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映画の心理プロファイル

カテゴリ:映画(ら行)( 55 )

『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』(2012 米)

アカデミー賞の授賞式の前にノミネート作を観ておきたいな…
そう思って、先日、『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』を鑑賞。
…と、書いたところであることに気づいてびっくり!
この映画は、16才の少年パイが救命ボートで獰猛なベンガルトラと一緒に太平洋を漂流するお話なのだけど、
映画を見終わってまず思ったのは「いったいパイはどれくらい漂流していたんだろう???」だった。
なあんだ、サブタイトルに227日ってあるじゃない。
って、うそだぁ!7ヶ月半もぉ?!
見た感じ(パイ君の髪の伸び具合など)では、長くても2ヶ月ぐらいだと思っていたんだけどな。
ちなみに、この作品はめでたく監督賞を受賞したようです。

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原題:『LIFE OF PI』(127分)
監督:アン・リー
原作:ヤン・マーテル
脚本:デヴィッド・マギー ディーン・ジョーガリス
音楽:マイケル・ダナ
出演:スラージ・シャルマ
    イルファン・カーン
    ジェラール・ドパルデュー

僕がサブタイトルを見て味わった驚きは、この映画を観た人はたぶん皆さん感じるのではないかしらん。
そして、このお話がファンタジーと現実がないまぜになっているんだなと、改めて感じたのではないかな。

お話の舞台は現代のカナダ。
小説のネタを探していたカナダ人作家に、パイ・パテルという中年のインド人男性が
若き日に自分が体験した冒険譚を話して聞かせる形でお話は始まります。

ただし、冒険譚が始まるのはしばらく経ってから。しばらくはパイの幼少時代の話が続きます。
あとで考えると、それは必要なことだったんだな。というのも、パイが普通の子とはちょっと違うから。
アスペルガー症候群という症例を耳にしたことはあるでしょうか。
症候群なんてのがつくのでなんか病気みたいですが、フツーに成長(定型発達)した人とは
脳の機能にちょっとした違いがあるというだけで。
だけど、脳はデリケートなので、そのちょっとした違いが以下のような特徴的な個性となって表れるようです。
「親しい友人関係を築けない(コミュニケーションが苦手)」
「慣習的な暗黙のルールが分からない」
「会話で、冗談や比喩、皮肉が分からない」
「興味の対象が独特で変わっている」

その一方で、このタイプの人は優れた特性も有しているんですね。例えば、
「特定分野に対する驚異的な記憶力や集中力」
「規律に対する高い忠誠度や継続力」
「空想能力が高い」などなど。

実際、パイは円周率を何百ケタも暗記していてクラスメイトたちを驚かせますし、
長い漂流生活に耐えられたのも高い継続力や空想力のたまものだったかもしれない。
だから、幼少時代のパイをしっかり描いておく必要があったんじゃないかしらん。
原作ではどう描かれているんだろう。ちょっと読んでみたくなっちゃったな。

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内容に関しては、ネタバレ確実なので、書くに書けないのが残念。

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by kiyotayoki | 2013-03-01 00:03 | 映画(ら行)

『ローズマリーの赤ちゃん』(1968 米)

この映画の主な舞台となっているNYのアッパーウエストサイドにあるダコタ・ハウスは
ジョン・レノンが凶弾に斃れた地としても有名なところ。
この作品を観た当時はそんな不幸な出来事があるなんて知る由もなかっただけに、
今回は、より味わい深く画面に見入ってしまった。

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原題:『ROSEMARY'S BABY』(137分)
監督・脚本:ロマン・ポランスキー
原作:アイラ・レヴィン
音楽:クリストファー・コメダ
出演:ミア・ファロー
   ジョン・カサヴェテス
   ルース・ゴードン
   シドニー・ブラックマー
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ダコタハウスが建てられたのは1884年(明治17年)というから、築126年!
映画が撮影されたであろう1967年時点でも築83年だから、十分すぎるほど古い建物だったんだね。
実際、不動産屋に連れられてここを下見に来た若い夫婦ガイ(J・カサベテス)とローズマリー(M・ファロー)も、その古さにちょっと躊躇します。
エントランスからコートヤード(中庭)、そして蛇腹式の扉のついたエレベーターまで、すべてに前世紀の遺物感が漂ってる。しかも家賃は高い。
それでも、新妻ローズマリーの切なる望みで2人はこの古いアパートメントに越してくる。
それが不幸の始まりとも知らずに・・・。

