤め上げ、数日後に定年を迎えるオッド・ホルテンさん。
驚いたのは、その年齢。67歳だって!かの国では67まで現役で働けるんだね。
でも考えたら、長寿・少子化の時代、60代はお爺ちゃんお婆ちゃんとは呼べない位まだ若いし。
あちらのシステムのほうが理にかなっているんじゃないかしらん。

謹厳実直を絵に描いたようなホルテンさん。常時パイプを薫らし、煙を出して歩くので、旧式の蒸気機関車みたいにも見える人。長身で肩幅もあり、ものに動じない風格もある。
だけど見ていくうちに、この人かなりの不思議ちゃんで、しかも小心者でもあることが判明する。

まず、厄介なことが起きると、その場から逃げ出す癖があるのです。
定年退職を迎えた朝、ひょんなことから人生初の遅刻をし、運転するはずの列車に乗れなかったときがそう。
駅にかけつけたホルテンさん、ホームに同僚の姿を見つけた途端、スタコラと逃げ出したのだ。
しかも、そのあとは家に引きこもって、鉄道会社からの電話にも一切出ない。
あららら、ホルテンさん、こんな人だったの・・・。さすが未知の国の映画は人物設定もユニークだ。

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どうやらホルテンさん、人間関係を築くのが苦手な人のようなのだ。
とにかく口が重い。この歳で独身だし、家で飼っている生き物といえば小鳥だけ。
趣味のパイブだって、口にくわえていればしゃべらなくてすむ口実になるからかも。
ヨットという意外な趣味もあるけれど、それもよく考えれば海でならひとりになれるからなのかもね。
ホルテンさんがいくらか積極的に喋るのは、定宿としているホテルの女主人と、痴呆症の母親と相対しているときだけ。

だけど、決して人間嫌いじゃないんだな。自分の関心のあることや人となら、わりと積極的に交流を持つ。
しかも、妙に行動力もあって、自分の目的を達成するためなら入っちゃいけないところ(空港の滑走路や深夜のプールや他人の家)にも平気で入り込む。
そのせいで、空港じゃ警備員に捕まっちゃうし、プールじゃ靴をなくしたために女性物のハイヒールを履くはめになっちゃうし、他人の家からはなかなか出られなくて初遅刻の原因になっちゃう。
このあたりのエピソードは、Mr.ビーンの20年後を見ているような心持ちでありました。
そう、この映画、ユーモアがあちころちにちりばめられたコメディなのです。

なのに、劇場内の笑い声が控えめなのは、そのユーモアが押しつけがましくないせいなのかも。
これ見よがしに「ここ、笑いどころですよっ」と押しつけてこないのだ。このあたりの慎み深さも国民性なのかな。

見たところ、こんなホルテンさんが40年もの間、謹厳実直に大過なく仕事をまっとうできたのは、ひたすらレールの上を走るだけという職業のおかげだったのかもしれない。
けど、その仕事はなくなった。ということは、これからはレールから外れた生活をするということ。
ホルテンさんの人生が脱輪していくのは必然だったのかも。

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さて、そんなホルテンさんの唯一の心残りは、冒険心を封印してきたこと。
ホルテンさんの母親は冒険心あふれる人で、若い頃は女性スキージャンパーの草分け的存在として名を馳せた人だったようだ。
なのに恐がりなホルテンさんは、スキージャンプとは無縁の生活を送ってきた。
そんな自分が情けないホルテンさんだったのだけれど、ある人の一言がホルテンさんに一歩踏み出す勇気を与えることになります。

その言葉とは・・・

「人生は手遅ればかりだが、逆に考えれば何でも間に合うということだ」


この言葉に力を得、あることを実践するためにホルテンさんがとった行動は・・・・
いやあ、ちょっと「オヨヨ」な驚きがありました(^^ゞ。
どんな風に「オヨヨ」なのかは、ぜひご自分の目で。


