映画の心理プロファイル

カテゴリ:映画(や行)( 10 )

『八日目の蝉』(2011 日)

寝る前にNHKのニュースでもと思ってテレビをつけたら、
やっていたのはテレビ版『八日目の蝉』(再放送)だった。
それも最終話だというので寝るに寝られなくなってしまった。
だって、つい数時間前に映画版を観てきたばかりだったんだもの。

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(147分)
監督:成島出
原作:角田光代
脚本:奥寺佐渡子
音楽:安川午朗
出演:井上真央
   永作博美
   小池栄子

テレビ版の『八日目の蝉』をとても興味深く観た。
配役はもちろん、テイストもストーリー展開も映画版とはかなり違ったものだったからだ。
最終話しか観ていないので安易な比較はできないけれど、
物語のまとめ方ひとつをとっても映画版のほうが優れていると思ったな。

なにより映画のほうは、終わり方がいい。
日本映画というと、感動の押し売りというか、ことさらに情緒的シーンを延々と長引かせるものが多い。
日本映画をあまり観ないのは、それにうんざりするからでもある。
ところがこの映画ときたら、主人公のひとりである恵理菜(井上真央)の慟哭シーンで潔いほどプツリと終わる。
日本映画に親しんでいる人だったら、「ええっ、ここで終わるの?もっと感動していたいのにィ」
そう思ってしまいそうなほどだ。
だけど、ご安心を。この映画ではそういう人のためにもちゃんと配慮がなされているのです。
最後のシーンからエンドロールが始まるまでの数秒間(5、6秒?)スクリーンが真っ暗なままになるのだ。
そこで余韻を感じてほしい、味わってほしいとの作り手の意図を感じたのは僕だけではなかったはず。

歳をとると涙もろくなるというのを差し引いても、この映画は涙を禁じ得なかった。
母なるもの、母性というものの強さ・偉大さをこれほどまでに心に強く訴えてくる映画は滅多にないと思えたから。

脚本の妙というのもあったと思う。
いきなりスクリーンに映し出されるのは、
不倫相手の妻が産んだ赤ん坊をさらった希和子(永作博美)が法廷で裁きを受ける場面だ。
その後は、4歳で両親の元に戻ってきた娘が成長して大学生になった【現在】と、
希和子がさらった赤ん坊と必死の逃亡・漂流を繰り広げる【過去】がカットバックされ
交互に描かれていくことで緊張感が持続されていく。

もっと過酷な状況に希和子に追い込みたいのなら、戸籍や健康保険証などが必要となる状況を作り出すことも考えられたけど、
それをしなかったのは小説と違って時間的制約があったからかな?
それよりも、自然豊かな小豆島での母子の日々を丹念に描くことのほうが重要と、作り手は判断したのかもしれない。

役者もよかった。
永作博美(童顔なので年齢不詳だけど、もう40歳になるそうだ)はもちろんだけど、
戻ってきた娘に違和感を覚え、正常な親子関係を築けないでいる実母を演じた森口瑤子は
『チェンジリング』のアンジェリーナ・ジョリーを思い出させたし、
自分らしい生き方を見いだせないでいる娘を演じた井上真央も、
その娘にまとわりつくことで自らのアイデンティティを見出そうとするルポライターを演じた小池栄子も皆それぞれに共感できた。
そして、情けない男たちを演じた2人の男優陣にも(男の言い訳はいつもワンパターンです^^;)。


そうそう、ほんの一瞬だったけど、
母に抱っこされていた懐かしくも遠く幼ない頃をうっすらと思い出せたのも収穫だったかな。


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by kiyotayoki | 2011-06-03 10:15 | 映画(や行)

『容疑者Xの献身』(2008 日)

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この映画を観た後、記事を書くためにポスターを探してみて驚いた。

「えっ、こんなポスターだったの?」

あまりにも映画の印象と違うポスターに面食らってしまったのです。
映画の内容と比べると、なんとも軽い。なんとも脳天気。
たまたま見つけた韓国のポスター(右)のほうが、よほど作品の雰囲気が醸し出されてる。

これって、やっぱり制作者側の思惑が反映してるんだろうな。
この映画、テレビでやっていたドラマ『ガリレオ』の劇場版なのだけれど、
その手の映画にしては珍しくよくできていた。というか、珍しく映画として独立していた。
原作は読んでいないのだけれど、きっと原作に近づけようという努力がなされたのだろう。
それだけに、何回か見たことのあるTVドラマのテイストとはかなり違っていた。
だけどそれは制作サイドとしては困ることでもあったんだろうね。
だって、『ガリレオ』のファンから拒否反応が出るかもしれないから。
ドラマのファンを是非とも動員したい制作サイドとしては、せめてポスターはTVドラマのテイストを残したかったんだろう。だからこんな軽い感じのものになっちゃったんじゃないかな。