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妊娠・出産という、女性にとっては大いなる嬉びであると共に不安をももたらす一大事業に焦点を当てたサスペンス・ホラーです。
そして何と言ってもミア・ファロー。
この人なくしては、この映画は語れない。
そばかすだらけで、やせっぽち。大きな目だけが際立つ彼女は、それまでのグラマー&厚化粧が売りのハリウッド女優とはかけ離れた存在で、すこぶる新鮮だった。
肌をさらすシーンも結構ある。だけど、中性っぽいせいかエロスはほとんど感じられない(失礼^^;)。

やがてローズマリーは身篭もり、隣人の奇妙な心遣いに感謝しながらも、妊娠期特有の情緒不安定に陥っていく。
そして彼女は、アパートで何か不気味なことが進行している、という不安と恐怖にとり憑かれていくのだが・・・・。
それは妊娠で神経過敏になったローズマリーの思い込みが引き起こした幻想?
それとも現実なのか・・・?

並みののホラー作品と違うのは、本作で描かれている不安や恐怖が物理的なものではなく、
ローズマリーが周囲の人間から感じ取っていくものであるということ。
親切だと思っていた隣人、信頼すべき医師、そして愛する夫が、自分を守ってくれる人間ではないのではないかという疑念。
それが疑念から確信に変わった時の絶望感が怖い。
そして、身重のローズマリーがたった一人、そんな自分の中の恐怖と必死に抗う孤独な姿が、観る側の共感を呼ぶ。

監督のロマン・ポランスキーは、ナチスによるユダヤ人迫害で母を失ったという。
とすると、心身共に消耗してゆくローズマリーの姿には、
アウシュビッツ送りになった母親の姿や思いが投影されていたのかもしれないな・・・
そう思ったら、ますます背筋が寒くなってきた。

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そうそう、舞台となったダコタハウスには、あの怪奇俳優ボリス・カーロフも住んでいたことがあったそうな。

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by kiyotayoki | 2010-08-30 07:37 | 映画(ら行)

ハロルド・ロイド コレクションDISK3

都内では今、野生猿が出没してちょっとした騒ぎになっている。
警察が捕獲しようとしても、するりするりと包囲網をかいくぐってしまうし、
少々高いビルでも、ちょっとした突起を手がかりに軽々とよじ登り、屋根伝いに逃げて行ってしまう。
別に危害を加えられたわけじゃないんだし、放っておけば帰巣本能が働いて元来たところに
戻るんじゃないかと思うんだけれど、そうもいかないのかな。

そのニュースを見ていて、
「あっ、観なきゃいけないのに忘れてた!」とカバンの中を探って取り出したのがこれ(↓)。
友人から借りていたハロルド・ロイドのDVD。
3本立てなのだけれど、中に、ロイドが猿みたいにビルをよじ登る、
ロイドといえばコレっていう極めつけのシーンのある作品が含まれていたのを思い出したんです、ハイ(^^ゞ

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このディスクに入っているのは、
『豪勇ロイド』『ドクター・ジャック』『ロイドの要心無用』の3本。

『豪勇ロイド』(1922)は、先月、三鷹で観た活弁映画の会のプログラムにも入っていた。
だけど、その時観たのは17分の短縮版。オリジナルは倍以上の56分もあったんだね。
弱虫の青年が、ひょんなことから保安官代理になって無法者を捕まえて男を上げるってところは同じだったけど、
短縮版はそれ意外のエピソードをほとんど全部大胆に刈り込んじゃったバージョンだったんだな。
それがわかっただけでも観た甲斐があった。

2本目の『ドクタージャック』(1922 60分)は、“医は仁術”をモットーとする心優しい若い医者ジャックが、
報酬目当ての医者に病人扱いされ屋敷に閉じこめられているお嬢様を救い出すお話。
ジャックは体だけでなく、患者の心を治すのも得意な医者だったようです。

