人気ブログランキング | 話題のタグを見る

映画の心理プロファイル

『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(1997 独)

前回、取り上げた『鉄コン筋クリート』の監督マイケル・アリアスは、
米国人ながら日本を主戦場に活躍するビジュアルクリエイターだそうな。

そのアリアス監督が『鉄コン筋クリート』に続いて撮ったのが、初の実写映画『ヘブンズ・ドア』。
長瀬智也主演のロード・ムービー、らしい。
日本映画は数えるほどしか観ないので、もちろんこれも未見。
だけど、その作品はリメイク作で、オリジナルはドイツ映画の
『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』だという記事を読んで目の色が変わった。
そっちなら、我が家に録画したやつがあったからだ♪

さっそく、棚から引っ張り出して観てみることにした。

『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(1997 独)_a0037414_20553693.jpg

原題:『KNOCKIN' ON HEAVEN'S DOOR』(90分)
監督:トーマス・ヤーン
脚本:トーマス・ヤーン、ティル・シュヴァイガー
音楽:ゼーリッヒ
出演:ティル・シュヴァイガー
    ヤン・ヨーゼフ・リーファース
    ルトガー・ハウアー

主人公の2人は、片ややんちゃな肉食系でヘビースモーカー、片や生真面目な草食系で煙草は煙でもダメ。
フツーに暮らしていたら、まず出会わなかっただろうし、出会っても友達になることはまずなかったであろう2人の男。
ところが、同じ病院で定期検診を受けたらどちらも余命幾ばくもないことが判明、即入院となってしまった上に
同室となってしまった。そこで初めて、2人の人生に接点が生まれることになる。

2人はその夜、病室を抜け出し、調理場でテキーラを飲み交わしたことで意気投合。
草食系のルディが海を見たことがないというので、
「じゃあ、見に行こうぜ」と酒の勢いも手伝って2人してパジャマのまま今度は病院からも抜け出してしまう。
そこから始まるロードムービーなのだけど、そこまで観たかぎりでは
「難病モノだし、タイトルがタイトルだし、色調はドイツ映画らしく暗いし、地味な展開になるのかなぁ」
というのが正直な感想だった。

ところがどっこい、お話は意外な展開を見せていきます。これがなんとコメディ仕立てなのですよ。
たとえていうと、ジャック・ニコルソンとモーガン・フリーマンの難病コンビのコメディ『最高の人生の見つけ方』と
ロバート・デ・ニーロとチャールズ・グローディンコンビの傑作ロードムービー『ミッドナイト・ラン』(1988)
を足して2で割ったような作品といったらいいか。

『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(1997 独)_a0037414_10141576.jpg

2人は病院の駐車場にあったベンツのクーペを拝借して海へ向かうのだけど、それがたまたまギャングの車で
しかも大金が積まれていたことから、2人はギャングとついでに警察からも追われる身になってしまう。
それからの追っかけっこ、珍道中は、ご都合主義じゃあるけれど、テンポも良くて楽しめた。

あとで知ったことだけど、肉食系のマーチンの苗字はブレスト。この名前は、『ミッドナイト・ラン』の監督さんの名前と同じなんだね。
マーチンを演じたティル・シュヴァイガーは製作と脚本にも名があるから、
きっと『ミッドナイト・ラン』にインスパイアーされてこのストーリーを思いついたんじゃないかしらん。
2人が最初は反発し合いながら次第に友情を深めていき、
同時にどんどん小汚くなっていくところなんか『ミッドナイト~』にそっくりだし。

そんなわけで、案外楽しく観たのだけれど、仕事柄ひとつ気になったのが映画の中で2度3度と出てくる
ヘルシンキ・シンドローム”という言葉。
「被害者が誘拐犯や監禁犯に必要以上の同情や連帯感、好意などをもってしまうこと」
と映画に出てくる精神科医が説明していた。
ということは、“ストックホルム・シンドローム”のことじゃないかしらん。
この用語が生まれたのは、1973年にスウェーデンのストックホルム市で起きた銀行強盗事件がきっかけだものね。
ストックホルムはスウェーデンの首都。ヘルシンキはノルウェーの首都。
ノルウェーでも似たような事件が起こったという話は聞かないしなぁ。
それにしても、はるか遠い国に住む日本人が間違えることはあっても、お近くのドイツ人が間違えることってあるかしらん。
それとも、コメディ仕立ての映画だし、わざと間違えてジョークにしているのかも?


それはそれ、ドイツって日本に比べるとかなり厚み(奥行き)のある国なんだね。
だって、行けども行けども海が見えてこないんだもの。
意外だけど、国土面積は日本のほうがちょっぴり広い(日本:377,835km² ドイツ: 357,021km² )。
だけど、平野の少ない日本に比べると、ドイツの平地は広大だ。
しかも、国土の東と西と南の国境は陸地で海がない。海があるのは北だけだ。
2人がどこに住んでいたのか知らないけれど、内陸のほうに住んでいると一生海を見ないで過ごすってことも
あり得なくもないんだなぁ・・・と、ひとりごち。


受け身になってただ医者に身を任せ、天国からお呼びがかかるのを待つのではなく、
残された時間をどうやって有意義に過ごすかということに残りの人生を賭けた二人の生き生きとした姿が
印象に残る映画ではありましたよ。

ラストにかかる曲は、もちろん・・・




『ノッキン・オン・ヘブンズ・ドア』(1997 独)_a0037414_20502248.jpg

by kiyotayoki | 2011-08-09 20:50