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監督:西谷 弘  (128分)
原作:東野圭吾
脚本:福田 靖
音楽:福山雅治他
出演:福山雅治
    柴崎コウ
    堤 真一
    松雪泰子
 
風采の上がらない高校の数学教師・石神哲哉は、ある夜、不審な物音を聞く。
アパートの隣室に住む花岡靖子とその娘・美里の部屋で何か異常なことが起きたらしい。
意を決した石神は、花岡靖子の部屋のドアをノックする。

朝、隅田川の河川敷で男の惨殺死体が発見される。
捜査に乗り出す警視庁捜査一課刑事・草薙俊平(北村一輝 )。
やがて、捜査線上に被害者の元妻・花岡靖子が浮かび上がる。

草薙刑事は大学時代の友人で、帝都大学理学部物理学科の准教授・湯川学に協力を求める。
冷静沈着な湯川が顔色を変えたのは、靖子の隣室に住む男の名前を聞いた時だった。
石神哲哉。それは湯川の大学時代の友人、そして、湯川が出会った中で最高の頭脳を持つ男だったのだ・・・。


原作はベストセラーで、映画も大ヒットした作品だから、まあ、書いてもいいか。
ストーリーをひと言で表すと、愛する人を守るため自分を犠牲にする数学教師のお話です。
それだけに主客逆転というか、映画の主役がガリレオ福山と新米刑事・柴崎の2人から、数学教師(堤真一)とその献身を受ける靖子(松雪泰子)に完全に入れ替わっちゃってる。
ここまで主役をないがしろにしたTVドラマの映画板が今まであったかしらん。
特に、柴崎コウの影は薄かったかな。

逆に言うと、そう思わせるほど大胆な演出と堤真一と松雪泰子の演技が良かったってこと。
それがTVドラマの映画版という呪縛を解き放つ原動力になっていた。
前半は謎とサスペンスを前面に押し出して見る側を引き付けておいて、後半は人間ドラマの切なさが胸に迫ってくる・・・・。なかなか楽しめました。

ひとつ、疑問だったのは、花岡泰子の娘・美里の扱い方。
自らを犠牲にしてまでも完全犯罪を目論んだ石神だったけれど、
その緻密な計画が破綻するのはこの美里が原因になるんじゃないかと想像してた。
殺人という事実と記憶は、女子中学生の心の中に収めておくには重たすぎるから。
だけど、ストーリーはそんな彼女の心の内を描くことなく終わっちゃった。
そこが不満といえば不満。原作はその辺り、どう処理していたんだろう。
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by kiyotayoki | 2009-08-13 11:07 | 映画(や行)

やわらかい手(2007 ベルギー・ルクセンブルク・イギリス・ドイツ・フランス)

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原題:『IRINA PALM』(103分)
監督:サム・ガルバルスキ
原案・脚本:フィリップ・ブラスバン
音楽:ギンズ
出演:マリアンヌ・フェイスフル
    ミキ・マノイロヴィッチ
    ケヴィン・ビショップ
    シヴォーン・ヒューレット


世界同時株安、大量解雇、派遣切り・・・と、100年に一度といわれる大不況できりもみ状態の日本だけれど、英国の特に労働者階級を描いた映画を観ると、失礼かもしれないけど、ちょっとだけホッとする。
『フルモンティ』にしろ『リトルダンサー』にしろ、去年秋に観たケン・ローチ監督の『この自由な世界で』にしろ、どの作品もどっぷり不況に漬かった世界とそこで懸命に暮らす人々の姿が描かれてる。さすが斜陽先進国、不況が板に付いてるというか・・・(^^;。

この作品も、クリスマスシーズンとは思えないほどロンドンの風景は空も街も陰鬱そのもの。
職探しのために寒空の中、厚着をし首を縮めてとぼとぼ歩く主人公マギーの姿も物悲しさが漂っている。

あ、今の今まで気づかなかったけど、これ、クリスマスの小さな奇跡の物語だったのかな?