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そして3本目が、これ!
時計の針にぶら下がるシーンが有名な『ロイドの要心無用』(1932 73分)。

一旗揚げようと田舎の村から上京し、
デパートで働く貧乏青年ハロルド。
ある日、彼が手紙に書いたありもしない成功談を真に受けた田舎の恋人が突然上京してくる。
恋人の手前、手っ取り早く大金を稼ごうと焦った彼は、
高額の報酬を目当てに、ビルの壁を登ってデパートの宣伝をするという危険な挑戦をするハメに・・・。

ビルの壁をよじ登るシーンは、合成ではなくNYの街中にセットを組んでの撮影だったらしいけれど、それでもかなり危険な撮影だったらしい。
単によじ登るだけでなく、鳩が飛んできて邪魔をしたり、突然窓からハシゴが出てきたり、いろんな障害が用意されているのでハラハラドキドキ。

驚いたのは、この映画の3年ほど前の撮影中に、ロイドは事故で右手の親指と人差し指を失くしたんだそうな。
それ以後は義指着用となったらしいんだけど、この時もその義指を使ってよじ登ってたわけで、それでいてあの身軽さ・タフさはもう驚きの一語!

ロイドと恋仲になるヒロインを演じているのは、3本ともミルドレッド・デイヴィスという女優さん。
この女優さんとロイドは、この『要心無用』が公開された23年に結婚している。
ミルドレッドさん、愛するロイドのハードアクションを一番ハラハラドキドキして見つめていたんじゃないでしょうか。

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by kiyotayoki | 2010-08-11 16:52 | 映画(ら行)

『レディース・オブ・ザ・コーラス』(1949 米)

マリリン・モンローをこよなく愛していらっしゃる
ボーさん
から貴重な映像をいただいた。
マリリンのごく初期の出演(主演)作で、タイトルは『レディース・オブ・ザ・コーラス』。
こんな作品があること自体知らなかったので、興味深く鑑賞いたしました。

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原題:『LADIES OF THE CHORUS』(60分)
監督:フィル・カールソン
脚本:ジョセフ・カロール
音楽:ミッシャ・バカライニコフ
出演:マリリン・モンロー
   アデル・ジャーゲンス

この映画のマリリンは22、3歳?
笑顔がチャールズ皇太子と結婚した頃のダイアナ妃みたいだし、まだチャームポイントのホクロも付いてません。
ちょっと尺が短くて、お話も通俗的かなぁ。
とはいえ初々しくて華奢で可愛らしい彼女と、そして彼女の歌を堪能できるって点では
ファンにとっては堪らない作品かも♪

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若き日のマリリンが演じるのは、バーレスクで働く踊り子ペギー。
バーレスクという言葉は久しぶりに耳にしたけれど、お色気を強調した歌や踊りで客を楽しませるショー(又は、それを見せる劇場)で、1920年代、米国のある劇場で踊り子のスリップの紐が切れて客がどっと沸いたのがこの手のショー盛況のきっかけとなったんだとか。
らしいエピソードでしょ(^^。

ペギーには同じ劇場で働く母親メイがいて、母子2人で助け合いながら暮らしている。
そのメイを演じているアデル・ジャーゲンズという女優さん、母親というより姉といった感じだなと思ったら、実際の年齢はマリリンと9つしか違わない。どうりで若いはずだ。

お話は、トップスターの突然の降板でいきなりステージの主役に抜擢されたペギーと上流階級の客との恋物語と、
そのペギーを女手一つで育てた母メイの苦労話が絡み合いながら進行します。
実は、メイにはかつて上流階級の客と恋仲になり結婚話まで出たものの結局身分の差が障害になって
破談になるという苦い経験があり、「同じ道を歩むのではないか」と娘の恋に危惧を抱いていたのです。
さて、ペギーの恋は成就するのでありましょうか。

お話は通俗的と書いてしまったけれど、ラストのちょっと意外でハッピーなオチは個人的には気に入りました。
もっと下手かと思っていたマリリンの演技も意外と様になっていましたし。

下のYouTubeの映像は、彼女が劇中で歌う“Anyone Can See I Love You”です。


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by kiyotayoki | 2010-07-12 19:26 | 映画(ら行)

