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映画の心理プロファイル

『スパイダーマン』(2002 米)

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原題:『SPIDER-MAN』(121分)
監督:サム・ライミ
原作:スタン・リー
出演:トビー・マグワイアー
    ウィレム・デフォー
    キルステン・ダンスト
    ジェームズ・フランコ

失った“絆”を取り戻したいという思いは、この映画の主人公が一番強いの
かもしれません。

主人公ピーター(T・マグワイアー)は幼くして両親を亡くしていました。
幼いピーターは伯父夫婦に引き取られ、人一倍の愛情をそそがれて育てられ
たようです。そのせいでしょうか、ピーターは几帳面で内向的な男の子に育ち
ました。
 ※フロイトによれば、几帳面な性格は幼児期の排便のしつけに由来するとい
  います。いつでも好きなときに排便する快感を「しつけ」によって奪われると
  反抗心が生まれますが、幼さゆえにその反抗心は抑圧され、その反動と
  して几帳面な性格が形成されるというのです。

そんな性格のせいか、ピーターは小1の頃からずっと思い続けている隣家の
メリー・ジェーン(MJ:K・ダンスト)に恋を打ち明けることができないでいます。
失った絆の代わりに新たな絆を育みたいのに、それができないもどかしさ。

また性格とひ弱な体、そしてヘタに頭が良かったのが災いしたのか、高校でピ
ーターは恰好のいじめの対象になっていました。級友とも絆が築けない悲しさ。

ピーターの悲劇はまだ続きます。
遺伝子操作で生まれた特殊な蜘蛛に刺されたピーターは、無敵の肉体を手に
入れます。
MJの気を引くために車を買おうと決心したピーターは、その力を利用して
勝てば賞金3000ドルがもらえるというプロレス試合に参加。見事チャンピオン
を倒します。勇んで賞金をもらいに事務室へ。けれど、もらえた賞金はたった
100ドル。がっかりして事務室を出るピーター。
入れ替わりに侵入した強盗が事務所から逃走するのを、ピーターはわざと見
逃します。「ボクをだました罰だ。ざまあみろ」という気持ちだったのでしょう。
ところが、皮肉にもその強盗が逃走車を奪うため、ピーターを迎えに来た伯父
を拳銃で射殺してしまったのです。
あの時、自分が見逃さなければ伯父さんは殺されることはなかったのに・・・。
最後に伯父さんと話した時、
「大いなる力には大いなる責任がともなうんだぞ」と忠告してくれたのに、自分
は「父親ぶらないでくれよ!」とひどい言葉を返してしまった。
自分は伯父さんにつらい思い、哀しい思いをさせたまま死なせてしまった・・・。
ピーターは自分で自分を優しくつつんでくれていた大切な絆を断ち切ってしまっ
たのです。
津波のように襲ってくる後悔の念にピーターはただ耐えるしかありませんでした

ピーターがスパイダーマンとして世のため人のために生きる決意をしたのは、
その日からでした。伯父が遺した「大いなる力には大いなる責任がともなう」
という言葉を実践するため。そして、失った“絆”を取り戻すために。
ニューヨーク800万人の市民から“信頼”を得られれば、ひょっとしたら失った
ものを取り戻せるかもしれない。ピーターはきっとそう思ったのでしょう。
by kiyotayoki | 2004-09-29 10:03 | 映画(さ行)