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ちなみに、映画のポスターでホルテンさんが抱きかかえている犬の名前はモリー。
エンドロールを見たら、本名もモリーでした(^~^ゞ
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by kiyotayoki | 2009-01-30 19:42 | 映画(は行)

『プルートで朝食を』(2005 愛・英)

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原題:『BREAKFAST ON PLUTO』(127分)
監督・脚本:ニール・ジョーダン
原作・脚本:パトリック・マッケーブ
音楽:アンナ・ジョーダン
出演:キリアン・マーフィ
    リーアム・ニーソン
    ルース・ネッガ
    ローレンス・キンラン
    スティーヴン・レイ

随分前に録画していた作品。
ここんところ英国映画づいているので、その勢いを力にやっと鑑賞。面白かった♪
実のところ、キリアン・マーフィーのきれいだけれどちょっと病的にも見える顔が苦手で、観るのを後回しにしていたのだけれど、いやいやなんの、お話が進むにつれ彼の顔がどんどんキュートに見えてきたのでした。

不思議なタイトルだなと思っていたけれど、
プルートって、ギリシャ神話で冥界の王とされる神様で、冥王星につけられた名前なんだね。
でも、冥王星って惑星の仲間から外されて準惑星になった天体だよね。
この映画が作られた頃はまだ惑星だったと思うけれど、
惑星から仲間はずれにされちゃった冥王星って、まさにこの映画の主人公を言い表しているようで、余計に意味深&象徴的なタイトルなってしまった感じだ。

というのも、主人公パトリック・“キトゥン”・ブレイデンは、ゲイだから。
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主人公がゲイで、監督がニール・ジョーダンとくれば、すぐに思い出すのは『クライング・ゲーム』だけれど、主人公の置かれた状況は『クライング・ゲーム』のそれより過酷と思える。キトゥンが生まれたのは紛争まっただ中のアイルランドなのだから。

国が紛争や戦時体制にあると、中途半端は許されない。白か黒か。敵か味方か。はっきりさせなきゃならないし、それを強いられる。
なのに主人公は、男と女の境さえはっきりしないゲイなのだ。
ただでさえゲイの生きづらい時代(70年代?)だったのだから、キトゥンの人生がイバラの道になるであろうことは想像するに難くない。
実際、キトゥンの身には幾多の苦難がふりかかる。

・・・なあんて風に書くと、悲惨で暗~いお話かと思うかもしれませんが、
あにはからんや、この作品、コメディタッチなのです。しかもファンタジー仕立てにもなってる。
赤ちゃんの頃捨てられた性同一性障害のキトゥンの少年期からの波乱の人生が36章にわけられて軽快なテンポで綴られてく。
単純計算で、ひとつのチャプターにつき平均3分半!テンポがいいわけだ。
しかも、各章が盛りだくさんの70年代ポップスで彩られていて、音楽を聴いているだけで楽しくなっちゃう。
音楽に関しては、ジョーダン監督自らが選曲にあたったそうだ(作曲に名のあるアンナ・ジョーダンは監督の孫で、ピアノ曲を作って提供したんだそうな)。

キトゥンは、どんなに悲惨な状況下であっても、明るさを忘れず、自分に正直に生きていく。
そんなキトゥンにまわりも感化されて、つい手を差し伸べたくなってしまう。
そんな人と人のつながりを、時にシリアスに、時にハートフルに紡ぎ上げたジョーダン監督の力量に脱帽。
未見の方には、おすすめの一作です。



予告編のバックに流れる曲は、この映画の中でも使われている「風のささやき」。
映画『華麗なる賭け』のテーマ曲です。
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by kiyotayoki | 2009-01-21 12:09 | 映画(は行)

『バンク・ジョブ』(2008 英)