『ローラーガールズ・ダイアリー』(2009 米)

ドリュー・バリモア初監督の、元気がよくて愛らしい作品を観てきた。

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原題:『WHIP IT』(112分)
監督:ドリュー・バリモア
原作・脚本:ショーナ・クロス
音楽:ランドール・ポスター
出演:エレン・ペイジ
   マーシャ・ゲイ・ハーデン
   ジュリエット・ルイス

テキサスの田舎町に住んでいる大人しくて冴えない17歳の女の子ブリスが、
一大決心をして 『ローラーゲーム(米国ではローラーダービー)』 の新人オーディションに参加。
自分のやりたいことに目覚めて少しづつ成長していくという熱血(ってほどでもないけど)感動のガールズムービーです。
ラブコメ女優だけでなく、最近では映画のプロデュースなども手がけるドリュー・バリモアの初監督となる作品。
ブリスを演じるエレン・ペイジは小柄で華奢で日本でも普通に街で見かけそうな女の子。
でもって、お話はいい意味で少女漫画チック、しかもパッピーな内容なので、もっとうまく宣伝すれば若い女性客を動員できそうなんだけれど、上映館はかなり限られている模様。それがちょっと残念かな。

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ローラーゲームは、ローラースケートをはいて室内トラックで競い合う、米国生まれのエンターテイメント性の強~いチームスポーツ。
米国では1960年代から1970年代にかけて流行し、日本にも東京ボンバーズってチームができて、米国チームと戦う番組(「日米対抗ローラーゲーム」)がテレビで放送されていた。
映画でも、未見だけれど『カンサスシティの爆弾娘』(1972)ってラクエル・ウェルチ主演のローラーゲーム物があった。
だけど、人気は長続きせず、70年代の半ばにはブームが去っちゃったので、
こんなスポーツがあったことさえ知らない人も多いんじゃないだろうか(^^ゞ。

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原題の『WHIP IT』は、「打ち負かせ」って訳すのかな???
調べてみたら、ホイップは後ろのスケーターの手を引っ張って前方へあおり出す技だそうな。
そういえば、ブリスも得意技にしておりました。
ローラーゲームは、アイススケートのショートトラック団体戦とプロレスを合体したようなスポーツなので、コンタクトも激しい。
当然、相手チームの同じポジションの選手とは敵対関係になる。
そのライバルを演じるのが、ジュリエット・ルイス。『ギルバート・グレイプ』(1993)の可憐な少女もこの映画出演時は36才。
ぽっと出のガキんちょに負けてたまるかという気概が全身から漲っておりました。
ちなみに高校生役をやっているお肌ツルツルのエレン・ペイジは22才。

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ヒロインのブリスがローラーゲームの世界に身を投じたのは、母親への反発心もあったようです。
ブリスの母親は、美人コンテストで優勝するという自分が果たせなかった夢を娘に叶えさせようと、小さい頃からステージママとしてブリスを鋳型にはめてきた。ブリスはそんな生活から解放されたかったんだね。
ドリュー・バリモアがこの作品を初監督しようと思ったのは、そんなヒロインに共感を覚えたからでもあるんだろう。
だってドリュー自身、芸能一家に生まれ、赤ん坊の頃からモデルをやり、4歳でもう映画に出演、脚光を浴びたけど、その反動で一時はグレて酒や麻薬に自殺未遂と大変な人生を送ってきた過去を持ってる。
ブリスというキャラクターに自らの境遇を重ね合わせても不思議じゃないものね。
だけど、陰気な話にせず、明るくハッピーに、そして感動もできる結末にもっていくところは、ドリュー監督のポジティヴな持ち味のおかげでありましょう。

ドリューさん、役者としてもドラマに顔を出しています。ただ、主役より目立っちゃいけないと思ったのか、何かというとケガをして顔に青タンを作ったり絆創膏を貼ったりしておりましたが(^^ゞ。


《印象に残ったセリフ》
 ブリスが好きになってしまうロックバンドのボーカルの彼が言ったセリフ

 「(ブリスに)5分30秒後、キミ、何してる?」

         ※5分と言わずに、5分30秒と言うところがニクイ。
          これ、ピークテクニックといって、中途半端な数字
          が相手の興味をそそり、それを言った人のことが強
          く印象に残ってしまうのです(^^。
          
