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映画の心理プロファイル

『誰かに見られてる』(1987 米)

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原題:『SOMEONE TO WATCH OVER ME』
    (106分)
監督:リドリー・スコット
脚本:ハワード・フランクリン
音楽:マイケル・ケイメン
出演:トム・ベレンジャー
    ミミ・ロジャース
    ロレイン・ブラッコ
    アンドレアス・カトスラス

リドリー・スコットとしては珍しく直球のラブ・サスペンス。
スティングの歌う『SOMEONE TO WATCH OVER ME』で始まり、
ロバータ・フラックの歌う同じ曲で終わる映画です。
それがタイトルにもなっている。
ガーシュイン兄弟作詞作曲のジャズナンバーで、大好きな曲の1つですが、普通は『誰かが見つめてる』とか『私を見守る人』という日本語の曲名がついています。それはもちろん、恋の歌だから。

心を焦がすほどに会いたい人がいる
その人がずっと 
私を見つめてくれることを願わずにいられない・・・

恋する女性の切ない想いが織り込まれた名曲です。
けれど、映画の日本語タイトルは『誰かに見られてる』。
『誰かが見つめてる』とはニュアンスが少々違いますよね。
それもそのはず、この映画の“誰か”はひとりではないから。

華やかなパーティに出席した大富豪の令嬢クレア(M・ロジャース)は殺人を目撃したため、殺人犯から命を狙われるはめに。犯人からすれば“見られた”わけで、その“誰か”はクレアでした。一方、クレアのほうは、その日以来“怖ろしい誰か=犯人”から命を狙われ(見られ)続けることになってしまうのです。

警察に助けを求めたクレアには、その日から警護の刑事がつくことになります。“誰か=刑事”に見守られる生活が始まったのです。その刑事というのがマイク(T・ベレンジャー)。
当初、2人はそりが合いません。
だって彼女はマンハッタンの豪華なアパートメントに住むセレブ。
マイクはというとブルックリンの安アパートで妻と幼い息子と3人でつましく暮らす一介の公務員。貧富の差は甚だしいし、身分も違う。
けど、一旦恋に落ちると、そんなものは関係なくなっちゃう。
価値観もモラルも消滅し、愛する人しか見えなくなっちゃう(時期がある)。

2人がただならぬ関係になったことにまず気づいたのはマイクの妻でした。
亭主が自分のプレゼントしたものじゃないネクタイを締めて帰ってきたら、そりゃ疑います。しかも、そのネクタイは品があるしデザインもいい。値段も高そう。
妻として腹立たしいのは亭主の言い訳が下手だからというより、そのネクタイが似合っているから。お金さえ惜しまなければ自分だって買える。だけど、センスの良さまでは買えない。それが悔しいのです。
その日からマイクは“誰か=妻”にいつも見られているような強迫観念に苛まれるようになります。
この物語の登場人物はみな“見る”“見られる”関係にあるんですね。しかも感情は様々。愛しい思いで見る人もいれば、憎悪の感情むき出しで見る人もいる。
そのニュアンスを上手く表現した日本語タイトルを考えた人、あんたはエライ!
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この映画で怖い殺人犯を演じたアンドレアス・カトスラス、『逃亡者』(1993)では片腕の男を演じた人ですが、今年の2月に亡くなっていたんですね(享年59歳)。個性的な悪を演じられる人だっただけに残念です。

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『SOMEONE TO WATCH OVER ME』
いろんなシンガーが歌っています。
エラもいいけど、個人的にはジミー・スコットのが好きかな。
by kiyotayoki | 2006-09-22 20:26 | 映画(た行)