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原題:『THE BANK JOB』(110分)
監督:ロジャー・ドナルドソン
脚本:ディック・クレメント
    イアン・ラ・フレネ 
音楽:J・ピーター・ロビンソン
出演:ジェイソン・ステイサム
    サフロン・バロウズ
    リチャード・リンターン
    デヴィッド・スーシェ 

今年、最後の“映画館で観る映画”はコレにしました。
劇場は、新宿駅東口のそばにあるお久しぶりの新宿武蔵野館。
3階フロアにミニシアターが3つ。そのうちの84席しかない小さな劇場で鑑賞。

灯りが落とされて予告が始まるかと思いきや、おおおっ!
スクリーンに映し出されたのは、地元飲食店の超ローカルなCMじゃありませんか。
な、懐かしや~。
今どきこんな、16mフィルムでても撮ったような古めかしいコマーシャルを流す映画館がまだ存在していたんだぁ。
劇場の設備が古めかしいこともあって、一瞬、1970年代あたりにタイムスリップしたかと思っちゃったほど(^~^;。
ま、映画のほうも1970年代初頭が舞台なので、その導入としてはピッタリな演出(?)ではあったのだけれど。

というわけで、本題。
本作は実際に起きた事件を元に映像化されたものだそうだ。
勿論かなりの部分、脚色が加えられているだろうけれど、
基本となる英国史上最大規模の被害額を出したという銀行強奪事件は1971年に現実に起こったもの。
銀行の地下貸し金庫にトンネルを掘って忍び込むというあまりにも大胆な手口に人々が驚き、
国中が事件の本格的捜査の成り行きを固唾を飲んで見守った。
ところが、事件は意外な展開をみせる。数日後、事件そのものの報道がぴたりと途絶え、
警察も沈黙、事件はそのまま迷宮入りしちゃったという。
なぜ?
その“なぜ”が次々につまびらかにされていくのだから、面白くならないわけがない?

実際、面白かった。
特に後半、お話がテンポアップしてからは、導入部の眠気がいっぺんに吹っ飛んだ。
実のところ導入部は、忘年会疲れと、登場人物が多くて人間関係が複雑だったことが相まって、睡魔に抗うのに苦労しておったのですが(^~^;。

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実際、登場人物が多いんです、この映画。
まず、銀行強盗を働くステイサム扮する主人公テリーの一味が7人いるでしょ。
で、それを裏から手引きする政府の秘密情報組織MI5だかMI6だかの連中がいる。
それにプラスして、目当ての地下貸金庫に表沙汰にできないものを預けているワケありの連中がわんさかいる。
そのため、テリーたちは思いも寄らぬ“秘密”を手にしてしまい、おかげでいろんな連中から命を狙われるハメになっちゃうんですが・・・・。
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そのワケあり連中の一人で、悪徳警官に渡す袖の下を記録した帳簿を貸金庫に預けている裏社会のボスは、おお、英国製のTVドラマ『名探偵ポワロ』でお馴染みのデヴィッド・スーシェじゃありませんか。

そうそう、映画の中に「似てるけど、まさかあの人じゃないよねぇ」という人が登場していたんだけど、帰って調べてみたら、その「まさか」が当たっていたのでビックリでした。
そのまさかの人の正体は、ミック・ジャガー!!!
ステージ上の彼を見慣れている人だと、「エーッ!この役の、この人がぁ?!」と、唖然としてしまうかもしれません。とにかく、そういう役で出てらっしゃった(^^ゞ。

この映画の特徴のひとつは、1971年という時代背景。
1971年のロンドンが舞台だから、風物やファッションも当時の雰囲気が再現されてる。
銀行の防犯体制も1971年の頃のものだから、つけ入るスキはいっぱい。
だから、素人に毛が生えたようなテリーたちでも仕事ができたのでありましょう。
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そうそう、貸金庫に表沙汰にできないものを預けている連中の筆頭株がこちらの黒人。
マルコムXならぬマイケルXという謎の政治活動家なんだけど、その隣に写ってる2人、誰かに似てると思いませんか(特にメガネの方)。
そう、LOVE&PEACEのあの有名なお二人です。
これ実話が元になっているので、マイケルXとお二人は、何か関わりがあったんでしょうね、きっと(^~^。
そんな風に、ストーリーとは関係ない部分でも、いろいろ楽しめる映画になっておりました。