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by kiyotayoki | 2010-06-02 21:23 | 映画(ら行)

『ラブリー・ボーン』(2009 米・英・新西蘭)

お話の時代設定は、1973年の冬。
ベトナム戦争が終結した年だ。
ベトナム戦争は米国が初めて体験した敗戦といわれているけれど、その影響、負の遺産は計り知れないものがあったと思う。
特に精神の荒廃はその後の米国に、そして世界に大きな影を落としていく。
この映画は、その端緒となった年に起こった殺人事件を取り上げていることもあって、ファンタジーの枠を超えた作品に仕上がっていた。

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原題:『THE LOVELY BONES』(135分)
監督:ピーター・ジャクソン
原作:アリス・シーボルド
脚本:フラン・ウォルシュ他
音楽:ブライアン・イーノ
出演:シアーシャ・ローナン
   マーク・ウォールバーグ
   レイチェル・ワイズ
スタンリー・トゥッチ

物語は、14才の少女スージーの独白で綴られていく。
だけど彼女、独白をしている時点ではもう殺されているのです。
これはCMでも流れていることだから書いちゃってもいいでしょう。

スージーを演じているのは、『つぐない』(2007)のシアーシャ・ローナン。
この映画を観るために『つぐない』も事前に鑑賞した。
本作では本人とほぼ同じ14才の役だし、成長期の女の子の2年は大きいからかなり成長しているのでは・・・。
そう思ったけれど、案外体型などまだ少女らしさが残っていたのは意外だった。
ま、『つぐない』の時ほうが役柄もあってか大人びて見えていたのかもしれないけれど。

両親を演じているのは、マーク・ウォルバーグとレイチェル・ワイズ。
典型的な中産階級の家族で、夫婦は円満、郊外の住宅地で3人の子供たちと幸せを絵に描いたような生活を送っている。
長女のスージーの最大の関心事は、気になる男の子とのファーストキス。
その瞬間をいつ、どこで迎えられるかに胸をときめかせている女の子だ。

家族の幸せな日々は永遠に続くかと思われた。男がスージーの命を無慈悲にも奪うまでは。

男の正体は、比較的早い時間に明かされる。
しかも、平凡な一市民に見えるその男の心が甚だしく歪んでいることも。

お話がその男とそれを追う刑事を中心に描いていたとしたら、『羊たちの沈黙』のようなスリラー・サスペンスになっていたところだ。
だけどそうはせず、殺された少女に焦点を当て、冥界にいる彼女の視点を通して事件のその後を描いたことで、このお話はファンタジーの衣をまとったサスペンスに変貌を遂げた。

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命の儚さ、残された者たちの悲痛を綴る前段はやはり涙を誘う。
救われるのは、残酷な殺害シーンを極力描かず、代わりに天国の手前にあるらしい世界をイマジネーション豊かに映像化していること。その映像化には、ニュージーランドの美しい自然がひと役買っている(天国のような自然はもうニュージーランドにしか残っていないのかしらん^^;)。

その美しい世界にたゆたいながら、スージーは家族やボーイフレンドを想い、遅々として進まない捜査状況に心をいため、天国には行けずにいるのだけれど・・・。

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結末の意外な展開は賛否両論が出るかと思われるけれど、個人的には作り手の死生観に賛同。
ただ、エンドロールの長さにはさすがに閉口しちゃった。
CGが多用されているので、スタッフの人数が増え、それだけ長くなるのは理解するけど、
『アバター』では文字を限りなく小さくすることでロールの長さを減じていたし、何か工夫が欲しかったな。
あれが短かったら映画の尺は120分台で収まっただろうに(^^;

       
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by kiyotayoki | 2010-02-07 11:59 | 映画(ら行)

『ミスター・ロンリー』(2007 英・仏)

たまたま深夜に観た映画。
まったく観る気はなかったのだけれど、主人公がマイケル・ジャクソンになりきって生きている若者で、
そんな彼が出会った女性がマリリン・モンローのそっくりさんときたので、ついつい最後まで鑑賞してしまった(^^ゞ。

