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映画の心理プロファイル

『三人の女』(1977 米)

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原題:『3 WOMEN』(124分)
監督・脚本:ロバート・アルトマン
音楽:ジェラルド・バズビー
出演:シェリー・デュヴァル
    シシー・スペイセク
    ジャニス・ルール

前からずっと観たいと思っていた作品です。
ロバート・アルトマン監督、51歳の時の作品。
主演は、監督の秘蔵っ子シェリー・デュヴァル(ボクも同監督作『ポパイ』でオリーブを演った彼女に一目惚れ)と、前年のホラー作品『キャリー』で一躍、時の人となったシシー・スペイセク。
この時、二人は同い年の27歳。
アルトマン監督がこの2人にどんな演技をさせるのか、興味津々で観はじめましたが・・・。
いやぁ、これがちょっとヨーロピアンテイストというか、カンヌ映画祭の審査員あたりが喜びそうな作品に仕上がっておりました。
(調べてみたら、デュヴァルがこの年のカンヌで女優賞をとってました、やっぱり)

舞台は、L.A.から東へ180kmのところにある砂漠のオアシス・パームスプリングス。
この地の温泉を利用したサナトリウムに、若い女性ピンキー(S・スペイセク)が新人療法士として加わるところから物語は始まります。
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サナトリウム内は、入所しているのが介護の必要な老人ばかりということもあるけれど、太陽がさんさんと降り注いでいるのに、なんか冷た~い雰囲気が漂ってる。
というのも、所員たちが必要最低限の会話しかしない、仕事以外のコミュニケーションをとろうとしないから。
スイスの精神科医ブロイラーが「愛の反対語は憎しみではなく無関心である」という言葉を残しているけれど、所内を支配しているのは、まさにその無関心
だから、寒々としているんでしょうね。

そんな中で、唯一ピンキーに心を開いてくれたのが、療法士の先輩ミリー(S・デュヴァル)。だからピンキーは嬉しくなって、子猫のようにミリーにくっついてく。ミリーがルームメイトを求めていることを知って、自分を売り込み、同居の権利をゲットしちゃう。
ただ、心を開いてくれたミリーにしたって、そうしたのは自己顕示欲があったから。いつも人の注目を自分に集めたいと思っている自己中心的な女性。それが見え見えなので、周囲の視線は冷たいのだけれど・・・。
そしてまた、素直で純朴そうなピンキーからして、かなり心が歪んでいることが分かってくる。それを演ってるのが、前の年『キャリー』で心底怖がらせてくれたスペイセクだもんだから、じわじわっと怖くなってくる(^^;。

とにかく出てくる人出てくる人が、みんな自己チュウでコミュニケーション不全。
だから、会話が成立しないこともたびたび。っていうか、成立しなくて当然なんだな。
そんな連中が絡むと、ふうむ、こんなドラマが出来上がるんだ、と感心させられる・・・そういうドラマ。
やっぱりアルトマンさん、タダ者じゃありません。

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そうそう、主人公は2人なのにタイトルは『3人の女』。
確かにもう1人、ジャニス・ルール扮する女性が出てきます。
ただ、この人、ほとんどしゃべりません。しやべらない代わりに上のような奇妙で怒りに満ち満ちた絵をプールの壁や床に描き続けている。
彼女には絵だけが人ととれる唯一の自己表現&コミュニケート手段だった・・・
・・・ってことは(^~^;

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by kiyotayoki | 2007-07-13 09:30 | 映画(さ行)