で、肝心の“なぜ事件は迷宮入りしちゃったか”なんですが、
それはココでは書けませんよね、やっぱり。
是非、ご自分の目で、劇場かDVDでお確かめください♪

この映画のステイサム、アクションは控えめだったけど、相変わらず渋カッコ良かったですしね(^^
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by kiyotayoki | 2008-12-30 11:20 | 映画(は行)

『ヴェラクルス』(1954 米)

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原題:『VERA CRUZ』(94分)
監督:ロバート・アルドリッチ
原作:ボーデン・チェイス
脚本:ローランド・キビー他
音楽:ヒューゴ・フリードホーファー
出演:ゲイリー・クーパー
    バート・ランカスター
    シーザー・ロメロ
   
ちゃんと観たの、初めてだったかも。
1954年に制作された映画とは思えないほど、テンポが良くキレも抜群にいい西部劇です。
アクションに次ぐアクション、裏切りに次ぐ裏切り、飛び交う銃弾や火薬の量もハンパじゃない。
その分、映画としての深みとか人物の描写面で欠けてる部分はあるんだろうけど、そんなものはどこ吹く風。面白けりゃいいじゃん精神で押し通した作品。
さ~すがアルドリッチ監督!

舞台は、南北戦争直後のメキシコ。
米国の内戦、南北戦争が起こったのは、1861年~1865年。
それが終結して、あり余った武器や艦船の一部が日本に運ばれ、
日本の内戦(戊辰戦争など)に使われたことは知られているけれど、メキシコも日本と似たような状況だったんだね。
しかも、メキシコの場合は内戦が終わって行き場を失ったアメリカの荒くれどもが一攫千金を夢見てわんさか入り込んできた模様。
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ゲイリー・クーパー扮する南軍の元大佐や、バート・ランカスター扮するならず者や
その手下たちが国境を越えてきた目的も同じく一攫千金だった。

元大佐トレーンとならず者エリンの共通点はもうひとつ、腕利きのガンマンであること。
違いは、エリンがガンマンとしての名をあげたいという欲求があったのに対して、元大佐トレーンの場合はガンマンとしての名前より戦争で失ってしまったプライドを取り戻したいという欲求のほうが強いというところか。
その違いが、結局は名うてのガンマン同士の決闘という結末につながっていくのだろうけれど。

残念だったのは、個性むき出し、歯むき出しのバート・ランカスターに比べて、主役のゲイリー・クーパーがくたびれて見えたこと。
もう60を過ぎた頃の作品なのかなと思ったら、まだ53歳(撮影時は52?)じゃないの。それにしては老いを感じるんだなぁ。2年前に『真昼の決闘』でオスカーをとって、安心しちゃったんだろうか。
ランカスターが男盛りの年齢(40歳)だけに、クーパーの老いが目立つ作品になっちゃったのは惜しまれるところ。
凶暴かつ野獣を思わせるランカスターを見ていたら、黒澤映画『用心棒』(1961)で短銃使いのやくざを演じた仲代達矢を思い出した。きっとすごい影響を与えたんじゃないだろうか。

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お話は、マキシミリアン皇帝に雇われたクーパーたちが、貴婦人を乗せた馬車(床下に300万ドルの金貨が隠されている)を護衛してメキシコシティ(たぶん)からヴェラクルスの港まで護衛の旅に出るというもの。
手下の中には、アルドリッチ監督作品の常連アーネスト・ボーグナインの顔も見えるし、若き日のチャールズ・ブロンソンもいる(当時は、ブキンスキーって芸名だったんだね)。