還暦をとっくに過ぎたマギーが、なぜ職探しをしているのかといえば、孫の治療費を捻出するため。ひとり息子の孫オリーは難病に罹っており、命を長らえさせるためには海外での高額な治療を受けさせる必要がある。
けれど、これまでの治療費で家まで手放していて、銀行で渡航費を借りようにも担保も収入もないので、サンタの帽子をかぶった銀行員には門前払いを食らう始末。
街のショボいクリスマスイルミネーション同様、現実はキビシ~っのです。

途方に暮れたマギーが見つけたのは、表向きは「接客」というかなり特殊な風俗業。
面接を受けたマギーは、オーナーであるミキ(男です^^)の説明に唖然としてしまいます。
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だって、その接客で彼女が客と接するのは手だけなんですから。
壁を隔てているので、顔を合わせることは全くない。
ならば楽?いやそれがその・・・お客が穴から彼女の手に差し出すのは、おのが男性自身、なのです。
手の動かし方さえ熟練すれば、誰でもできる仕事。年齢関係なし。だからこそマギーは面接を受けられたのでした。
そういえば、若き日のクリント・イーストウッドの主演作『マンハッタン無宿』にも、お婆さんたちが大勢でキスマークを封筒に入れて郵送するバイトをしてるシーンがあった。それをもらって大喜びしてる客が五万といたわけだ。
知恵と才覚さえあれば、年寄りにだってできる仕事はいくらでも作り出せるんだね(^^。

思い悩んだものの、結局マギーは可愛い孫のためと覚悟を決め、この怪しい世界に足を踏み入れることになる。
ひとつ幸運だったのは、マギーの手に常人にはない特徴があったこと。タイトルにもなっているけれど、非常に“やわらかい手”だったのです。その手で触られ、愛撫されると、えも言われぬ快感が得られるようなのだ。ってどんな感触なのか、こればっかりは体験してみないとわからない(^~^;
それが評判となり、マギーの受け持つ個室には毎日長蛇の列ができるようになる。
原題の『イリーナ・パーム』は、そんな彼女にオーナーのミキがつけた源氏名なのです。

題材が題材だけにR-15指定になっているようだけど、案外エロスとは無縁、卑猥さは皆無だった。
それより社会の底辺で懸命に生きる人々の健気さ、逞しさ、つらさ、哀しみがじんわり心を打つ作品に仕上がっていた。

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卑猥さを減じていた理由のひとつは、風俗店のオーナーを演じていたユーゴスラビア出身の男優ミキ・マノイロヴィッチの存在も大きかったと思う。
人間の欲望を金に換えている男でありながら、ギラついていないのだ。その目は、諦観からか哀しげでも優しげでもある。
当初はマギーを冷ややかに見ていたものの、次第に心を開き、心を寄せるようにもなる男をマノイロヴッチが滋味深く演じてくれている。地味ながら印象に残る役者さんだ。

小さな奇跡が生まれる映画ではあるけれど、ヨーロッパ映画らしく人生の皮肉を描くことも忘れていない。
マギーは男を虜にする“柔らかい手”の持ち主でありながら、死別した夫には浮気をされていたのです。
しかも親友と呼べそうな彼女の友人と。
きっと、生活すべてが受け身で、その“やわらかな手”の恩恵を夫も、そして彼女も受けていなかったのが原因なのだろうな。

映画を観て思ったのは、人間って生き甲斐さえ持てれば、どんな過酷な状況だって生き抜いていけるんだなってこと。
今の社会が生きづらいのは、なかなか生き甲斐が持てないからなんだろう。
派遣社員の哀しみもそこにある。正規雇用の社員には少なくとも“愛社”という生き甲斐がある。
それさえ持てず、簡単に首を切られてしまう派遣社員の「もう派遣はイヤだ」という叫びはもっともなことだと思える。

さて、samurai-kyousukeさんも書いていらっしゃったけど、
主人公マギーを演じてたマリアンヌ・フェイスフルという女優さんは、
僕みたいに1960年代後半に思春期を迎えた人間にとっては衝撃的な印象を残した方として知られております。
それは現在62歳の彼女が21歳のときに出演した映画『あの胸にもういちど』(1968)によるところが大。
この映画で彼女が演じるのは、“全裸”に黒革ライダースーツだけを身にまとい、
夫がいる身でありながら愛人(アラン・ドロン)の胸に一刻も早く飛び込みたくて、金髪をなびかせハーレイダヴィッドソンを疾走させる女の役。
この映画、当時やっとすね毛が濃くなってきた頃だった僕には敷居が高すぎて、TVで予告編を見ただけだったんですが、それだけでドッキンドキドキしちゃった作品デシタ(^^;。
その予告編がこちら(↓)

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by kiyotayoki | 2009-01-17 12:47 | 映画(や行)

『ユーガットメール』(1998 米)

本屋さんをぶらついていたら、『スターバックス大解剖
というムック本が目に止まりました。
パラパラとめくってみたところ・・・
スターバックスが初めて日本に進出したのは10年と半年前の1996年夏だったんですね(ってことは年に1回行くか行かないかぐらいだな^^;)。
もうひとつお勉強になったのは、スタバの店員さんの呼称である“バリスタ”は伊語で、「バール(bar)」で「サービスする人(ista)」。これには“エスプレッソをいれる人”という意味もあるんだって。世の中知らないことだらけだなぁ。