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原題:『MISTER LONELY』(111分)
監督:ハーモニー・コリン
脚本:ハーモニー・コリン アヴィ・コーリン
出演:ディエゴ・ルナ
    サマンサ・モートン
    ドニ・ラヴァン

この映画をひとことで言い表すのはとっても難しい。

現実社会では生きるのが難しい、夢追い人たちの不器用な生き様を描いたドラマ、といえばよいのかな・・・。

マイケル(のそっくりさん)は、マリリン(のそっくりさん)に誘われるままスコットランドの片田舎へと向かう。
そこは、有名人を演じるそっくりさんたちが集団で暮らすコミューン(彼らはユートピアと称していたけど)だった。
村にいるのは、チャーリー・チャップリン、三馬鹿大将、ジェームス・ディーン、エリザベス女王、
シャーリー・テンプル等々名前だけ並べると錚々たる有名人たち。
だけど、そのそっくり度はビミョ~というか、お世辞にも似ているとはいえないレベル(^^;。
だから、史上最大のショーと銘打って手作りシアターをオープンしても、観客は数えるほどしか来てくれない。

その顔ぶれを見ていて、ふうんなるほどな~と思ったのは、
彼らが叶えられない自分たちの夢を託して演じている有名人たちも、そのほとんどが夢追い人だったんじゃないかということ。
本物のマイケルにしても、マリリンにしても、チャップリンにしても、
自分の夢を追うばかりに社会から乖離し、孤独になっていった人たちのような気がする。
そっくりさんたちは有名人になりきることで社会との接点を築こうとしているのに、
その有名人も社会との相性のすこぶる悪い人たちなのです。
そっくりさんたちに悲哀を感じてしまったのは、彼らが二重に社会から隔絶していたせいなのかも・・・。

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本作品はそんなそっくりさんの負け犬的共同生活と、
それとはまったく関係の無いアフリカ修道女の現実離れした奇跡の物語の2つの軸で構成されているので、
内容を理解するのに手こずったし、深夜だったせいかつい睡魔に負けてしまいそうになる映画だった。

だけど、オープニングにかかる懐メロ、ボビー・ヴィントンの『ミスター・ロンリー』や映像センスは印象的だったし、
マイケルを演じたディエゴ・ルナやマリリンを演じたサマンサ・モートンが醸し出す
生きて、そしてふれ合うことの切なさ悲しさもどかしさが静かにしみじみと伝わってくる、また共感を覚える映画ではありました。
僕らだって自らつくり上げた“自分”という人間(ペルソナ)を演じるのに疲れてしまうこともしばしばだもの。

欧州の映画には疎いので知らなかったけれど、監督のハーモニー・コリンは弱冠19歳で書き上げた「KIDS/キッズ」(1995)の脚本で注目を集めた人らしい。


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by kiyotayoki | 2009-12-19 08:43 | 映画(ら行)

『落下の王国』(2006 印・英・米)

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原題:『THE FALL』(118分)
監督:ターセム
脚本:ダン・ギルロイ
    エコ・ソウルタナキス
    ターセム
衣装デザイン:石岡瑛子
音楽:クリシュナ・レヴィ
出演:リー・ペイス
    カンティカ・ウンタルー   
    ジャスティン・ワデル

先日、“昨年見逃して残念に思っていた映画”として『イースタンプロミス』をご紹介しましたが、この映画もまさにその1本。
予告編を見たとき、これは絶対観なくてはと思っていたのになぁ・・・・。

見始めて、やっぱり映画館の大きなスクリーンで観るべきだったなぁ、と余計に後悔しちゃった。
とにかく映像の素晴らしさがハンパじゃない。
まあ、ロケーションの地が24カ国以上で、その中には13の世界遺産が含まれてる。
単にカメラに収めるだけでも絵になるのに、それに4年の期間を費やし、
芸術家や工芸家が巧みの技を披露するかのようにカットのひとつひとつが丹精され磨き込まれているのです。

そのどれもが現実にこの地球上にあるものなのに、
圧倒的に透明感があるためかそのどれもが現実離れしているというか、桃源郷のように見えてしまうこの不思議。
(CGはまったく使われていないんだそうな)

