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映画の心理プロファイル

『オズの魔法使い』(1939 米)

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原題:『THE WIZARD OF OZ』(102分)
監督:ヴィクター・フレミング
原作:ライマン・フランク・ボーム
出演:ジュディ・ガーランド
    レイ・ボルジャー(かかし)
    ジャック・ヘイリー(ブリキ男)
    バート・ラー(ライオン)

黄色というと、まず最初に思い出すのがこの映画です。
ここに載せるためにデータを調べてわかったんですが、この映画の日本公開年は作られてから15年も後の1954年なんですね。戦争の影響がこんなところにも表れているんだなあ。

ファンタジーのお手本のような映画で、主人公の少女ドロシー(J・ガーランド)は大竜巻に巻き上げられ、気絶している間に夢の国オズにたどり着きます。
(画面はオズの国に着いた途端に白黒からカラーに変化)
故郷のカンザスに帰りたいドロシーは、夢の国の人々にどうしたらいいか尋ねます。すると、エメラルドシティに住む大魔王オズに頼めばいいとの答え。
「この黄色いレンガの道をたどればエメラルドシティに行き着きますよ」
そう言われて、ドロシーは愛犬トトと意気揚々と旅に出ます。
黄色は《未来への希望や願望》を表す色。

黄色いレンカの道は、ドロシーにとっては自分を故郷へ連れて行ってくれる希望の道だったんですね。
   
# by kiyotayoki | 2004-08-23 11:04 | 映画(あ行)

『ひまわり』(1970 伊)

原題:『I GIRASOLI』(107分)
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監督:ヴィットリオ・デ・シーカ
音楽:ヘンリー・マンシーニ
出演:ソフィア・ローレン
    マルチェロ・マストロヤンニ
    リュドミラ・サベリーエワ

『ニューシネマ・パラダイス』に続いて伊映画の秀作です。
衛星でやっていたので、超がつくほと久しぶりに再見。
シベリアの大地を埋め尽くす“ひまわり”と、H・マンシーニの物悲しいメロディは
観た当時の印象そのままでしたが、物語自体は随分違う印象を受けてしまいました。
30年以上経って、観る側の心がスレてしまったのか、当時の社会情勢や興味深いイタリア人気質などに
気をとられて素直に感動できなかった、というのが正直な感想。

戦争によって引き裂かれた夫婦の悲哀を描いたメロドラマです。
ナポリ生まれの情熱的な女ジョアンナ(S・ローレン)は、ソ連のシベリア戦線に送られたまま
帰って来ない夫アントニオ(M・マストロヤンニ)の行方を必死に探しますが、役所では埒が明かず、
ついに自分でソ連へ向かいます。
けれど、手がかりは戦地から送られてきた写真一枚っきり。
徒労の日々が続きますが、ある日、ついにその苦労が報われます。
写真の人物に心当たりがあるという女性が現れたのです。
喜んで案内された家を訪ねてみると庭で洗濯物を取り込んでいる女性の姿が。
ジョアンナの顔に不安の影が宿ります。
不安は的中。やっと探し当てた夫はシベリアの片田舎で別の女性(L・サベリーエワ)と結婚し、娘までもうけていたのです。
列車で仕事先から戻ってきたアントニオ。
生きた彼の姿を見、彼も彼女の存在に気づいたその時、ジョアンナは走り始めた列車に飛び乗ってしまいます。
絶望と怒り、そして家庭を築いている彼の立場を慮っての、彼女としては精一杯の行為でした。

この映画で印象的なのは、やはりタイトルにもなっている“ひまわり”です。
映画の作り手は“ひまわり”にどんな思いを託したかったのでしょうか。
いろんな見方があるでしょうが、ここでは色彩心理学の観点から見てみましょう。
ひまわりの黄色は「希望や願望などへの自己欲求が押さえきれずに外へ向かっていこうとする状態」を表す色。
とすると、無数の戦死者が埋まったシベリアの大地を黄色に染めるひまわりは、戦争のない世界を希求しているのかも。
また、エンディングに画面を埋め尽くすひまわりは、ジョアンナとアントニオがそれぞれの家庭のために
心の奥に押し込めてしまった相手への想い(叶うものなら二人で未来を築いていきたいという想い)を
その色で代弁していたのかもしれません。
# by kiyotayoki | 2004-08-22 10:13 | 映画(は行)

『ニューシネマ・パラダイス』(1989 伊・仏)

『ニューシネマ・パラダイス』(1989 伊・仏)_a0037414_9552765.jpg
原題:『NUOVO CINEMA PARADISO』(124分)
監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ
音楽:エンニオ・モリコーネ
出演:フィリップ・ノワレ
    ジャック・ペラン
    サルバトーレ・カシオ(子役)