と、そんな記事を読んでいたら、ある映画を思い出しました。
それが『ユーガットメール』(1998)。
映画の中にスタバが登場するんです。わざわざ出てくるってことは、当時はNYでもまだ目新しかったってことかな?
で、帰ってきてTVをつけたら、なんと『ユーガットメール』をやってるじゃありませんか♪
「これはセレンディピティ(幸せな偶然)に違いない!」
と、仕事もせずについつい最後まで観てしまいました(吹き替え版)。
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原題:『YOU’VE GOT MAIL』(119分)
監督:ノーラ・エフロン
脚本:ノーラ・エフロン
    デリア・エフロン
音楽:ジョージ・フェントン
出演:トム・ハンクス
    メグ・ライアン
    グレッグ・キニア

映画館で観た当時は、「2人共フケたなぁ」と思ったもんですが、久しぶりに観てみたら「あれ、2人ともまだ若いじゃん」。
当然ですね、あれから8年も経ってるんですから。
NYのアッパーウエストサイドで小さな絵本屋さんを営むキャスリーン(M・ライアン)が、このところ楽しみにしてること、それがインターネットで知り合ったメル友とのチャット。
一応、一緒に暮らしている恋人(G・キニア)がいるんだけど、会話はかみ合わないし、なんだか惰性で暮らしている感じ。それより、親身になっていろんな悩みに応えてくれるメル友(ハンドルネーム:NY152)のほうにシンパシーを感じるキャスリーンなのでした。
そんな彼女の目下の悩みは、店の近所に本の大型ディスカウントショップ『FOX』がオープンすること。この大型書店の出店で廃業に追いやられた店が何軒もあったからです。
でも、まさかその『FOX』の代表者が、密かに想いを寄せているNY152だとは知る由もありません。それはNY152と名乗っていたジョー(T・ハンクス)とて同じこと。
そんな2人が出会っちゃったことから、このちぐはぐな恋はスタートすることになるんですね。

この映画、実はリメイクなんですよね。
オリジナルは、『桃色(ピンク)の店』(1940)。
コメディ映画の名匠エルンスト・ルビッチ監督作品で、主演はジェームズ・スチュワートとマーガレット・サラヴァン。すごく評判のいい映画なのに残念ながら未見。500円DVDのラインナップにあるので探しているんですが、まだ入手できていません。早く観たいなぁ。
この映画の原題が『THE SHOP AROUND THE CORNER』。で、これがメグのやってる絵本屋の店名になってる(オリジナルもそうなのかしらん)。

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《印象に残った台詞》
「人は、ストレスや心配事があると、あとで後悔することを口走る」(byジョー)


オープニングの「puppy song」と恋の結末にかかる「over the rainbow」を歌っているのは、「without you」でお馴染みのニルソン。
そして、エンディングテーマ「anyone at all」を歌っていたのはお久しぶりのキャロル・キングでした。
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by kiyotayoki | 2007-02-17 13:07 | 映画(や行)

『ユナイテッド93』(2006 米)

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原題:『UNITED93』(111分)
監督・脚本:ポール・グリーングラス
音楽:ジョン・パウエル

5年前の9月11日、あなたはどこであの悲惨なニュースを見聞きしたでしょうか。
あちらの時間で朝の9時頃というと、こっちじゃ夜の10時頃。
もちろん黒煙を噴き上げるワールド・トレードセンターの画像に釘付けでした。
しかも、見ているうちに、2機目が激突。
これは事故じゃない、ただごとじゃない。テロ?それとも戦争?
怖ろしい考えが頭をよぎるものの、何ができるわけでもするわけでもなく、ただ新たな情報がもたらされるのを今か今かと待っているだけでした。
でも、その間にもNYの飛行管制センターでは、衝突を阻止すべく涙ぐましい努力がなされていたんだろうな・・・この映画を観るまではそう思っていました。
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ところが、実際は空港の管制塔も連邦航空管制センターも、ハイジャックの可能性には気づいていたものの、2機目の衝突時でさえ事態をまだ把握できておらず、ボクらと同じように呆然とCNNのカメラが映し出すその衝撃シーンを見つめるだけだったとは・・・。しかも、国土を防衛すべき軍の防空本部は戦闘機をスクランブル発進させることもできない有様。これが軍事大国アメリカの実力なのかと、これまた唖然・・・。完全にパニクっていたんですね。