なぜそこまで映像が極められているのかといえば、それらの映像が主人公の少女の空想の世界だからということが見ているうちにわかってきます。
それくらい幼い子供の空想力・想像力はに限りがないっていうことか・・・。
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少女の名はアレクサンドリア。
移民の親を手伝ってオレンジを収穫中に木から落ち、左腕を骨折して病院に入院中の5歳の少女だ。
幼児体型のおデブさんなんだけど、この子が見てるうちにどんどん可愛くなっていくんだなぁ。
骨折だけで他は健康体のアレクサンドリアにとって、病院内は遊園地のようなもの。日々探検に余念がない。
そんな中出会ったのが、撮影中に両脚を骨折する重症を負い、しかも恋人を主演俳優に奪われてしまったため自暴自棄になっているスタントマンの青年ロイ。
ロイは、動けない自分に代わって自殺するための薬を少女に盗ませようと思い付き、アレクサンドリアに作り話を聞かせ始めます。
それは、愛する者や誇りを失い、深い闇に落ちていた6人の勇者達が、力を合わせ悪に立ち向かう愛と復讐の物語。
が、しかし、少女を操るためのたわいない寓話は、いつしか少女に希望を与え、やがて自分自身をも救う壮大な物語へと化学変化してく・・・というもの。

映像重視の映画かと思っていたら、お話も映像に劣らない内容なのです。
というわけで、物語は現実の世界(ロイとアレクサンドリアがいる1915年のL.A.の病院)と、ロイが語るおとぎ話の世界の2つのパートに分かれます。
思わずニンマリしちゃうのは、おとぎ話の世界の登場人物がアレクサンドリアが病院で関わっている人たちと重なっている点。
『オズの魔法使い』(1938)もそうだったし、毎晩見る夢の世界にも通じることだけど、
現実世界の人たちが、それぞれに役柄を与えられておとぎ話に登場するのです。
これはもちろん、おとぎ話の映像がアレクサンドリアが思い描く空想の物語だから。
だから、おとぎ話の中に出てくる美しいお姫様になるのは、彼女が病院で一番大好きな看護士のお姉さんなのです。
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お話の脚本を書いているのはロイだけど、演出やキャスティング、撮影をしているのはアレクサンドリア。
つまり、このお話は2人の合作なんですね。

万華鏡のように魅惑的な映像と思わず感動してしまうストーリーの素敵なコラージュ。
未見の方には、お薦めしたい1本です。

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by kiyotayoki | 2009-09-19 11:26 | 映画(ら行)

『理由』(1995 米)に出演していた女優

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この『理由』という映画、3回ぐらいは観ていると思う。
(どれも映画館ではなく、TVでだけど)。
主人公の法律学者を演じるのが当時64歳、熟年盛りのショーン・コネリー。
共演も、後にモーフィアス役でブレイクするローレンス・フィッシュバーンが強面の保安官を演じているかと思えば、エド・ハリスが狂気のサイコパスを熱演していて、思わず画面に引き込まれる。
二転三転するストーリーも興味津々で、やってるとついつい見てしまうんだな。
(見てしまうと、少々物足りなさを感じてしまう作品でもあるのだけれど^^;)

先日も、つい観てしまった。吹き替え版は初めてで、ショーン・コネリーの声を若山玄蔵さんがやっていたものだから、録画してつい(^^ゞ。

そうしたら、小さな発見があった。
ショーン・コネリー扮するポール・アームストロングと妻ローリー(ケイト・キャプショー)の間にはひとり娘ケイトがいる。
ケイトはまだ小学低学年ぐらいだから、この夫婦は遅い結婚だったのかな。
そのケイトの顔を見ていたら、おやっ?