映像的に面白かったのは、途中でアステカ文明の古代遺跡(ピラミッド)の脇を通ること。地図を見たら、確かにルートのそば(★)にテオティワカンの遺跡群がある。
ちゃんと現地ロケを敢行したんだね。

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銃撃戦のハイライトは、ガトリング砲の乱れ撃ち。
当時としては新兵器であるこの機銃も南北戦争の遺物なんだろうな。

戊辰戦争で、河井継之助率いる長岡藩が多勢の官軍に一矢報いるために使ったのもガトリング砲だったけれど、それも南北戦争で使われたお古だったらしいし。

ちなみに、『ワイルドバンチ』に出てきたのもガトリング砲かと思ったら、あれはブローニング・マシンガンという機関銃なんだそうです(^へ^ゞ。
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by kiyotayoki | 2008-12-14 22:29 | 映画(は行)

『ブラインドネス』(2008 日本・ブラジル・カナダ)

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原題:『BLINDNESS』(121分)
監督:フェルナンド・メイレレス
原作:ジョゼ・サラマーゴ『白の闇』
脚本:ドン・マッケラー
音楽:マルコ・アントニオ・ギマランイス
出演:ジュリアン・ムーア
    マーク・ラファロ
    アリシー・ブラガ
    伊勢谷友介
    木村佳乃
    ガエル・ガルシア・ベルナル

『シティ・オブ・ゴッド』(2002)、『ナイロビの蜂』(2005)などで、人間の愚かさ、恐ろしさ、グロテスクさを容赦なくスクリーンに映し出してきたブラジル人監督フェルナンド・メイレレスの最新作を観た。

今回の作品は、架空の都市を舞台に、住民たちが突然視力を失う原因不明の伝染病に襲われるという怖いミステリー。

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何が怖いって、目が見えなくなる恐怖って、とっても身近なことだから。
自分の身体をスキャンしてみて、最も老化というか傷みが激しいのは目だものなぁ(^^;。
仕事が忙しくてパソコンを見つめる時間が長いと、白内障じゃないかと思うほど視界に膜がかかる。だから、この話の“視界が真っ白くなってしまうという伝染病”はリアリティがありすぎる~っのだ(>_<)

最初に視力を失うのは、伊勢谷友介扮する日本人の若者。
彼は叫ぶ。「まるでミルクの海の中にいるようだ」、と・・・。
その妻を木村佳乃が演じてる。彼女は帰国子女だと聞いたことがあるから、英語はお手のもなのかな。
キャストもスタッフもワールドワイドです。

2人は、マーク・ラファロ演じる眼科医の元を訪ねる。けれど、診た者も付き添った者も次々に失明していく。
接触感染なのか?
奇病の伝染を恐れた政府は、眼科医を始めとする患者たちを、まとめて廃墟となった精神病院に隔離してしまう。
けれど、奇病の感染力はすこぶる強く、最初の感染者が出てから数日のうちに数百人単位に患者は膨れ上がり、すし詰めになった病院の環境は一気に悪化する。
なのに政府は感染をおそれて医者も介護者さえつけてくれない。隔離して食料を配給するだけ。しかも、逃亡者が出ないように銃を携帯する兵士に施設を見張らせ、逃げ出そうとする者は容赦なく射殺してしまう。
こうして、隔離施設はアウシュビッツ並みの強制収容所と化してしまうのだった・・・・。

極限状態の中、飢えて汚穢にまみれたとき、人間は何処まで人間としての尊厳を保てるのか、
また、どこまで愚かしく残虐になってしまうのか・・・。

不安と恐怖に苛まれる患者たちにとって唯一の希望となりそうなのは、
ただ一人、目が見える眼科医の妻(ジュリアン・ムーア)なのだけれど、
その希望もしぼんでしまいそうな事態が次々に、絶望度を高めつつ彼らを襲う。
それを、メイレレス監督はドキュメンタリータッチで生々しく描いていくのだけれど、
今回のは“絶望度を高めつつ”の部分がちょっと端折り気味だったかもしれないな。