いやいや、パニクって当然だったのかも。だって、精密レーダーで飛行を管理しているといっても、所詮2次元のモニターだし(高度は数字で表示されてるんでしょうけど)、しかもなんと空を飛んでいる飛行機は全米で4200機もいるってんですから。正規の航路を飛んでいてもコントロールするのはやっとって感じなのに、3機とはいえそれが勝手に異常な飛行を始めたら、そりゃもうお手上げでしょう(『狂っちゃいないぜ』って映画では航空管制が案外職人技で、いかにストレスをためる仕事かが描かれていましたね)。

もうだいぶ前になりますが、L.Aの空港へレンタカーで向かっていた時のこと。夕闇せまる空を離発着する旅客機がまるで“雲霞のごとく”飛び交ってたんで「うわっ、ぶつかったりしないのかな」と心配になったもんです。

3機のうち2機はワールド・トレードセンターへ、そしてもう1機はペンタゴンへ次々に突入。そして4機目となったのが、ある意味この映画の主人公であるユナイテッド航空の93便
テロリストたちの計画では4機目もほぼ同時にハイジャックし、標的であるホワイトハウスへ突入するはずでした。
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それがならなかったのは、出発が遅れたため。
そして、そのために乗客はワールドトレードセンターなどの惨事を知ることとなり、他の3機とは違うドラマが生まれることになったんですね。
英国人のグリーングラス監督は、現場にいた人たちの証言や交信記録、乗客が機内電話や携帯で家族にかけた通話の内容などを詳細に調べた上で、可能な限り主観を排して忠実に“運命のその時”を再現していました。

発端と結末だけは知っていた事件の記憶、そこに事実というピースを埋めていくのだけれど、その作業が痛い。ピースがギザギサしていて埋めれば埋めるほど心が出血していく・・・そんな映画・・・


そうそう、我が家にも9.11の余波はありました。
お袋が孫(妹の息子)と一緒にアメリカにいたのです。
目的はイチロー出場試合の観戦。
11日はラスベガスにいて、その日の便で帰国する予定でした。
なのでチェックアウトして空港へバスで向かっていたらしい。
そこで事件勃発!全米で飛行禁止令が出たために帰れなくなっちゃった。
ラスベガスに缶詰になること10日間。
ギャンブル天国ラスベガスも、そういうのが苦手なお袋にとってはただの砂漠の町。電話で弱音を吐くこともありましたが、帰国してからはその武勇伝でご近所の話題を独占しちゃったみたいです(^^;。
それにしても、呆れたのが事態を知った時の親父の反応。
お袋は帰れないと電話で知らせた時の第一声が
「明日のメシは誰が作るとかい」
でしたもん(^~^;ゞ。
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by kiyotayoki | 2006-09-03 12:05 | 映画(や行)

『ユージュアル・サスペクツ』(1995 米)

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原題:『THE USUAL SUSPECTS』(105分)
監督:ブライアン・シンガー
脚本:クリストファー・マッカリー
音楽:ジョン・オットマン
出演:ケヴィン・スペイシー
    ガブリエル・バーン
    スティーヴン・ボールドウィン
    ピート・ポスルスウェイト
    ベニチオ・デル・トロ

前回の『スーパーマン リターンズ』つながりで、久しぶりに観直してみました。
両作品とも監督が同じブライアン・シンガーで、同じ俳優ケヴィン・スペイシーが出てる。
とはいえ、11年前の作品ですから2人とも今とは立場が違います。
当時、シンガーは2年前に監督デビューしたばかりの新人(29才)。
スペイシーもキャリアはあるけれど注目度の低い無名の俳優でした(36才)。

出演の欄では敢えてそんな彼をトップに持ってきました。実質的にはスペイシーが主役の映画だからです。でも、実際にスクリーンに名前が出てくるのは5番目。無名だったのですから仕方ありません。また無名だからこその抜擢だったともいえます。スペイシーの役を名のある俳優がやるとネタバレする恐れがあるからです。なにしろこの映画は、仲間も敵も警察も、そしてスクリーンを注視している観客をも欺いてしまおうとするサスペンス・ミステリーですから。
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なので、これ以上中味に触れるのは御法度かも。
けれど、この映画が転機となって2人の人生が上げ潮になったのは確か。
特に、当時早くも額が広くなり中年の雰囲気を醸し出し始めていたスペイシーは、これでオスカー像を手に入れ(助演賞)、同年に公開された『セブン』の強烈な役でだめ押し、一躍注目の人となっていったのはご存じの通り。

タイトルの『ユージュアル・サスペクツ』というのは“常連の容疑者”、つまり前科者、同じ穴のむじな、札付きのワルたちという意味。そんな男たち5人が、銃器強奪事件の面通しで顔を合わせることになるのがお話の発端。

