『キリング・フィールド』(1984 英)
原題:『THE KILLING FIELDS』(141分)
監督:ローランド・ジョフィ
原作:シドニー・ジャンバーグ
脚本:ブルース・ロビンソン
音楽:マイク・オールドフィールド
出演:サム・ウォーターストン
ハイン・S・ニョール
ジョン・マルコヴィッチ
久しぶりに観ました。
初めて観た時もかなり衝撃を受けたものですが、今回、改めて観て「あっ」と目が画面に釘付けになったのは主人公が内戦激化するカンボジアから命からがら帰国した時のシーン。
平和な国の象徴として画面に現れたのは、暮れなずむNYマンハッタンにそびえる2つの塔、ワールド・トレード・センターだったのです。
当時はNYといえばツインタワーでしたから何げなく入れたショットだったのでしょうけれど、今となっては皮肉なシーンとなってしまいましたね。
そういえば、今日はあの日、9月11日です。
内戦下のカンボジア(1975年)を舞台とするこの映画、主人公はNYタイムズの記者シドニー・ジャンバーグ(原作者その人)ではありますが、映画を観たら誰だって真の主役はシドニーの現地での通訳プラン(H・S・ニョール)だと思うでしょう。実際、ニョールはこの演技でアカデミー賞を受賞しています。
ただし、“助演”ですけれど・・・。
米国の支援を受けたロン・ノル政権が中・ソに後押しされたクメール・ルージュに打倒されるという、20世紀の典型となった紛争パターンがここでも繰り返されます。
人の命は虫けら以下となり果て、
大地は死屍累々。
そんな中では、主人公たち報道記者たちも取材どころではありません。もう逃げまどうばかり。お荷物もいいところ。
やっと逃げ込んだ先がフランス大使館、カンボジアの元の宗主国の敷地だったというのもなんとも皮肉な話。
そこも決して安全地帯ではなく、彼らはまた自分の無力ぶりを痛感させられることになるのですが・・・。
大使館内でひとときの安らぎを得た主人公たちの心を支えたのは音楽でしたが、改めて観てみたら、この映画、音楽がいいですね。
緊張感を高めるために挿入されるオリジナルのスコアもいいし、ここぞという時に使われる名曲がまた耳に残ります。
たとえば、オペラの名曲『トゥーランドット』の〈誰も寝てはならぬ〉。
絶世の美女への愛を歌う曲。そんな曲をなぜ・・・と思いましたが、トゥーランドット(古代中国の美女)は求婚者に3つの謎を出し、答えられない者は殺してしまうという残虐な姫君でもあったんですよね。
そういえば、恋はすこぶる残酷な一面も持ち合わせています(^^;。
音楽が人物の心理や情景を描写してくれるのがオペラの魅力。編曲者はその力を存分に活用したかったんでしょうね、きっと。
そして、最後に流れるのはジョン・レノンの『イマジン』・・・。ちょっとベタな感じではありますが、曲にこめられたメッセージが心に痛く染みるエンディングではありました。