映画の心理プロファイル

『東京物語』(1953 日)

これまで何度かトライしたものの、独特のローアングルとカメラを正面に固定してのトークの交換、
そして超スローなテンポに痺れを切らして、
結局どれもちゃんと観ないままになっていた小津監督作品を今回、やっとまともに鑑賞した。
観たのは代表作の一つであるこちらの作品。

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(136分)
監督:小津安二郎
脚本:野田高梧 小津安二郎
音楽:斎藤高順
出演:笠智衆
東山千栄子
原節子

最初はやはり、あまりのスローテンポに最後まで我慢して鑑賞できるかしら・・・・と不安になったのだけれど、
笠智衆さんと東山千栄子さん演じる老夫婦が尾道から子供達に会いに東京へ出てきて長男宅に落ち着いた辺りから、
やっと物語に入り込めるようになった。

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というのも、
これってまるで『ハリーとトント』じゃないの!
そう思えたからだ。
『ハリーとトント』は1974年公開の米国映画で、72才の老人(アート・カーニー)が、区画整理で住み慣れたニューヨークを追い出され、愛猫トントと共にNY郊外やシカゴなどに住む息子や娘を訪ね歩くというお話で、地味だけれどお気に入りの作品のひとつだ。
そんな映画の愛すべきキャラ、猫のトントを東山千栄子さんに替えてみたら、おお、テーマもロードムービー的なストーリー展開もほぼ相似形をしているじゃないか。
笠智衆&アート・カーニーが演じる主人公の飄々としたキャラクターもかなり共通点がある。
また、息子や娘たちが自分たちの生活のやりくりで精一杯で、親の来訪を実はありがた迷惑に感じているところもまるで同じ。
演出したポール・マザースキー監督が、どこまで『東京物語』を意識したかはわからないけれど、
小津監督の評価は欧米でまず高まったことを考えると、事前に観て影響を受けていたとしても不思議じゃない。
そう考えると、監督が旅の途中でトントを死なせてしまったのも納得がいく(当時は、なぜ死なせてしまうんだろうと、ちょっと不満だった)。

舞台となるのは、戦後間もない昭和28年の東京と尾道、それと熱海。
電力消費を抑えるために東京の夜はずいぶん薄暗くなったけれど、昭和28年の東京はそれより格段に暗かっただろう。
まず電気の使用量が断然違う。
電化製品の三種の神器といわれた「白黒テレビ」「冷蔵庫」「洗濯機」が家庭に広まるのは昭和30年代だから、
このころは電気を使う物といえば電灯かラジオぐらいだ(軽い驚きを覚えてしまった!)。
季節は夏(たぶん7月上旬)だけど、大活躍しているのは扇風機でもなく、「うちわ」だ。
そして、お風呂に入って汗を流すことが何よりの贅沢だったようだ。
そのせいか、劇中には何度も風呂を勧めるシーンが出てくる。

だけど、こうした暮らしぶりって、今年の夏、節電に励まなきゃいけない僕たちに参考になることがいろいろあるかもしれないね。

映画の白眉は、やはり親族の中で唯一人、親身になって老夫婦の世話をした原節子扮する紀子の
「私、ずるいんです」から始まる告白シーンだろう。
紀子は戦死した次男の妻。たぶん結婚して早々に夫は戦地へ向かい、そして終戦直前に戦死したんだろう。
以来8年、紀子は東京でひとり、会社勤めをしながら安アパートで暮らしてきた。
とっくに縁が切れていても不思議じゃない。
だけどタンスの上には今も亡き夫の遺影が。そして、誰よりも老夫婦を案じている。
そんな彼女がなぜ自分を「ずるい」というのか。
それを聞いた年老いた義父のなんとも優しいまなざし。

ううん、やはり名作と言われるだけはある映画でありました。

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そうそう、データを調べていて、ちょっと驚いたことがあった。
年老いた父を演じた笠智衆さん、撮影時はまだ48か9だったんだね。
長男を演じた山村聡さんは42か3。
なんと6つ違いの親子だったんだぁ!
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by kiyotayoki | 2011-04-06 21:05 | 映画(た行)