犯罪心理学の祖と言われている19世紀のイタリア人精神科医ロンブローゾは『素因重視説』を唱えた人。犯罪者は生まれ落ちた時からすでに悪党だというんです。乱暴な説なので、すぐに学会で否定されちゃいましたけれど。
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5人の中でロンブローゾが思い描いた犯罪者ヅラに一番近い顔をしてたのは、ベネチオ・デル・トロが扮していたフェンスターかな(^^;。ヤンキーの兄ちゃんみたいな髪型でとにかく目つきが悪い〔-"-〕。そんな強烈キャラなのに、この映画にデル・トロが出ていたことを忘れておりました(^^;。

あ、そうだもうひとり、忘れられない悪党ヅラがいました♪

悪党ヅラの男
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by kiyotayoki | 2006-08-05 10:43 | 映画(や行)

『夜の大捜査線』(1968 米)

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原題:『IN THE HEAT OF THE NIGHT』
(109分)
監督:ノーマン・ジュイソン
原作:ジョン・ポール
脚本:スターリング・シリファント
主題歌:レイ・チャールズ
出演:シドニー・ポアチエ
    ロッド・スタイガー
    ウォーレン・オーツ
    リー・グラント

『踊る~』があまりに大味だったので、『夜の~』で口直しです。
BSでやっていたので久しぶりに見たんですが、シドニー・ポアチエ扮する都会の刑事がなぜ南部のド田舎の町の殺人事件に巻き込まれるのか、その発端をすっかり忘れてました^^;。
フィラデルフィア警察・殺人課のバージル・ティッブス刑事がミシシッピー州の片田舎スパルタの駅にいたのは実家に帰省した帰り、列車を乗り換えるためだったんですね。その時、たまたま町で殺人事件が起きちゃった。で、バージルは差別意識丸出しの警官サムに問答無用で警察署にしょっ引かれて行っちゃうワケでした。
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この地方の黒人に対する差別意識の強さは20年後に作られた『ミシシッピー・バーニング』(A・パーカー監督。時代設定は1964年)でもイヤというほど描かれています。
こちらもほぼ同時代ですが、殺人の容疑者として連行されるのが白人ばかりなのは、ある種の自主規制が働いたせい?もし黒人が容疑者となれば、お話はもっと過激になるでしょうし、バージルの命の危険はもっと増大したはず。
とはいえ、白人たちの差別意識は呆れるほど露骨です。バージルが犯人ではなく刑事であることがわかっても謝罪するわけでもなくニヤニヤ。
バージルも長居は無用と町を出ていこうとしますが、生憎次の列車が来るのは数時間後。仕方なく(っていうか職業意識を刺激されて)、殺人事件など扱ったことのない署長のギレスビー(R・スタイガー)に誘われるままに死体の検死を手伝うことに。
そこで発揮されるのがバージルの卓越した検死能力。今なら検死官のやるべき領域に踏み込んで、犯人像をズバリと言い当てます。だもんだから、見当違いな犯人を捕まえて悦に入っていたギレスビー以下白人警官たちはギャフン。

これ以上居座られると自分たちの立場がなくなると、ギレズビーはバーシルを追い出しにかかりますが、そこで「待った」が。かけた主は殺された白人実業家の妻(L・グラント)。役に立たない町の警察より腕利きのバージルに犯人を見つけ出してもらいたいという至極当然の要求でした。そうしなければ企業を町から撤退させるという脅しつきで。a0037414_18424739.jpg
駅で列車を待っていたバージルを引き留めに行ったギレスビー署長の殺し文句は、「お前さんは白人の鼻を明かさずにはおかん男だ。その絶好の機会を逃す気か?」。
的を射た直球勝負に、バージルは再び町へ。

お墨付きをもらったバージルが狙いを定めたのは、町の実力者で“帝王”と呼ばれている綿花工場の主エンディコットでした。奴隷制時代を彷彿とさせる白亜の大邸宅に住むエンディコットは、慇懃丁寧ながらも黒人警官を完全に見下しており、訪問の理由が殺人事件関与の疑いと知ると癇癪を起こしてバージルに平手打ちを食らわします。
と、咄嗟にバージルも平手打ちのお返し。
もしこの時、そばにいたのがギレスビー署長ではなく白人の使用人だったらバージルは確実に射殺されていたはず。それぐらい空気が張りつめた瞬間でした。
ギレスビーがバージルの行為を黙認したのは、それだけ彼を人間として認め始めていたということなのでしょう。