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誰かに似ているのです。

今まで気づかなかったけど、
ひょっとしてこの子・・・・

調べてみたら、やっぱりそうだった。

さてこの子、いや、この女優さんは、さて、誰でしょう。

ケイトを演じた1984年11月22日生まれの女優さんとは・・・
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by kiyotayoki | 2009-09-15 19:50 | 映画(ら行)

『レイチェルの結婚』(2008 米)

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原題:『RACHEL GETTING MARRIED』(112分)
監督:ジョナサン・デミ
脚本:ジェニー・ルメット
音楽:ドナルド・ハリソン・Jr
出演:アン・ハサウェイ
    ローズマリー・デウィット
    ビル・アーウィン
    デブラ・ウィンガー

6月に観たのだけれど、書きそびれていた作品。
つい先日観た『サンシャイン・クリーニング』と同じく姉妹の葛藤と絆の深さを描いた作品なので、思い出して書き留めておくことにした。

監督が『羊たちの沈黙』『フィラデルフィア』のジョナサン・デミで、
脚本はシドニー・ルメットの娘、
主演はこの映画でオスカー候補になったアン・ハサウェイ。
でもって、ドキュメンタリー・タッチの演出が独特の雰囲気を
醸し出しいる映画だというので気になっていた作品だった。
渋谷のBUNKAMURA ル・シネマにて鑑賞。

アン・ハサウェイ扮する主人公キムは過去10年、
麻薬中毒者の更生施設の入退院を繰り返している情緒不安定な女の子。
そんな折、姉のレイチェルの結婚式のためにキムは施設から実家に帰ることに。
家族や新郎新婦の友人等が集い、音楽と愛が満ち溢れる温かいムードの中、
レイチェルの存在が家族の衝突を引き起こす…、というストーリー。

カイン・コンプレックスという心理用語をご存じでしょうか。
人は同性の姉妹(兄弟)に対しライバル心を抱く傾向があります。それが「カイン・コンプレックス」。
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この名の由来は旧約聖書から。カイン(兄)が、
アベル(弟)に嫉妬してついにアベルを殺してしまうという逸話。
そこから兄弟(姉妹)同士が抱くライバル心を「カイン・コンプレックス」と名付けたんですね。

たとえば、二人目の子供が生まれたとき、お兄ちゃんお姉ちゃんが赤ちゃん返りをすることがあるのも
「カイン・コンプレックス」のなせるわざ。
今まで自分ひとりのものだった親の愛情を、二人目の子供が奪ってしまったために出る行動。
親の気を引くために、指しゃぶりなどして赤ちゃんに返ってしまうというわけです。

このカイン・コンプレックスは、異性よりも同性の兄弟(姉妹)に強く出るといわれています。
姉(兄)と妹(弟)は、下の子が生まれた時から親の愛情を競い合うライバルになるんですね。

姉妹の場合、「気配りが上手で、自ら世話を焼きたがる姉」「競争心が強く、ぶりっこの妹」
といった正反対なタイプになりがちなのも、このライバル意識が一因とも言われてる。

アン・ハサウェイ扮するキムは、ぶりっこはぶりっこでも、良い子ぶりっこじゃなく悪い子ぶりっこタイプ。
自分のせいで弟を死なせたという負い目が、逆に親や姉を困らせるという屈折した形で出てしまっているのです。
悪い子になれば罰してもらえる、罰してもらいたい、そんな無意識の欲求があるせいでしょうか。
そういえば、『サンシャイン・クリーニング』で、エミリー・ブラントが演じた妹のノラも、
自分だけが母の死の真相を知らない、疎外されているという屈折した心理から、悪い子ぶりっこになってしまった女性でした。

一方、ローズマリー・デウィット扮するレイチェルは、一見すると「気配りが上手で、自ら世話を焼きたがる姉」のように見えたけれど、心の奥底ではカイン・コンプレックスに囚われていて、キムに厳しい言葉を投げつける激しい一面も持っている。
そして、そんなふたりの性格の根っ子には、自分たちを放り出して離婚してしまった母(久々のデブラ・ウィンガー)の人格が深く関与していることが明らかにされていく・・・・、と、かなり重たい内容でありました。

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実家の姉と妹を見ていても、姉妹いうのはなかなか一筋縄ではいかない関係のようだ。
互いを思いやる気持ちは大いにあるのに、一方で近親憎悪ともとれる感情を抱いている。
うちの姉と妹は、この映画を観て、さて、どんな感慨を抱くんだろ・・・。
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by kiyotayoki | 2009-08-04 13:08 | 映画(ら行)