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映画の心理プロファイル

『傷だらけの栄光』(1956 米)

原題:『SOMEBODY UP THERE LIKES ME』(113分)
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監督:ロバート・ワイズ
脚本:アーネスト・レーマン
音楽:ブロンスラウ・ケイパー
出演:ポール・ニューマン
    ピア・アンジェリ
    サル・ミネオ
    ロバート・ロジア
    スティーヴ・マックイーン
   
タイトルだけは知っていた作品。
衛星でやってくれたので初めて観ることができました。
若き日のP・ニューマンの魅力がたっぷり詰まった一編です。
スタローンの出世作『ロッキー』の20年も前にこんなボクシング映画が作られていたんですね♪っていうか、『ロッキー』はこの作品のリメイクじゃないかと思えるほどでした。だって主人公の本名はロッキー・バルベラってんですから(『ロッキー』はバルボアだっけ)。しかも、同じイタリア移民の子だし。

ただ、スタローンのロッキーは架空の人物だけど、こちらは実在の人物。
1947年にミドル級王座についたロッキー・グラジアノの半生記なのです。
でも、その破天荒な半生は「事実は小説より奇なり」を地でいく展開。
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飲んだくれの元三流ボクサーと神経質な母のもとに生まれ、NYのスラム街で荒んだ子供時代を送ったロッコ(愛称ロッキー)は、当然のように悪に染まっていきます。教護院を3度も抜け出しては盗み、けんか、かっぱらいと非行の限りをつくし、とどのつまりは刑務所送り(チンピラ仲間には、デビューしたてのS・マックイーンもいるじゃありませんか♪)。

やさぐれていくロッキーの心理は、フロイト翁なら『エディプス・コンプレックス(息子が父親に抱く心の葛藤)』のなせるワザと読み解きそうです。
この映画にしろ『理由なき反抗』にしろ、この頃作られた映画には主人公の『エディプス・コンプレックス』が描かれた作品がよく見受けられます。
というのも1950年代のアメリカは精神分析がブームになっていたから。
なぜブームになったかといえば第二次世界大戦中にヨーロッパから精神分析学の大家がこぞってアメリカに亡命してきたから。彼らのほとんどがユダヤ人。ナチスの迫害を恐れての亡命でした。

父への反発からボクサーにだけはなるまいと心に誓っていたロッキーでしたが、背に腹はかえられない事情があり、結局父親と同じ道を歩むことに。だけど元々腕っぷしの強かったロッキー、その才能に火がつくのに時間はかかりませんでした。
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ランキングが上がっていく間に、ロッキーは恋もします。お相手は妹の友達ノーマ。ノーマとの不器用な恋は、見ていてこれまた『ロッキー』のエイドリアンとの恋とダブりました。いやいやホントによく似てる。ノーマを演じるピア・アンジェリという女優さんの存在は初めて知りましたが、健気で可愛い恋人そして妻の役を好演しています。

クライマックスは、もちろん世界王座をかけての死闘。
相手は、“鋼鉄の男”と異名をとる現チャンプのトニー・ゼール。
手に汗握る一戦は、是非ご自分の目で♪  
by kiyotayoki | 2006-03-09 11:10 | 映画(か行)