クールで一分の隙もない身のこなしがバージルの信条ですが、さすがに“帝王”エンディコット邸を訪問した時は緊張したようです。なぜなら彼がズボンのポケットに両手をつっ込んでいたから。それは相手への警戒心が強まっているサイン。自己を防衛しようとする心理の表れだからです。
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その後、事件は意外な展開を見せていくことになりますが、随所に流れるクインシー・ジョーンズとレイ・チャールズコンビによる楽曲がムードを盛り上げるのに一役買っていることは言うまでもありません。
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by kiyotayoki | 2005-10-25 19:38 | 映画(や行)

『誘拐犯』(2000 米)

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原題:『THE WAY OF THE GUN』(119分)
監督・脚本:クリストファー・マッカリー
音楽:ジョー・クレイマー
出演:ライアン・フィリップ
    ベニチオ・デル・トロ
    ジェームズ・カーン
    ジュリエット・ルイス

目の下のクマとたるみが気になる今日この頃、とても親近感のわく怪優さん
が、本作の主人公のひとりロングボーを演じるベネチオ・デル・トロです。
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プエルトリコ出身。役のためなら、太りも痩せもするし、ホ
ームレスも真っ青の小汚い姿にもなる芸熱心な人です。
そんな彼にしては、この役はかなりシャープだし、ある意
味格好良くもあります。
というのも、根無し草でその日暮らしのだらしない生活を
してるのに、いざ銃撃戦となったら「おいおい、どこでそん
なテクニック身につけたのさ」ってツッコミを入れたくなるよな凄腕スナイパー
に変身するから。

しがない2人のアウトロー、ロングボーとパーカー(R・フィリップ)は、ふとした
ことから大富豪チダックの子を宿した女の存在を知り、身代金目的に誘拐を
図ります。しかし、その女ロビン(J・ルイス)には屈強なボディーガードがつい
ており、思わぬカーチェイスが展開されます。
実は、大富豪チダックは裏社会の顔役でもあり、2人はかなりヤバい人物に
手を出しちゃったんですね。
その結果、誘拐には成功したものの、チダック直属の老練な掃除屋ジョー
(J・カーン)に追われるはめに。しかもボディーガードたちが失点を挽回しよう
と追ってきたので、危険はなおのこと倍化。
しかも身重のロビンには秘密が。実は、彼女のお腹に宿ったのはチダックと
の間にできた子ではなく、本当の父親はチダックの息子(産婦人科の医者)
だったのです。『ナチュラル・ボーン・キラーズ』でキレた演技を披露したジュリエット・ルイスが今度は大きなお腹を抱えて奮闘します。

銃は人を攻撃的にする」ことを心理実験で証明したバーコヴィッツという心
理学者がいますが、物語の最後には、撃って撃って撃ちまくる、壮絶な銃撃
戦が用意されています。
監督・脚本があの『ユージュアル・サスペクツ』(1995)の緻密な脚本を書い
たクリストファー・マッカリーなので、そのつもりで見ると肩すかしを食らうかも。
でも、現代版西部劇だと思って見ると、最後の銃撃戦も存分に楽しめると思
いますよ(^_^)v。
  
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by kiyotayoki | 2005-03-15 12:36 | 映画(や行)

『ヤング・フランケンシュタイン』(1974 米)

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原題:『YOUNG FRANKENSTEIN』(107分)
監督:メル・ブルックス
脚本:ジーン・ワイルダー
    メル・ブルックス
音楽:ジョン・モリス
出演:ジーン・ワイルダー
    ピーター・ボイル
    マーティ・フェルドマン
    マデリーン・カーン   
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怪優がぞろぞろ出てくる映画です。
不思議な髪型とエキセントリックなキャラが魅力
のジーン・ワイルダーや『タクシー・ドライバー』
にも出ていたピーター・ボイルの怪物ぶりも捨て
がたいんですが、極めつけはやっぱり目玉の
マーティ・フェルドマン。そうそう写真の真ん中の
変なおじさんです。
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メル・ブルックス作品の常連で、右の写真は『サイ
レント・ムービー』(1976)の彼の勇姿。日本人で
似てる人を探すと、テリー伊藤?
でも目玉はテリーさんの倍以上デカい。
デカいにもほどがある。だから一度見たら忘れら
れません。
この人、てっきりアメリカ人だと思っていたんですが、実はイギリス生まれで、
若い頃は後にモンティ・パイソンの主要メンバーとなる連中とコメディ番組を
やっていらしい。知らなかったなー。
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でもさすがにブロマイド風の写真だと、ちゃんと芸能人して
ますよね(フェルドマンの写真、せっかく集めたので、こじつ
けで大放出^^;)。
ここで難題。
ヒトは整った顔立ちの人に惹かれる一方で、なぜ異形の人
にも惹かれてしまうんでしょう。
実際、美女と野獣カップルって、よく街で見かけますものね。
「なんであんなブ男(女)があんな美女(美男子)と?!」って内心地団駄踏んじゃ
ったりして。
「そりゃあ、好みは人それぞれだから」って意見はごもっとも。
ユングも、人の心の奥底には男であればアニマ(理想の女性像)、
女ならアニムス(理想の男性像)があって、それに近い相手を求めてしまう
と言っています。それぞれに理想像は違うから、美女が野獣を求めても不思議
ではない、のかも。
生物学的にいっても、ある特定の個体に人気が集中しちゃうと種の維持ができ
なくなっちゃうから困ります。
そのせいか「相補性」といって、ヒトは自分にないものを持っている相手に惹か
れる傾向があるようです。
でもそれだけじゃ、まだ説得力が足りないような・・・。
だけともう出かけなきゃ。ってことで続きはまた今度にしたいなと・・・(^^;)。
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あ、マーティ・フェルドマンも、早くに亡くなっていて
(1982、享年48歳)、もっと活躍していただきたかった
のにホントに残念です。
この映画で共演した同じくメル・ブルックス作品の常連、
怪女マデリーン・カーンも1999年に57歳で亡くなって
います。さびしいなあ。
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by kiyotayoki | 2005-03-03 12:24 | 映画(や行)

