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映画の心理プロファイル

『アラバマ物語』(1962 米)

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原題:『TO KILL A MOCKINGBIRD 』
(129分)
監督:ロバート・マリガン
原作:ハーパー・リー
脚本:ホートン・フート
音楽:エルマー・バーンスタイン
出演:グレゴリー・ペック
    メアリー・バダム
    フィリップ・アルフォード
    ロバート・デュヴァル

貧困と人種差別というシリアスなテーマを扱っていながら、しみじみとした温かさを感じる作品です。
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それはお話がG・ペック扮する主人公ではなく、彼の子ども達の目線で語られているからでしょう。
そのあったかさは、オープニングタイトルのバックの映像からも醸し出されています。
これがある意味スゴイ。少年の宝箱に収められている品々(壊れた懐中時計や木彫りの人形etc)が超アップでゆっくりなめるように映し出されていく・・・これ、今ならよく見かける撮影手法ですが、60年代初頭にもう試みられていたんですね♪
タイトルバックだけ新しく撮り直したのかと思ったほどでした。

お話は、当時(不況真っ直中の1932年)6歳だったスカウトという女性の思い出語りで進行します。舞台は保守的で黒人に対する差別意識の強い南部アラバマ州の小さな町。
スカウトの家には妻に先立たれた弁護士の父親アテイカスと4つ上の兄ジェム、そして通いの黒人のお手伝いさんがいます。すると、案外裕福?
いえ、アティカスは貧乏な人からはお金を取らず、損な役回り(弁護)も進んで引き受ける正義感の強い弁護士なので、家計はいつも赤字すれすれ。

そんな父親の人柄を表すエピソードをひとつ。彼は自分を子ども達に“パパ”ではなく“アティカス”と名前で呼ばせているのです。子どもといえども1人の人間として向き合いたいという彼の強い意志が感じられますよね。
といっても突き放すわけじゃなく、どんなに仕事で疲れていても、ちゃんと娘が眠りにつくまでベッドの脇で本を読み聞かせてくれる。理想の父親像ですよね。

そう感じる人は多いようで、2003年米国映画協会が選んだ『最も偉大な映画のヒーロー』でベスト1に輝いたのは、インディ・ジョーンズでもスーパーマンでもなく、このアティカスだったそうです♪
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けれど皮肉なことに、そんな人柄が彼を窮地に追い込んでしまいます。
身に覚えのない暴行事件で起訴された黒人青年の弁護を引き受けたばかりに、白人社会から強烈なバッシングを受けてしまうのです。
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苦悩する父親を気遣いながらも、子ども達は子ども達で刺激的な日々を送っています。
2人の最大の関心事は、隣のあばら屋に住むデイルという男の息子「ブー」。ブーの姿は誰も見たことがありません。それだけに、噂話に花が咲き、話に尾ヒレがついて、ブーは実体を離れて怪物化していきます。

“噂の公式”があるのをご存じでしょうか。
噂の伝播力=あいまいさ×願望や不安×関心の高さ
つまり、話の対象が「あいまい」であればあるほど、それに対する「願望や不安」が高まれば高まるほど、そして「関心」が高いほど“噂”は真実味をもってどんどん広まっていくということ。
存在があいまいで、気味の悪い家、しかも自分たちの隣りに住んでいるブーは、噂の対象としてはピッタリの存在だったんですね。

そのブーを演じたのは、なんとこれが映画デビューだったというロバート・デュヴァル!さて、ブーは、このドラマにどんな風に関わってくると思います?


《印象に残った台詞》
人を理解したいなら、相手の靴を履いて歩き回れ
by kiyotayoki | 2006-04-14 21:29 | 映画(あ行)