当時29才のトルナトーレ監督が映画を愛するすべての人に贈った
センチメンタル・ムービーです。
シチリア島の小さな村にある小さな映画館パラダイス座。
そこで青春時代を過ごした映画監督サルバトーレ(J・ペラン)は、当時慕って
いた映写技師アルフレード(F・ノワレ)の訃報を聞いて故郷に帰ってきます。
葬儀後、彼は遺族からアルフレードの形見として一缶のフィルムを受け取りま
す。それをスクリーンに映してみたアルフレードの目からは止めどなく涙が・・。

それは古い映画のキスシーンだけを継ぎ接ぎしてつないだフィルムでした。
次々と映し出されるキスシーン。主人公だけでなく見ているこちらまで目頭
が熱くなったものですが、ここで素朴な疑問が。
人はキスをする時、なぜ目を閉じるのでしょう。閉じないまでも伏し目がちにな
ってしまいます。
キスをする時、人はどんな心理や生理が働いて目を閉じてしまうのでしょうか。

ものを知覚するために、人は五感(視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚)を働かせ
ます。五感の中でもっとも活躍するのは視覚で、情報の8割以上は目から取
り入れています(聴覚で1割。残りを触覚、嗅覚、味覚で知覚)。
それほど私たちは視覚に頼って生活しているわけですが、ことキスに関して
は視覚は邪魔者になってしまうのです。
なぜ邪魔者なのか。

キスをするのは快感を得たいためです。快感は本能的な喜び。
本能である快感を司るのは脳の中の大脳辺縁系(旧皮質)と呼ばれる部分
です。ところが、視覚を支配するのは脳の中の大脳新皮質と呼ばれる部分。
私たちが見たものの色や形でそれが何であるかを識別できるのは、
視覚中枢が考える脳である大脳新皮質にあるから。
けれど、快感を得たい時に何かを考えるなんてヤボなこと。
考えるヒマがあったらもっと快感に浸りたいもの。
つまり快感に浸るためには、考える脳を刺激する視覚は邪魔者以外の何も
のでもないのです。
一方、相手のくちびるの感触を確かめるために働かせる触覚や味覚の中枢
は本能を司る大脳辺縁系にあります。触覚や味覚はある意味でとても原始
的な感覚器官なのです。それだけに快・不快という心理的感覚に大きな影
響を及ぼします。
だから快感を得たいと思えば思うほど、人は触覚や味覚をより働かせるべく
邪魔な目を閉じてしまうというわけです。
# by kiyotayoki | 2004-08-21 11:57 | 映画(な行)

『101』 (1996 米)

『101』 (1996 米)_a0037414_10103220.jpg
原題:『101 DALMATIANS』
監督:スティーヴン・ヘレク
制作・脚本:ジョン・ヒューズ
出演:グレン・クローズ
    ジェフ・ダニエルズ

『花嫁のパパ』で紹介した「フロイディアン・スリップ」を物語の展開を早める
ためにうまく利用した作品がこれ。

この作品、ディズニーのアニメ『101匹ワンちゃん』の実写版で、主人公は
もちろん犬。人間はあくまで脇役です。
とはいえ、ストーリーを組み立てていく上では人間のパートもないがしろにでき
ません。ダルメシアンの子犬101匹を大集合させるためには、まず親犬である
ボンゴとバーディをつがいにする必要があり、そのためにはそれぞれの飼い主
である人間の男女、ロジャーとアニタをくっつけなきゃいけないからです。
でも犬を主役にするためには、その部分はできるだけコンパクトにする必要が
あります。

そこで使われたのがこの「フロイディアン・スリップ」。
犬がらみで仲良くなったロジャーとアニタは、二人以上に親密なムードの愛犬
を見て、紅茶を飲みながら二匹の将来を語り合います。
そんな時、ロジャーがつい口を滑らせるのです。
「もう一杯、結婚いかが?」と・・・。
本人としては「もう一杯、紅茶はいかが」と言おうとしたんですが、内心、彼女
と結婚できたらなと思っていたので、つい言い間違えちゃったんですね。
彼女も同じ思いだったんでしょう。言い間違いだとわかってはいたものの、
「ええ、いいわ。(結婚)します」と応じます。
こうして2人は一気にアツアツの関係に。
次のシーンに切り替わると、もう結婚式を挙げているではありませんか。
でも違和感はなし。
普通なら恋を打ち明けるだけでも何度も言葉のキャッチボールをしなきゃならな
いのに、それを「言い間違い」の一言で結婚にまで至らせてしまうという離れ業!

こうして映画は「言い間違い(フロイディアン・スリップ)」のおかげで、イントロ部
分を圧縮することに成功。以後、物語は犬中心に展開し始めます。
「フロイディアン・スリップ」って、こんな使い方もできるんですね。
# by kiyotayoki | 2004-08-20 09:49 | 映画(わ行)