『八日目』(1996 ベルギー・仏)

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原題:『LE HUITIEME JOUR』(118分)
監督・脚本:ジャコ・ヴァン・ドルマン
出演:ダニエル・オートゥイユ
    パスカル・デュケンヌ
    ミュウ=ミュウ

人が求めて止まないのは「愛」というよりは「絆」なのだなと、改めて思わせて
くれる映画です。
考えてみると、母胎にいる間、人は母親と“へその緒”でつながっています。
ところが、生まれた途端、その絆は無慈悲(?)にも鋏でプツン。
人が人と物理的につながっているのはたった十月十日だけ。そのあとの長い
一生を、人はへその緒なしで生きていかなければならないのです。
人が絆を求めて止まないのは、そのせいかもしれません。

経営コンサルタントをしているアニー(D・オートゥイユ:この年のカンヌ映画祭で
男優賞受賞)は典型的な仕事人間で家庭は二の次。そのせいで妻は娘を連れ
て、お定まりの里帰り。
イライラしてワゴン車を飛ばすアニー。というのも、娘に誕生日のプレゼントを
渡したいのに妻が許してくれないから(このあたりは前回の『フォーリング・ダウン』と
同じ展開ですね)。電話でのやりとりを思い出すだけで怒りがこみあげてきます
が、アニーにも弱みが。仕事人間の悲しさで、誕生日当日は祝ってやることが
できないのです。せめてプレゼントだけでも先に届けよう。そう思って深夜、車で
家を出たのでした。
と、ドスン!とにぶい音。犬をはねてしまったのです。
そばには飼い主らしい若者が呆然と突っ立っています。その顔を見て、まとも
に会話は通じないと判断したアリーは、若者を家に送り届けることにします。
そう判断したのは若者が典型的なダウン症の顔をしていたからです。
若者の名はジョルジュ(P・デュケンヌ:カンヌで男優賞を同時受賞)。施設から
抜け出し、母親に会いに行くところでした。
やっと母親が住むという家にたどり着きドアを叩くと、出てきたのは見知らぬ男。
男は、ジョルジュの母親は4年前にすでに死んでおり、空き家になった家を自分
が買ったのだと告げます。

ジョルジュもアニーと同様に、家族との“絆”を断ち切られていたのです。
心に同じ空しさを持つ2人は、それぞれの絆を取り戻すべく、そして新しく生ま
れた絆を育みながら車で旅を続けます。

このお話の頭の部分で、経営コンサルタントのアニーが来場者に「セールスの
極意」を指南するシーンがあります。アニーによると、そのポイントは4つ。
①相手の目を見る
②笑顔
③自信に満ちた態度
④熱意を態度で伝える
これは、セールスだけでなく、恋愛にも使える心理法則です。
なぜ、これが効果的かといえば、相手との間に即席に“絆”を作り上げ、強める
(心理学風に言うなら「親和欲求」を高める)ことができるから。相手との間に
絆が生まれれば、セールスも恋も案外簡単に、そして思い通りに運べます。
アニーは絆づくりの極意を来場者に教えておきながら、実生活ではそれとは
相反する行動をとっていた。だから絆も寸断されてしまったんでしょうね。
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by kiyotayoki | 2004-09-28 09:09 | 映画(や行)