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主演のジュリアン・ムーアは、昨日(12月3日)が誕生日だったんだね。
40代も後半になると息切れする女優が多い中、彼女はこの映画でも体張って頑張ってますよ♪
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by kiyotayoki | 2008-12-04 08:34 | 映画(は行)

『ホットロック』(1971 米)

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原題:『THE HOT ROCK』(105分)
監督:ピーター・イエーツ
原作:ドナルド・E・ウェストレイク
脚本:ウィリアム・ゴールドマン
音楽:クインシー・ジョーンズ
出演:ロバート・レッドフォード
    ジョージ・シーガル
    ゼロ・モステル

「アフガニスタンバナナスタンド」

映画の中に登場する早口言葉か呪文みたいなこの言葉、
だいぶ前に観たっきりだったので、うろ覚えだったけれど、
こんなリズミカルな音だったんだな。

この言葉が、後半、重要な役割を果たす軽快で楽しいクライム・ムービーです。
 
原作は、ユーモアミステリの巨匠ドナルド・E・ウェストレイク。
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彼が生み出した頭脳明晰だけど運の悪い泥棒ドートマンダーが活躍するシリーズの、これは1作目なのかな。ウェストレイク自身は、ドートマンダー役にはハリー・ディーン・スタントンを望んでいたらしいんだけど、映画会社は『明日に向かって撃て!』(1969)あたりから快進撃を続けていたロバート・レッドフォードに白羽の矢を立てた。
スタントンも好きな役者さんだけど、映画としては随分違ったテイストになってただろうな(^^ゞ
・・・・ていうか、派手な銃撃戦とかがある映画じゃないし、日本で公開されていたかどうか(^^;

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お話は、ドートマンダーをリーダーとする4人組がアフリカの小国の大使から依頼を受け、博物館から小石ほどもあるダイヤモンドを盗み出すことになるんだけれど・・・
ちょっとしたミスから計画は破綻する。
ドジった一人がダイヤを呑み込んだまま逮捕されたのだ。
そのため今度は刑務所に潜入して、その仲間を奪還することになるんだけど、
それが成功してもダイヤは手に入らない。ダイヤは逮捕された時に連行された警察署に隠されていたことが判明したからだ。
白昼堂々、ヘリで警察署の屋上に降り立つ4人。
ところが、隠した場所にダイヤがない!なぜ?
・・・・と、ダイヤを追って二転三転するストーリーに加えて、レッドフォードをはじめとする愉快なキャラクターたちが笑い楽しませてくれる。

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仲間の一人の父親役ゼロ・モステルの快演ぶりも忘れられない。
ダイヤを横取りして息子を犠牲にしても平気な強欲ぶりも見事だけど、それに対する息子の怒りの言葉が「パパ、日曜日の朝食をもう一緒に食べないからね」ってのも笑える。

途中、NYの摩天楼上空をヘリコプターで飛び回るシーンがある。
眼下に広がる1971年のマンハッタンの風景に、オオッ!
すっくとそびえ立つ見慣れた2本の高層ビル。国際貿易センタービルだ。
でも片方はまだ上部が工事中。完成したのは翌年の1972年だものね。
映画は現代建築史を学べる教科書でもあるんだね。

ラストも小気味いい。
当時の映画は、犯罪は割が合わないという結論で終わるのが当たり前だったんだけど、
この映画はいい意味でそれを裏切ってくれた。
それもこの映画が今でも強く印象に残ってる理由のひとつだろうな(^~^

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       この画像の背後に写ってるパンナムビルも、今はメットライフビルっていうんだってね。

最近とんとご無沙汰のジョージ・シーガルについて
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by kiyotayoki | 2008-11-22 18:53 | 映画(は行)