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映画の心理プロファイル

『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』(2012 米)

『ハーブ&ドロシー』(2008 米)の続編が公開されのを知って、
急遽予定を変更して観てまいりました。

『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』(2012 米)_a0037414_12305025.jpg

原題:『HERB & DOROTHY 50X50』(87分)
監督:佐々木芽生
音楽:デヴィッド・マズリン
出演:ハーバート・ヴォーゲル
    ドロシー・ヴォーゲル

NY在住のごく平凡な郵便局員とその妻が、少ない稼ぎの中でコツコツとアート作品を買い集めていたら、
いつしか世界屈指の現代アート・コレクターになっていた、という奇跡の人生を描いた佐々木芽生監督の
アート・ドキュメンタリー『ハーブ&ドロシー アートの森の小さな巨人』の、これは続編です。

原題は、『HERB & DOROTHY 50X50』。なぜ、50×50?
その理由は、すぐにわかります。
2人は、もはや彼らの1LDKの小さなアパートでは収まりきらなくなった膨大なコレクションを、
アメリカ国立美術館(ナショナル・ギャラリー)に寄贈することにしたのですが、
その貴重なコレクションはあまりにも膨大でナショナル・ギャラリーだけでは収蔵・管理できないことが判明。
そこで、全米50州から選ばれた美術館に、一カ所に50点ずつ(合計2500点)寄贈することにしたんですね。
そのプロジェクト名が“50×50”だったというわけ。
本作はそんな歴史的な寄贈プロジェクトの顛末と、高齢となり人生の最終章を迎えた夫婦の姿を
淡々と、でも温かい眼差し見つめていきます。

『ハーブ&ドロシー ふたりからの贈りもの』(2012 米)_a0037414_13564644.jpg


久しぶりにお目にかかったお二人は、元々小柄だったけれど、歳を重ねてますます小さくなっておられて。
特に、ご主人のハーブは歩くのもままならず、車椅子の世話に。それを押すドロシーの腰も奇妙に曲がっている。
2012年春の時点で、お二人は89才と77才だから、それも致し方ないのかも。。。
そう思ったのも束の間、ドキュメンタリーには付きもののハプニングが起きる。
ハーブが亡くなってしまったのだ。2012年7月22日。来月になれば90才を迎えるというその時に。
そして、結婚50周年を迎えたその年に。
長年連れ添ったハーブを失ったドロシーの心中はいかばかりであったろう。。。

そのため、編集の最終段階に入っていた映画は、その結末を変更せざるを得なくなったようだ。
そして映画としての味わいも、随分と変わってしまった。

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夫婦を続けていれば、ハプニングが起きて同時に死なない限り、いつかはどちらかを看取ることになる。
否応なく、看取る側、看取られる側、どちらかの立場に身をおくことになる。
できることならどちらの立場にもなりたくはない。なのに、人生は非情だ。
僕の場合は、看取る側をやらせてもらった。
結果的にはそれで良かったと、今は思ってる。

もう二度と御免だけれど。
by kiyotayoki | 2013-04-02 15:48 | 映画(は行)